13日、「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 プレーオフトーナメント」(PO)準決勝が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、昨季王者の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)が、横浜キヤノンイーグルス(横浜E)を51-20で下した。埼玉WKは20日の決勝に進出し、もうひとつの準決勝(14日、秩父宮ラグビー場)の勝者と対戦する。横浜Eは同敗者と19日、秩父宮ラグビー場で3位決定戦を行う。

 

「セットピースと規律が重要になってくる」と試合前にキャプテンHO坂手淳史が語っていたが、その言葉通り、勝敗の行方を左右した。スクラムを始めとしたセットプレーで優位に立ち、相手の反則を着実にスコアに繋げた王者らしい戦いぶりが光った。

 

 序盤は相手のペースだった。キックオフ直後、埼玉WKのPRヴァルアサエリ愛が危険なタックルでイエローカード。王者はシンビンにより、いきなり数的不利を余儀なくされた。14分にラインアウトのモールからNo.8シオネ・ハラシリにトライを奪われ、SO田村優にもコンバージョンキックを決められた。20分にペナルティーからのリスタートでWTBイノケ・ブルアにインゴール右隅に飛び込まれた。

 

 先制を許した埼玉WKだが、キックで着実にスコアに繋げる。「チーム全体としてもプレッシャーを受けた時間が長かった。3点狙えるところは狙う」とSO松田力也。18分、23分、29分にPGで追撃。35分にはDGを決める。田村にDGを決め返されたものの、終了間際には田村が危険なタックルでイエローカード。その反則で得たPGを松田が決めて、15-17の2点ビハインドで前半を終えた。

 

 ハーフタイム、坂手はチームメイトにこう問うたという。
「疲れたか?」
 返ってきた答えは「疲れていない」。キャプテンは「残り40分。笛が鳴るまで戦い続けよう」と鼓舞した。

 

 後半開始から王者が猛威をふるった。2分、連続攻撃から敵陣に侵入。仕上げはWTBマリカ・コロインベテだ。ラックからボールを拾うと、目の前に空いたスペースを突き、トライを挙げた。前半4本のキック(PG3、DG1)を決めた松田は、コンバージョンキックを確実に決めた。22-17とこの試合、初めてのリードを奪う。

 

 FB小倉順平にPGで3点を返され、田村がシンビン明けでピッチに戻ってきても依然として埼玉WKのペースは変わらない。13分、FB野口竜司が左サイドでハイパントをキャッチし、カウンターアタック。パスを受けたCTBディラン・ライリーが縦に蹴り出す。無人のスペースに転がるボールに誰よりも早く追いついたのがコロインベテ。オーストラリア代表のWTBがインゴール中央に滑り込んだ。

 

 17分にはライリーがトライ。相手のレッドカードで数的有利となると、一気に畳み掛けた。30分に松田のPGで19点差に広げる。31分にはコロインベテが左サイドを50m以上独走するトライ。松田のコンバージョンキックが決まり、44-20と勝敗をほぼ決定付けた。1トライ1ゴールを追加し、51-20でノーサイド。埼玉WKがトップリーグを含めれば、3季連続の決勝にコマを進めた。

 

 ロビー・ディーンズ監督はこう試合を総括した。

「フィジカルでタフなセミファイナルでした。横浜キヤノンイーグルスさんから厳しいプレッシャーを掛けられ、モメンタムを妨害がされ、自分たちの流れを掴めませんでした。坂手キャプテンを中心に冷静に落ち着いてプレーしてくれて、スコアボードに得点を刻んでくれた。ハーフタイムを終えてから裏を狙い、その結果、モメンタムを取り戻してくれました。選手たちの成長を誇りに思いますし、タフな選手たちだと実感しています。自分たちが欲しかった結果というものが得られました」

 

 敗れた横浜Eの沢木敬介監督は「40分はある程度戦えたと思うんです」と前半の戦いを評価した。

「プレッシャーゲームでは何が大事なのか。ウチは経験のない選手が多い中で、プレーオフでチャンピオンのワイルドナイツと戦えて、いい勉強になったと思います。現状、これくらいの差があるというのを受け止めていく。ただ、今まで築いてきたものは自信を持っていい。負けて全部が消えるわけではない。このゲームの成長を来週、もう1回見せられるように、チーム全員で3位を狙っていきたいと思います」

 

 坂手は「また成長して次に向かいたい」と1週間後の決勝に目線を向ける。連覇へ王者の視線は揺るがない。

 

(文・写真/杉浦泰介)