「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1第10節・埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)とクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)戦が4日、埼玉・熊谷ラグビー場で行われた。無敗チーム同士の対戦は、埼玉WKがS船橋・東京ベイを30-15で破り、今季10連勝。3トライ差以上によるボーナスポイントを加えた勝ち点5を獲得した。

 

 熊谷での天王山は、首位の埼玉WKが制した。持ち味の堅い守備に加え、地元出身の背番号10が輝きを見せた。

 

 先制したのは風下の埼玉WKだった。ゴール正面、約22mの位置からSO山沢拓也がPGを決めた。さらにS船橋・東京ベイのSOバーナード・フォーリーにPGで追いつかれた後、山沢は得意のランで相手の守備網を切り裂いた。25分、敵陣に約10m入った位置でパスを受けると、そこからステップを踏んだ。タックルを切ると、追走する相手をハンドオフで制し、斜めに駆け抜けてインゴール右に飛び込んだ。自らコンバージョンキックを成功し、10-3とリードを奪った。

 

 一方、試合前のコイントスで風上を選んだS船橋・東京ベイもフィジカルを生かし、圧力をかけてくる。埼玉WKはトライこそ与えなかったが反則がかさむ。29分、33分、39分とショットを選択。オーストラリア代表76キャップを誇り、リーグワンでも今季得点ランキングトップをひた走るフォーリーが正確にゴールを射抜いていく。前半は12-10とS船橋・東京ベイが逆転して終わった。

 

 重戦車のようなFWを擁し、リーグ最多得点&最多トライのS船橋・東京ベイにゴールラインまで迫られながらもノートライに抑えたように埼玉WKのディフェンスは堅かった。リーグ最少失点の安定感。7分、自陣右サイドをFL末永健雄に狙われたが、CTBディラン・ライリーが好タックルでトライを防いだ。青い壁は分厚く、ブレイクダウンにもすぐ絡んでいく。

 

 そして10分、試合をひっくり返す。自陣でFLベン・ガンターがボールを奪うと、カウンターを開始。左サイドでボールを持った山沢が縦にボールを蹴ると、WTBマリカ・コロインベテがフォーリーとの競争に競り勝った。飛びついたフォーリーにボールに触れられたことで、コロインベテのスピードは落とされたが、サポートに入った山沢へパス。山沢は悠々とインゴール中央にボールを運んだ。さらにコンバージョンキックを決める。

 

 両チームがPGで3点を追加した後の28分。山沢は約25mの位置でDGを決めた。これで2試合連続DG。さらにトライ、PG、DG、Gと4種類すべての得点パターンを挙げる“フルハウス”を達成した。熊谷出身のファンタジスタの大活躍で23-15とリードを奪った。試合終了間際にWTB長田智希がトライ、山沢がゴールを決めて30-15でノーサイド。白熱の首位攻防戦は、3シーズン実質無敗(昨季は2試合で不戦敗)の埼玉WKが制した。

 

 プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)は文句なしで両軍最多の25得点を挙げた山沢が受賞した。「チームがヤマを輝かせた」とはロビー・ディーンズ監督。堅い守備が彼の活躍、チームの勝利を支えたのは言うまでもない。後半23分、FL福井翔大がトライセーブ。後半36分には途中出場のCTBハラトア・ヴァイレアにインターセプトされてカウンターを食ったが、ライリーが追いついてインゴールへの侵入を許さなかった。

 

 相手をノートライに封じた。S船橋・東京ベイのフラン・ルディケHCは、「残り10分の差」と終盤のトライチャンスを生かせなかったことを悔やんだ。「最後までしぶとくディフェンスされた」とキャプテンのCTB立川理道。埼玉WKのキャプテン、HO坂手淳史は「このチームの価値はディフェンスで見えると思っている。ゲインライン切られることがあってもプライドを見せることができた」と胸を張った。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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