1日、第95回記念選抜高校野球大会決勝が甲子園球場で行われ、山梨学院(山梨)が報徳学園(兵庫)を7-3で破り、初優勝を果たした。4回表に2点を先制された山梨学院は、5回裏に打者一巡の猛攻で7得点のビッグイニングをつくり、山梨県勢としても初の優勝を手にした。山梨学院の吉田洸二監督は、2009年に清峰(長﨑)を率いた時以来、2度目のセンバツ制覇となった。

 

◇決勝

 林、紫紺の大旗手繰り寄せる2戦連続完投

報徳学園(兵庫)

3=000|200|010

7=000|070|00X

山梨学院(山梨)

本塁打 (山)佐仲1号2ラン

 

 開幕試合を戦った山梨学院が、最終日も甲子園の地に立って決勝を迎えた。1回戦から登場の山梨学院は東北(宮城)、氷見(富山)、光(山口)、作新学院(栃木)、広陵(広島)を破り、県勢初となる決勝にコマを進めた。

 

 先発マウンドには6連投で林謙吾(3年)が上がる。準決勝までの5試合で3完投。残り2試合も光戦が7回2/3、作新学院戦が8回と、ほぼ1人で投げ抜いてきた。日本高校野球連盟が定める1週間500球の球数制限の対象になるのは、27日の光戦から31日の広陵戦までの3試合計340球。決勝では160球まで投球が可能だった。

 

 対する報徳学園は、2回戦からのスタート。健大高崎(群馬)、東邦(愛知)を下すと、昨夏王者の仙台育英(宮城)、前回王者の大阪桐蔭(大阪)も撃破し、21年ぶりに決勝に進んだ。4試合中3試合が逆転勝ちと、“逆転の報徳”を発揮した。決勝の先発はエース盛田智矢(3年)ではなく準決勝で好リリーフをして逆転に繋げた間木歩(2年)が任された。

 

 林、間木の両投手は序盤3イニングをゼロに抑えた。試合が動いたのは4回表だ。先頭の3番・堀柊那(3年)がサードへの内野安打で出塁。チーム初ヒットが飛び出すと、4番・石野蓮授(3年)がレフト前ヒットで続く。5番・辻田剛暉(3年)が送りバントで1死二、三塁のチャンスをつくった。

 

 林が6番・西村大和(2年)への初球を投じようとした際にアクシデントは起こった。着地した左足を滑らし、バランスを崩す。そのまま投げることができなかった。アンパイアはボークを判定し、三塁ランナーは労せずして生還した。林は西村にセンター前に弾き返され、2点目も許した。それでも5回表は三者凡退に切って取り、流れを手繰り寄せようとする。

 

 その裏、間木の前にヒット1本だった打線が火を噴く。1死一塁から林のツーベースを皮切りに伊藤光輝(3年)、徳弘太陽(3年)、星野泰輝(3年)、岳原陸河(3年)の5連打で一挙5得点を挙げた。たまらず報徳学園は間木から今朝丸裕喜(2年)にスイッチ。2死となったが、5番・佐仲大輝(3年)がトドメの一撃。カウント1-2からの4球目をレフトスタンドに運んだ。今大会チーム第1号となる2ラン。この回、山梨学院は7得点のビッグイニング、報徳学園のお株を奪う逆転劇だ。

 

 5点のリードをもらった林は、6回表を三者凡退に打ち取った。7回表はヒット1本で報徳学園に点を与えない。8回表に1死一、三塁のピンチを招き、内野ゴロの間に1点を失ったが、最後まで崩れしなかった。9回表は先頭の西村をショートフライ、7番・林純司(3年)を空振り三振。8番・竹内颯平(3年)はカウント1-0からのストレートでセンタフライに打ち取った。

 

「初戦から楽しんで投げていた。それを貫き通せて良かった」と林。今大会6試合に先発し、969球を投げた。防御率1.57と安定したピッチングを披露し、今大会4試合目の完投で、チームに初のセンバツ優勝をもたらした。「自分たちの力を出し切って終わりたいと思って参加した。甲子園が選手を1試合1試合成長させてくれた。最後に力を出し切った試合ができました」と吉田監督は頬を緩めた。

 

(文/杉浦泰介)