「私と小沢さん、どちらが総理にふさわしいか、国民の考えをうかがう」。自らの信任を問う素晴らしい決意表明に映った。参院選での結果は与党惨敗。直後の会見。「国民に約束した新しい国づくりに向けて、改革を続行していくことが、私に課せられた使命だ」

 そりゃないよ安倍さん。総理の言葉はそんなに軽いのか。ある主婦がつぶやいた。「もう子供に“言ったことは守りなさい”と教育できなくなっちゃう。この人にだけは教育改革をやって欲しくない」。引き際の美しくないリーダーが唱える「美しい国づくり」。日本人の美学や美風はどこへ消えたのか。

 美しくないといえば、この御仁も同じだ。左ひじ内側側副じん帯損傷、左尺骨神経障害、急性腰痛症、第5腰椎疲労骨折……。カルテに書き込むだけでも一苦労だ。医師が下した診断は「全治6週間」。夏巡業の不参加は致し方ない。

 ところが、である。なんとこの御仁、実はモンゴルに帰ってサッカー元日本代表・中田英寿氏らと“草サッカー”を楽しんでいたのだ。ボールを追う姿は元気そのものだった。
 そりゃないよ横綱・朝青龍。あれじゃ仮病と疑われても仕方がない。医師の診断書って、そんなにいい加減なものなのか。
これを受けて「綱の品格の問題」と一刀両断にした元力士がいた。そんなあやふやな問題ではない。これは「品格」以前の問題、もっといえば「責任」と「義務」の問題である。

 大相撲における地方巡業はプロ野球のオープン戦とは似て非なるものだ。それは以下の事実に依拠する。周知のように日本相撲協会は公益法人(財団法人)である。「公益性のある認定事業」「公益性のある活動実績」をみたすことで認定を受けている。言うまでもなく地方巡業は大切な公益事業や公益活動のひとつである。

 大相撲の看板であると同時に国技の顔でもある横綱が「仮病」を使って公益事業や公益活動をスッポかす。これではもはや公益法人の値打ちがないのではないか。協会の幹部はどう考えているのか知らないが、実はこれは大相撲の根幹に関わる重要な問題なのだ。帰国後、朝青龍は理事長と親方には謝罪したという。だが真っ先に謝罪すべきは夏巡業を楽しみにしていた地方の相撲ファンではなかったか。

<この原稿は07年8月1日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

◎バックナンバーはこちらから