まずはWBC、日本代表の皆さん、優勝おめでとうございます! 大会MVPに大谷翔平選手、吉田正尚選手もベストナインに選ばれましたが、2人をはじめ選手の活躍はもちろん素晴らしかった。私がMVPを選ぶとしたら、栗山英樹監督です。彼が監督でなければ大谷選手、ダルビッシュ有投手らを日本代表に呼べなかったかもしれない。目に見えない部分でも、チームに運を引き込んでいたように思います。

 

 また各メディアなどで報じられていますが、栗山監督の“信じる力”が注目を集めています。それは我々、アマチュア野球でも必要なことです。私自身、その点を意識しながら監督業に努めてきたつもりです。数年前には里見治会長に「選手とのコミュニケーションをしっかり取ってくれている」と褒めていただきました。親身になって選手と話することを常日頃から心掛けています。

 

 采配に関しては、決勝でダルビッシュ投手と大谷投手を含めた7人による継投でアメリカ打線を封じました。栗山監督も、都市対抗などいろいろな野球を見ていると聞きますが、それが参考になったのではないでしょうか。短期決戦が多い社会人野球では、5人以上の継投はしばしば見られる起用法。様々な野球を勉強にしているという栗山監督らしい采配だったと思います。

 

“信じる力”という観点で言えば、大会中、不調と言われていた村上宗隆選手を信じて使い続けたこと。まぁ、その期待に応える村上選手もすごいんですが……。チーム状況、選手のコンディションなどは、実際にチームにいないとわからないところですが、栗山監督のマネジメント力が光った大会だったと言っていいのではないでしょうか。

 

 また日本代表の優勝を支えた裏方の1人、ブルペンキャッチャーを務めた梶原有司の存在。彼は四国アイランドリーグ(現・四国アイランドリーグPlus)の愛媛マンダリンパイレーツの1期生です。そう私が愛媛の監督時代の教え子です。メールを送ったり、帰国後も電話で話したりしました。

 

 彼は愛媛を退団後、日本ハムのブルペンキャッチャーを務めており、大谷選手、ダルビッシュ投手の球を受けてきた。WBC決勝では6回あたりから大谷選手がリリーフの準備をしていましたが、ブルペンで彼が肩をつくる際、球を受けていたのが梶原です。それだけブルペンで、そして大谷投手に信頼されている。

 

 裏方とはいえ、WBCという大舞台を経験することは、なかなかできない。独立リーグ出身者が、日本代表の世界一を支えていたことも、ぜひ覚えておいて欲しいことです。

 

 今季最初の公式戦の収穫と課題

 3月20日に開幕した今季最初の公式戦、JABA東京都企業春季大会は、優勝した明治安田生命との初戦で敗れるなど、6位に終わりました。新しい選手を使っている中で、全体的に打線は湿っていた印象です。3試合中2試合で完封負け。短期決戦、チャンスを確実に仕留めること。そうしないと勝利は見えてこない。投手陣は3試合ともに3失点以内に抑えていたので、やはり打撃が課題と言えるでしょう。

 

 明治安田生命戦で先発したのが飯田大翔。立ち上がりよく投げて、6回途中2安打1失点と、次に繋がる内容だったと思います。チームの今季公式戦最初の先発マウンドを託したということは、私自身の期待の表れ、いや激励のメッセージを込めています。先月もお話ししましたが、飯田は去年の後半から今年にかけてピッチングスタイルを変えているところ。変化球のコントールが非常に良くなり、ピッチングの幅は広がっていると思います。

 

 飯田は長崎・海星高校から入ってきて、6年目。大卒2年目と同じ年齢。本人もプロ入りを視野に入れていますので、大事な1年となります。昨季、先発陣をリードした草海光貴、舘和弥に割って入るような存在となってくれることを期待しています。

 

 この3試合では大卒ルーキーを含む6人の新戦力を起用しました。彼らには社会人野球の雰囲気を感じて欲しい。活躍すれば自信がつくでしょうし、ダメだった時はその悔しさを次にどう生かすか。“やられたらやり返す”という気持ちが私は大事だと思っています。勢いのある新人が活躍するチームは強い。彼らには失敗を恐れず、思い切ってプレーして欲しいですね。

 

 新戦力ではありませんが、昨季途中から外野手に挑戦している捕手の高本康平は、3試合クリーンアップ(明治安田生命戦が4番、残り2試合は5番)で起用しました。昨年の社会人日本選手権のパナソニック戦でホームランを放つなど、バッティングは非凡なものを持っています。練習に取り組む姿勢もしっかりしている。主に4番を打った根岸晃太郎を脅かす存在になってもらいたいと思っています。

 

 今大会、春先ということもあり新戦力の見極めという段階とはいえ、JR東日本、東京ガスといった都市対抗優勝経験のあるチームが初戦を落としました。このことからも、東京都の各チームの戦力差がなくなってきているように感じます。都市対抗の東京都予選を見据えた春の大会。各チームのデータを取ることもできました。まずは今大会の結果を真摯に受け止め、前進あるのみです!

 

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