第88回「熱戦」 〜J2第32節、東京ヴェルディ1969戦〜
8月5日(日)、J2第32節となる愛媛FC対東京ヴェルディ1969の一戦が、ホーム(愛媛県総合運動公園陸上競技場)にて行われた。曇り空の下、ほとんど無風状態ということもあり、総合運動公園は非常に蒸し暑い。ただ立っているだけでも、額から汗が噴出してくる。
(写真:愛媛が東京Vのゴールへ迫る)
時刻は18:00、ピークは過ぎているが、依然として不快指数は高いまま。そんな中、東京ヴェルディ1969のキックオフで試合がスタートした。
立ち上がり、愛媛FCは相手にボールを支配され、ペナルティアークまで簡単に攻め込まれる。悪い流れの中、自陣ペナルティエリアに近い位置でセットプレーを相手に与えてしまい、ピンチを迎えるが、守備陣の踏ん張りで何とか凌いだ。
前半10分を過ぎた辺りから、FW三木良太選手のポストプレーが機能し始め、両サイドからの攻撃も頻繁に繰り出されるようになった。しかし、相手の守備は、予想以上に強固で、なかなか崩し切ることができない。素早いプレッシャーを受け、クロスの精度も極端に悪くなっているように思える。
前半13分、センターサークル付近のMF井上秀人選手から、右サイドに陣取るDF関根永悟選手へ向けてパスが送られる。オーバーラップを仕掛け、そのまま同サイドを駆け上がる関根選手。相手DFをかわしつつ、ペナルティアークから低い弾道のシュートを放つが、相手キーパーの真正面に飛んでしまう。
その後もチャンスは少なく、ボールの支配率でも相手を上回ることができない、苦しい展開が続く。そして前半24分、自陣右サイドで敵にボールを回され、簡単にペナルティエリアにクロスを折り返されると、走り込んできたフリーの選手にシュートを打たれ、あっさりと先制を許してしまった。
「試合は、これからだ!」。うつむく選手たちへサポーターが奮起を促し、力強い声援を送り続ける。しかし、得点の匂いが感じられるようなプレーがないまま、0−1で前半が終了した。
「このまま終わる訳には、いかない」。愛媛の反撃を祈りつつ、後半戦に突入。祈りが通じたのか、後半の立ち上がり、得点にはいたらなかったが、相手のペナルティエリアまで巧みにボールを運び、立て続けに惜しいシュートを放つことができた。
果敢な攻めがフィニッシュにつながったことで、愛媛は自信を取り戻す。後半10分、左サイドでボールを持ったDF森脇良太選手が、早いタイミングでアーリークロスをゴール前に供給。相手DFが弾き返したボールに対して、走り込んできた井上選手が思いきり右足を振り抜き、ダイレクトでミドルシュートを放った。
弾丸のようなシュートは、相手GKが伸ばした手の先を擦り抜けるが、惜しくもクロスバーに弾かれてゴールならず。後半27分、MF大山俊輔選手が、右サイドを巧みなドリブルで駆け上がってDFをかわしつつ、ペナルティエリア内に陣取るFW内村圭宏選手へラストパス。内村選手の左足のシュートは、不運にも相手DFの足に当たり、ゴールマウスを捕らえることはできない。それでも、体力消耗の激しい環境で、愛媛のスピーディーな攻撃への相手DFの対応も遅れ始めていた。
(写真:セットプレーのチャンス。愛媛は相手の激しいマークをかいくぐってゴールを目指す)「確実に得点のチャンスが近づいている」。皆がそう感じ始めた後半28分、右サイド、フリーでボールを受けた大山選手が、ニアサイドに低く速いクロスを供給。相手DFに弾き返されるが、十分なクリアにはならず、ルーズボールとなってペナルティエリアに転がる。
ゴール前に詰めていたDF星野真悟選手が、バウンドするボールに上手くタイミングを合わせ、ジャンプしながら右足でボレーシュートを放つ。ボールはGKがまったく反応できないような猛スピードで、見事、ゴールネットに突き刺さった。「素晴らしい同点ゴール!」。星野選手が誇らしげに右手を天に突き上げながら、サポーターが陣取るゴール裏席前まで駆け込み、喜びを爆発させる。
その星野選手にチームメイトが駆け寄って抱きつき、手荒な祝福を浴びせる。スタジアム全体が大歓声に包まれていった。苦しい前半を何とか乗り切り、試合終盤、ついに生まれた感動的な同点弾だ。このゴールにより、愛媛は流れを引き寄せ、その後も勢いに乗って攻め続ける。だが、無情にも時間は過ぎ去り、ついにタイムアップ。1−1の引き分けに終わった。
試合終了のホイッスルと同時にピッチに倒れ込む選手たち。灼熱の空間で全ての力を出し尽くして戦った証だ。その光景は、本当に美しいものだった。決着こそつかなかったが、夏の暑さにも負けず劣らずの大熱戦に観客たちも満足したのではないだろうか。
今節の愛媛FCは、上位チームとの戦いの中、相手の運動量が落ちてきた終盤の時間帯に入っても、我慢して足を動かし続けることによって、対等以上に戦うことができたのだと思う。この試合で選手たちが得た経験を最大限に活かすことができたならば、今後のリーグ戦はさらに面白くなりそうだ。
松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
(写真:愛媛が東京Vのゴールへ迫る)
時刻は18:00、ピークは過ぎているが、依然として不快指数は高いまま。そんな中、東京ヴェルディ1969のキックオフで試合がスタートした。
立ち上がり、愛媛FCは相手にボールを支配され、ペナルティアークまで簡単に攻め込まれる。悪い流れの中、自陣ペナルティエリアに近い位置でセットプレーを相手に与えてしまい、ピンチを迎えるが、守備陣の踏ん張りで何とか凌いだ。
前半10分を過ぎた辺りから、FW三木良太選手のポストプレーが機能し始め、両サイドからの攻撃も頻繁に繰り出されるようになった。しかし、相手の守備は、予想以上に強固で、なかなか崩し切ることができない。素早いプレッシャーを受け、クロスの精度も極端に悪くなっているように思える。
前半13分、センターサークル付近のMF井上秀人選手から、右サイドに陣取るDF関根永悟選手へ向けてパスが送られる。オーバーラップを仕掛け、そのまま同サイドを駆け上がる関根選手。相手DFをかわしつつ、ペナルティアークから低い弾道のシュートを放つが、相手キーパーの真正面に飛んでしまう。
その後もチャンスは少なく、ボールの支配率でも相手を上回ることができない、苦しい展開が続く。そして前半24分、自陣右サイドで敵にボールを回され、簡単にペナルティエリアにクロスを折り返されると、走り込んできたフリーの選手にシュートを打たれ、あっさりと先制を許してしまった。
「試合は、これからだ!」。うつむく選手たちへサポーターが奮起を促し、力強い声援を送り続ける。しかし、得点の匂いが感じられるようなプレーがないまま、0−1で前半が終了した。
「このまま終わる訳には、いかない」。愛媛の反撃を祈りつつ、後半戦に突入。祈りが通じたのか、後半の立ち上がり、得点にはいたらなかったが、相手のペナルティエリアまで巧みにボールを運び、立て続けに惜しいシュートを放つことができた。
果敢な攻めがフィニッシュにつながったことで、愛媛は自信を取り戻す。後半10分、左サイドでボールを持ったDF森脇良太選手が、早いタイミングでアーリークロスをゴール前に供給。相手DFが弾き返したボールに対して、走り込んできた井上選手が思いきり右足を振り抜き、ダイレクトでミドルシュートを放った。
弾丸のようなシュートは、相手GKが伸ばした手の先を擦り抜けるが、惜しくもクロスバーに弾かれてゴールならず。後半27分、MF大山俊輔選手が、右サイドを巧みなドリブルで駆け上がってDFをかわしつつ、ペナルティエリア内に陣取るFW内村圭宏選手へラストパス。内村選手の左足のシュートは、不運にも相手DFの足に当たり、ゴールマウスを捕らえることはできない。それでも、体力消耗の激しい環境で、愛媛のスピーディーな攻撃への相手DFの対応も遅れ始めていた。
(写真:セットプレーのチャンス。愛媛は相手の激しいマークをかいくぐってゴールを目指す)「確実に得点のチャンスが近づいている」。皆がそう感じ始めた後半28分、右サイド、フリーでボールを受けた大山選手が、ニアサイドに低く速いクロスを供給。相手DFに弾き返されるが、十分なクリアにはならず、ルーズボールとなってペナルティエリアに転がる。
ゴール前に詰めていたDF星野真悟選手が、バウンドするボールに上手くタイミングを合わせ、ジャンプしながら右足でボレーシュートを放つ。ボールはGKがまったく反応できないような猛スピードで、見事、ゴールネットに突き刺さった。「素晴らしい同点ゴール!」。星野選手が誇らしげに右手を天に突き上げながら、サポーターが陣取るゴール裏席前まで駆け込み、喜びを爆発させる。
その星野選手にチームメイトが駆け寄って抱きつき、手荒な祝福を浴びせる。スタジアム全体が大歓声に包まれていった。苦しい前半を何とか乗り切り、試合終盤、ついに生まれた感動的な同点弾だ。このゴールにより、愛媛は流れを引き寄せ、その後も勢いに乗って攻め続ける。だが、無情にも時間は過ぎ去り、ついにタイムアップ。1−1の引き分けに終わった。
試合終了のホイッスルと同時にピッチに倒れ込む選手たち。灼熱の空間で全ての力を出し尽くして戦った証だ。その光景は、本当に美しいものだった。決着こそつかなかったが、夏の暑さにも負けず劣らずの大熱戦に観客たちも満足したのではないだろうか。
今節の愛媛FCは、上位チームとの戦いの中、相手の運動量が落ちてきた終盤の時間帯に入っても、我慢して足を動かし続けることによって、対等以上に戦うことができたのだと思う。この試合で選手たちが得た経験を最大限に活かすことができたならば、今後のリーグ戦はさらに面白くなりそうだ。
松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。