前期は19勝22敗4分。3年目で初の負け越し、Bクラスに終わりました。昨年までの左右両エース、相原雅也と高梨篤が抜けた今年のテーマは打って勝つ。ところが、頼みの野手陣に故障者が続出してしまいました。

 まずは以前、打撃面の成長をほめたトモがスライディングの際に右肩を亜脱臼。次いで新加入の孝太郎(クラーク記念国際高出身)が左足の靭帯を損傷しました。古卿大知も古傷のひざを痛めれば、新4番の中村竜央も頚椎をねんざ……。まるで野戦病院のようなチーム状態でした。

 チーム内にインフルエンザも蔓延しました。マサキYAMASHIN國信貴裕といった主力が倒れ、投手陣の上里田光正西川徹哉も体調不良を訴えました。練習をしっかりやって試合に臨む高知のスタイルが取れなかったことが低迷の一番の原因です。それでも限られた人数の中でやりくりするのが僕たちの仕事。結果を残せなかったことはファンに申し訳なく思っています。

 ただ、主力がいない分、新しい力が芽を出し始めました。投では山隈茂喜(函館大学−熊本ゴールデンラークス出身)、打では高井啓行(近江高出身)でしょう。
 山隈はシーズン開幕前、僕のところに自ら売り込みにやってきた男です。入団の意志を確かめるため、僕はある“テスト”を課しました。それは焼鳥屋での住み込みバイト。チームのある選手のお父さんが営んでいる焼鳥屋があり、そこで働くことを条件にしたのです。もちろん、昼間の練習もフルにやってもらいました。

「こちらがOKを出すまで、我慢できるかな」。そう思いながらの1ヵ月間、山隈は仕事と野球の両立を頑張ってやりとげました。テストは晴れて合格。山隈を正式にチームの一員にすることに決めました。

 正直、山隈はブルペンの練習を見る限り、これといった特徴はありません。球速はMAXで140キロそこそこ。ただ、テストでも証明されたように気持ちが強く、実戦向きのピッチャーです。なによりボールが高めに浮くことが少ない。低め低めにしっかりコントロールできます。スライダーとのコンビネーションで、試合になると思った以上に好投をみせてくれました。
 今後はもうワンランク上を目指し、あるメジャーリーガーのボールをマスターさせたいと考えています。それは“レインボール”。パイレーツの桑田真澄が得意にしているスローカーブです。緩急が使えるようになれば、ピッチングの幅は広がることは間違いありません。

 高井に関しては入団時から「角中2世」と期待していた選手です。まだ18歳。荒削りですが思い切りがいい。三振かホームランかという面白い存在になってきました。阪神との交流試合で2本塁打を放ったところに光るものを感じます。振り返ってみれば、角中勝也(現千葉ロッテ)も最初から目立っていたわけではありませんでした。スローイング以前のキャッチボールから練習し、外野手としての打球の追い方も1から四国で教えました。それが1年で強肩外野手としてアピールできるところまで成長したのです。高井も守備はまだまだ。でも細かいことは言いません。後期も思い切ってプレーしてくれることを望んでいます。

 後期シーズンもあっという間に始まり、終わるでしょう。戦力補強ができる時期ではないですし、戦うのは今いる選手たちの他にいません。ドラフト会議まで残された時間はわずか。結果はともかく、悔いの残らないよう選手も僕も頑張ります。高知のみなさん、暑い夏をともに乗り切りましょう!

山隈茂喜(やまくま・しげき)
 1983年6月28日、熊本県出身。右投右打。九州学院高を経て、函館大学時代は北海道六大学野球で2季連続、優秀投手賞を獲得した。スライダーとフォークが武器。5月より高知に入団し、ここまで1勝3敗1S、防御率2.03の成績を残している。

高井啓行(たかい・ひろゆき)
 1989年2月18日、岐阜県出身。右投左打。今春、近江高を卒業し、すぐに高知へ。一発長打が魅力の外野手だ。6月以降はクリーンアップに座ることも多くなり、33試合で.260、本塁打2、打点16をマークしている。

藤城和明(ふじしろ・かずあき)プロフィール>: 高知ファイティングドッグス監督
 1956年4月5日、兵庫県出身。150キロ近い剛速球を武器にした本格派右腕として、市立琴丘高から新日鉄広畑へ進み、77年のドラフト1位で巨人に入団。82年に阪急へ移籍。86年、ロッテで現役を終えた。引退後は歌手デビューして注目を集める。93年より5年間、巨人の2軍投手コーチを務め、98年には韓国・三星ライオンズ投手コーチも経験した。現役時代の通算成績は101試合14勝19敗、防御率4.51。05年の四国アイランドリーグ創設に伴い、高知の監督に就任。07年も3シーズン目の指揮を執る。


★携帯サイト「二宮清純.com」では、独立リーグのコラムコーナーを更新中です。題して「四国&北信越独立リーグ紀行」。四国アイランドリーグ、北信越BCリーグの監督、コーチ、選手が毎週火曜日に交代で登場し、それぞれの今をレポートします。
 今回は藤城監督のコラムです。「後期のキーマンは誰だ?」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。


太陽石油はアイランドリーグのオフィシャルスポンサーです[/color][/size]
◎バックナンバーはこちらから