後期シーズンは西田真二監督と相談して若手投手を多く使っています。現在、チームは首位ですが、金子圭太岡本健太ら先発に抜擢した選手たちがそれなりに結果を出していると思います。

 後期に入って香川は新たに3投手を獲得しました。地元出身の高尾健太、千葉ロッテに6年間在籍していた亮寛(小林亮寛)、オーストラリアからやってきたトッド・グラタン。それぞれご紹介しましょう。

 高尾は高松商出身。県大会でエースとしてチームを優勝に導いた実績を持っています。ただ、高校卒業後は軟式野球をやっていたこともあり、硬式球を投げる体をつくるのに少し時間が必要です。今はまず走り方の矯正から行っています。

 走るフォームとピッチングに何の関係があるのかと思われるかもしれませんが、体の使い方という観点でみればどちらも一緒です。高尾の場合、走る際に腕が振れていないため、体の力をスムーズに伝えることができていません。走ることにしても投げることにしても無理なく無駄のないフォームをつくることが上達の第一歩です。姿勢がいかに重要か、しっかり意識付けをさせたいと考えています。
 持ち球としては140キロ近いストレートに、カーブをはじめとする変化球がよく、センスの感じられる投手です。来年以降も見据えて長い目で育てていきたいですね。

 亮寛は早速セットアッパー役を務めてもらっています。ただ、ひじのクリーニング手術を受けて実戦から離れていたこともあり、本調子には程遠い内容です。球種は140キロ台のストレートにカーブ、スライダー、フォーク、ツーシーム……。1つ1つのボールをみればNPBでも充分通用します。

 でも、なぜロッテを戦力外になってしまったのか。最初に会った際に本人と話をしました。出た結論は「コントロールが定まらなかったから」。ならばアイランドリーグでの課題は制球力をつけることにあります。本人の目標は再びNPBに復帰すること。オフのトライアウトに向けて、今後も実戦の中でコントロールを磨いてもらいます。

 グラタンは外国人とあって身体能力の高さが目につきます。陸上選手にしてもよいくらい足は速いです。ただ、恵まれた体を充分にいかしきれていません。外国人投手にありがちな上半身に頼ったフォームになっています。

 ただ、フォームを教えるのは壁にぶち当たってからでも遅くないと考えています。まずは慣れない異国の環境でいかに気持ちよく投げてもらうかが大切です。幸い、本人は野球に対する姿勢が貪欲で、日本のスタイルについて僕によく質問してきます。日本だろうが外国だろうが、野球に対する取り組みがしっかりしていれば、結果は必ず出ます。その点、今後が楽しみな投手です。

 ヤクルト時代、いろいろな外国人と一緒にプレーしました。まさに助っ人として大活躍した選手もいれば、開幕シリーズの巨人戦でサヨナラ暴投したホアン・アイケルバーガー、肩を痛めて帰ったフロイド・バニスター、初登板で原辰徳(巨人)にホームランを浴びたマイク・ロックフォードなど、1年足らずで解雇になった選手もたくさんみてきました。

 僕も台湾でプレー経験がありますが、外国人選手が成功するかどうかは、いかに周囲の人とコミュニケーションがとれるかにかかっています。僕の場合は“飲みニケーション”でしたが……(笑)。とにかく内気でひきこもってしまうタイプはダメです。

 たとえば97年にヤクルトにやってきたドゥエイン・ホージー。彼はとにかく陽気な男でした。チームメイトの前でおかしなことばかりやって、一生懸命チームに溶け込もうとしていました。当初はパッとしない成績でしたが、シーズンを終わってみればホームラン王に輝きました。

 投手ではテリー・ブロスとよく食事にいきました。ことあるごとに「ニホン、ダイスキ!」と言っていた記憶があります。登板前は緊張でまったくしゃべらないのに、登板を終えると機関銃のように話をしてくるところもおもしろかったですね。彼も95年、巨人戦でノーヒットノーランを達成し、最優秀防御率のタイトルを獲りました。

 オーストラリアではラグビーがさかんで、野球はマイナースポーツの部類に入ると聞いています。グラタンはまだ21歳と若い選手です。ここでの経験を生かし、母国の野球の発展に貢献してくれる人間になってくれることを願っています。

高尾健太(たかお・けんた)
 1988年1月17日、香川県出身。右投右打。高松商時代はエースとして04年秋、05年春と県大会優勝を経験。直球とチェンジアップを武器に緩急を使った投球が持ち味。まだ公式戦出場はないが、地元選手としての活躍が期待されている。

小林亮寛(こばやし・りょうかん)
 1979年4月28日、福岡県出身。右投右打。PL学園高から97年のドラフト6位でロッテに入団。プロ生活6年間で1軍登板はなく、2軍通算成績は8勝7敗、防御率4.97。退団後は中日の打撃投手を経て、昨年はアメリカ独立リーグでプレーしていた。

トッド・グラタン
 1986年9月7日、オーストラリア・キャンベルタウン出身。右投右打。球速は140キロに満たないが、キレのあるストレートとチェンジアップをもつ。制球力が武器。今年のオーストラリアアジュニアチーム代表に選出された。

加藤博人(かとう・ひろと)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
 1969年4月29日、千葉県出身。87年ドラフト外で八千代松陰高からヤクルトに入団。2年目の89年に6勝9敗、防御率2.83(リーグ8位)の成績を挙げて一軍に定着。故障で戦列を離れた年もあったが、貴重な中継ぎサウスポーとして95年、97年のチームの日本一に貢献した。分かっていても打てないと評された大きく曲がり落ちるカーブが武器。01年に近鉄に移籍後、02年には台湾でもプレーした。日本球界での通算成績は27勝38敗、防御率3.85。05年にスタートした四国アイランドリーグで香川のコーチに就任。現役時代に当時の野村克也監督から学んだ“野村ノート”や自らの故障経験を活かした丁寧な指導で高い評価を受けている。

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