「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 プレーオフトーナメント」(PO)準決勝が14日、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)が東京サントリーサンゴリアス(東京SG)を24-18で破り、トップリーグ時代を含め初の決勝進出を果たした。20日の決勝(東京・国立競技場)は、昨季王者の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)と対戦する。トップリーグ最終年から続く3季連続の決勝進出を逃した東京SGは19日の3位決定戦(東京・秩父宮ラグビー場)で横浜キヤノンイーグルス(横浜E)と戦う。

 

 最後まで勝負が分からない手に汗握る展開だった。S船橋・東京ベイと東京SGはノーサイドの笛が鳴るまで、埼玉WKの待つ国立行きの切符を争った。前日までは雨の予報もあったが、試合に水を差すような天気とはならなかった。互いのチームカラー、オレンジと黄色に染まったスタンドが選手たちを出迎えた。

 

 キックオフ直後、いきなり試合が動いた。LOツイ・ヘンドリックがハイタックルで一発レッド。タックルを受けたPR海士広大は担架で運ばれた。前回の対戦では4枚のイエローカードが飛び交ったが、東京SGはいきなり14人で戦うことを余儀なくされた。

 

 それでも数的不利を感じさせないほど、東京SGは攻守で奮闘した。低く速いタックルでS船橋・東京ベイに圧力をかける。今度はS船橋・東京ベイのPR北川賢悟がイエローカード。そこで得たPGをSOアーロン・クルーデンが確実に決めて、3点を先制した。

 

 一方のS船橋・東京ベイはラインアウトからの連続攻撃で試合をひっくり返す。24分、PR紙森陽太がインゴール左中間に飛び込んだ。SOバーナード・フォーリーがコンバージョンキックを決め、7-3と逆転した。

 

 北川のシンビンが解けた後も東京SGは奮闘する。30分、敵陣でペナルティーを獲得すると、FB松島幸太朗がタップキックでリスタート。左サイドに空いたスペースに蹴り込んだ。そのボールにWTBテビタ・リーが追いつき、インゴール左隅にグラウンディング。クルーデンが角度のないコンバージョンキックを成功し、10-7と再びリードを奪った。

 

 後半最初のスコアはS船橋・東京ベイ。フォーリーのPGで追いついた。14分にクルーデンのPGで3点を勝ち越されたが、16分に自慢のFWで前進し、トライを奪った。松島のキックをHOマルコム・マークスがチャージし、ボールを奪取。No.8ファウルア・マキシ、マークス、LOヘルウヴェがインゴールに近付き、最後はマークスが2人のタックルを受けながらインゴールに飛び込んだ。

 

 この日2度目のコンバージョンキックを決めたフォーリーは、さらにトドメを刺しに行く。39分、敵陣からの5mスクラムからじりじりとインゴールへにじり寄る。SH藤原忍からゴール前中央でパスを受け、ポスト左脇に飛び込んだ。「自分としてはFWを使いながら、どう繋がっていけるかと考えた。そこにギャップが生まれた」と殊勲のトライを振り返る。フォーリーは自らコンバージョンキックを決め、24-13と勝利を大きく手繰り寄せた。

 

 ここから東京SGが猛反撃を見せる。40分、クルーデンのトライで18-24。1トライ1ゴールで逆転できる点差まで迫った。ラストワンプレーからアタックを継続。WTB尾﨑泰雅がインゴール左にトライをあげ、1点差に。しかし、TMO(ビデオ判定)の末、トライに至るまでのプレーでスローフォワードがあったと判定され、トライは取り消しになる。

 

 それでもスローフォワードの前にS船橋・東京ベイがオフサイドの反則を犯しており、ノーサイドの笛は鳴らず、試合は続いた。東京SGはラインアウトからのモールで最後の望みをかける。FWが束になって押し込む。インゴール左隅に雪崩れ込んだ。東京SGはトライをアピール。約5分のTMOではトライを確認できず、試合はノーサイド。この瞬間、S船橋・東京ベイ初の決勝進出が決まった。

 

 チーム在籍10年、キャプテンの立川は試合後の会見で振り返った。

「サントリーさんは14人になってからも素晴らしいラグビーをしていました。クボタとしてはやりたいラグビーがなかなかできずにかなりタフな試合になってしまいました。そこをしっかり勝ち切れたというのは自信にもなりますし、初の決勝という新たな歴史を刻むことができたのも、やっぱり自分たちが今までやってきたことを信じて戦ってきたからこそ結果が得られたと思っています」

 

 司令塔のフォーリーは「チームとしての成長を見せられたが、自分たちのゴールはここじゃない。この先も歴史を築いていく。来週トロフィーを獲れるように戦っていきたい」と意気込む。立川もこう次を見据えた。

「みんなの表情を見ても、まだまだこれじゃダメだという雰囲気でした。もちろんうれしい気持ちはあったのですが、次のファイナルに向けてみんな切り替えていたので、本当にチームとしても成長していると思っています。もう一度、いい準備をしていきたいと思います」

 

(文・写真/杉浦泰介)