後期はここまで5勝4敗のスタートです。最初につまづいた前期の反省から開幕10試合で7勝を目標にしていましたが、少し下回ってしまいました。やはり、エース格で地元出身の近平省悟の故障が響いています。近平は近々、ヒジにメスを入れることになりそうで今季中の復活は絶望的です。

 夏場は連戦も続くため、近平の穴は調子のいい投手をどんどん先発させて埋めるつもりです。梶本達哉森琢哉のルーキーコンビも後期は先発で固定します。彼らに期待するのは勝ち負けはともかく“納得いくピッチング”。相手をかわして四球で自滅するのではなくストレートで思い切って勝負する。打たれて痛い目にあうこともあるでしょうが、それなら次につながります。
 2人とも将来のドラフト候補であることは間違いありません。どうせ指名されるなら、上位でNPBに行けるよう、残り試合でたっぷりと経験を積んでほしいと願っています。

 打線では4番の荒木康一がカギを握る男になるでしょう。今季はマサキ(高知)が抜け、愛媛の中心打者となりました。才能が一気に開花するのを楽しみにしていたのですが、もうひとつ“強さ”が出てきません。
 配球を見れば、相手投手は明らかに荒木を警戒しています。3年目の選手ですからリーグの投手レベルであれば、結果を残せる自信はあるはずです。それを打席で素直に表現してほしいのですが、どうもマイナスのイメージを持ちすぎている感があります。

 5日の香川戦、思い切って荒木を1番に起用しました。「1打席で3回振ってこい」。本人にはそう伝えました。残念ながら結果は出ませんでしたが、現状を打破するきっかけにしてほしいものです。

 2位に入った前期の戦いの中で、ある程度チームの形はできてきました。後期はもう優勝しかありません。結果にこだわり、結果を出すためには、選手たちにはもう一皮むけてもらう必要があります。

 前期は優勝した香川に対して2勝10敗3分と負けが込みました。客観的にみても愛媛は若い伸びしろのある選手も多く、戦力的には互角のはずです。ではなぜ、こんなにも差がついてしまったのか。それは野球に対する知力の差だと思います。

 香川は智勝、丈武といったクリーンアップ勢を中心に相手のいやがる野球をやってきます。打席の中で手を出す球種をしっかり絞っていますし、走塁にしてもスキがありません。昨年の後期、今年の前期と優勝し、NPB球団と対等に勝負してきた自信が、考えながらプレーする余裕を生み出しているのです。
 
 愛媛の選手たちにも、後期はこのレベルに到達してほしいと感じています。実際、前期なら「初球から思い切って打て!」と指示していたところを、今は「A投手はカウントが悪くなったら、ストレートが増える。そこを狙え」と状況に応じた形に変えています。もちろん、そこで考えすぎてしまっては元も子もありません。いかにアグレッシブさを失わず、高い次元で野球をするか。これが結果を残すための条件になるでしょう。

 自分自身にとっても、残り試合で結果が問われると思っています。たとえ、その試合でいい結果が出なかったとしても、次回以降に収穫がある試合を重ねていきたいものです。後期はより愛媛のみなさんに満足していただける野球をお見せします。引き続き、応援よろしくお願いします。

荒木康一(あらき・こういち)
 1986年3月4日、島根県出身。右投右打。05年、アイランドリーグの開幕とともに愛媛に入団。豪快なスイングが持ち味の長距離砲として初年度からクリーンアップを任された。今季はマサキ(高知)の移籍に伴い、開幕から4番に座る。リーグ3年間の通算成績は打率.261、本塁打10、打点107。

沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。今季は悲願の初優勝を目指す。




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