第187回 つま先シュートのような抜け目のなさに期待

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 今月は悲しい知らせが入りました。サッカー元日本代表FWで今月、水頭症と診断され治療を受けていた工藤壮人選手(テゲバジャーロ宮崎所属)が21日、32歳という若さで亡くなりました。代表にも選出されるなど、日本サッカー界に貢献をしてくださりました。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 J2の甲府が天皇杯V

 

 今月はサッカー天皇杯が注目されました。優勝チームはJ2のヴァンフォーレ甲府です。鹿島アントラーズやサンフレッチェ広島などJ1勢を5チーム倒しての優勝、おめでとうございます。

 

 こういったことが起こるのが天皇杯の面白さでもありますね。甲府の全選手の試合に対するモチベーションや目指すべきベクトルが合致していましたことが勝因かなと感じます。J1クラブがJ2や大学などと対戦する特有の難しさも確かにあります。僕はJSL2部の住友金属時代、千葉の教員チームに天皇杯で敗れた経験があります。“こんなはずじゃないのに”“え、ここで負けるって何!?”と思いながら、重苦しい重圧とも戦った記憶があります。東京ガスに敗れた時も、ジーコからお叱りを受けました。

 

 広島の選手たちも懸命にプレーしましたが、甲府のモチベーションが相当に高かったです。勝ち上がる様子を見ていても、J1クラブをかなり分析したようにも感じます。アントラーズが喫した失点シーンもうまく当てはまってしまったな、と。誰がセンターバックにアプローチ行くんだ?と少しぼやったしてしまった瞬間、DFラインの裏を取られてしまいました。決勝でも90分の中でPKのピンチをGK河田晃兵がファインセーブで危機を救いました。大会を通じて流れを掌握していました。

 

 広島はその1週間後、ルヴァンカップを制しました。セレッソ大阪に先制を許したものの後半アディショナルタイムで途中出場のFWピエロス ソティリウが2ゴール。諦めない姿勢が奏功しました。

 

 隆行のつま先シュート

 

 さて、日本代表ですがいよいよ明日にメンバー発表を控えます。選出された選手たちには頑張ってもらいたいものです。まずは初戦のドイツ代表戦でしょう。W杯だろうが小規模な大会だろうがまずは初戦に負けないこと。負けないサッカーをしないといけないのですが、スタートは「勝ちに行くんだ」「勝たなきゃどうするんだ」という気構えで臨んでほしいです。スタートから「ドロー狙い」はゲームコントロールが難しい気がしますね。

 

 まだメンバー発表前ですが、私はMF南野拓実のメンバー入りに期待しています。ここのところクラブチームでも調子を落としてるようですが、“ここぞの場面”では結果を残してくれるのではと期待しています。

 

 タイプは違いますが2002年の日韓ワールドカップ時の鈴木隆行のようにここぞで点を奪ってくれればいいんです。隆行はベルギー代表戦で先制された直後に爪先でゴールネットを揺らしてくれました。僕は南野の抜け目の無さが大舞台でいきてくるのでは、と思います。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。

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