新潟アルビレックスBCは、28日現在10勝36敗2分と他3チームから大きく引き離されています。投手陣でいえば、敗因は不要な四球の多さにあります。現在、48試合を消化し、四球は277、1試合平均約6個です。これが少なくなれば、自ずと白星も増えてくる。でも、それは本人たちが一番わかっているのです。
 四球を与えてしまう最大の要因は、技術うんぬんというよりは、やはり気持ちにあります。「四球を出したらいけない」という意識が強ければ強いほど、逆に腕が振れなくなり、コントロールを乱してしまう。さらにはストライクをとりに置きにいったボールを痛打されてしまう、といった悪循環に陥ってしまうのです。

 キャンプの時から各投手について細かくメモをとり、それを元にそれぞれに合った方法を模索していますが、メンタル面の指導というのは技術面とは比較にならないほど難しい。私自身も伝える難しさというのを痛感しています。

 しかし、どんなアドバイスも僕からすることはほとんどありません。後藤孝志監督が選手たちに求め続けているのは自主性です。僕たちはあくまでもサポート役。いくら指導者が一生懸命やっても、選手自身に意欲がなければ上達はしません。ただし、選手から求められたら、僕たちはとことん付き合う覚悟でいます。

 約5カ月間、自主性を重んじた指導を続けてきたわけですが、近頃では自分自身に対して欲が出てきた選手もいます。こちらが何も言わなくても、自分で考えて練習したり、積極的にアドバイスを求める姿がちらほら見受けられるようになりました。そういう選手は少しずつよくなってきていますね。

 投手として一番大事なのは忍耐力です。一つは辛い練習に耐えること。上を目指すのであれば、厳しい練習をするのは当然のことです。その当然のことをやり続けられるか否かで力に差が出てきます。僕は現役時代、走ることが嫌いでした。でも、NPBで活躍してお金を稼ぎたいという目標のために毎日走ることを自分に課し、耐え続けたのです。

 そして、投手は試合でも忍耐力が必要です。たとえばバックのミスでピンチを招いたとしても、イライラせずに「よし、ここは自分が抑えてやる」と気持ちを切り替え、打者との勝負に集中できるかどうか。これが勝利への執念に結びつくのです。新潟の投手陣にも、こうした忍耐力がもう少し欲しいところですね。

 これまでは選手育成を中心に考えてきましたが、8月からはチームとしても勝ちにこだわった戦い方をしています。特に開幕から入れ替えの激しかった内野の布陣をきちっと固定したことで、投手にとってもバックを信頼して投げられるようになってきました。あと残り3分の1となりましたが、これまで以上のものをお見せできると思いますので、楽しみにしていてください。

本間忠(ほんま・ただし)プロフィール>:新潟アルビレックスBCコーチ
1977年8月5日、新潟県出身。日本文理高を卒業後、一時は肩を故障し野球を断念するも、野田サンダースでプレーを再開しながらNPBの入団テストを受け続ける。99年ドラフトでヤクルトから6位指名を受け、翌年に入団。主に中継ぎとして活躍したが、06年オフに現役を引退し、今季より新潟アルビレックスBCのコーチに就任した。


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 今回は新潟・本間忠コーチのコラムです。「ひと山越えた谷合の成長」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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