今、この男が現役だったら、無双状態の“村神様”相手にどんな攻め方をするだろう。そう思わせるのが阪神などで活躍したサウスポーの遠山奬志だ。

 

 

<この原稿は2022年10月17日、24日合併号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 主に左打者へのワンポイントリリーフでありながら、ロッテから入団テストを受けて阪神に復帰した1999年にはカムバック賞に輝いた。

 

 当時の巨人は松井秀喜、高橋由伸、清水隆行など左の強打者が揃っており、遠山は“左打者キラー”として、野村克也監督から重宝がられた。

 

 とりわけ松井に強く、99年は13打数無安打。松井をして「顔を見るのも嫌だ」と言わしめた。死球も辞さず、の徹底した内角攻めは、今も語り草だ。

 

 本人に聞くと、当初は内角攻めにためらいがあった、という。まして、松井は球界の宝である。「ぶつけたら、どうしよう……」。不安気な表情の遠山に野村は言った。

 

「オマエ、給料いくらもろうとる。せいぜい数百万やろう。松井は億円プレーヤーや。格下が格上にぶつけたところで、どうってことない。松井の給料には(当てられ分も)入っとるんや」

 

 これで気が楽になった遠山はサイドハンドから切れのいいシュートを、これでもかとばかりに投げ続け、松井のバットを沈黙させたのである。

 

 当時の松井との対戦を参考にして、10月3日に“王貞治超え”の56号をマークした村上宗隆(東京ヤクルト)への攻め方をご教示願った。

 

「僕なら3球続けて内角にシュートを放りますね。内角攻め言うても、ただ、そこに投げればいいというもんじゃない。1球目は右ヒジ近く、2球目はヒザ元、そして3球目は腹あたり。別に4球続けたっていいんです。“うわぁ、また来るか”と相手が嫌がったらこっちのもんです。内角攻めは相手の踏み込みを弱めるとともに、足元が動くという効果もある。言葉は悪いけど“ぶつけてもええんや”くらいの気持ちがないと、今の村上は抑えられませんよ」

 

「神」に勝つには「鬼」になるしかないということか……。

 


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