パイレーツの桑田真澄が6月14日(日本時間15日)、ホームでのレンジャーズ戦に登板し、負け試合ながら9回の1イニングを三者凡退に切ってとった。
 11球中「レインボール」と名付けたカーブを4球も投げた。カーブは桑田がメジャーリーグで生き残るための生命線だろう。

 高校時代から大きくタテに割れるカーブを得意にしていた桑田だが、プロに入ってしばらくたってから、自慢のカーブをあまり投げなくなった。
 桑田に聞くと「審判がストライクにとってくれないんですよ」とのこと。横浜の工藤公康も同じようなことを言っていた。

 90年代、日本のプロ野球はスライダーが全盛で、猫も杓子もスライダーを投げていた。一級品のカーブを見る機会の少なくなった審判は、自信がないためどうしても判定が辛くなる。
「ストライクゾーンは奥行きがある。すなわち直方体なんです。その一角でもかすめれば本当はストライクなんですが、審判はキャッチャーが捕った位置でストライクかボールかを判断する。

 こうなるとタテに割れるカーブはミットにおさまる位置が低いため、審判はボールと判定しがち。ストライクゾーンの一角をかすめていても、ですよ。ストライクにとってくれないんだから投げたくても投げられない。カーブピッチャーが少なくなった理由は、そこにあると思いますよ」
 春のキャンプで会った際、工藤はそう解説してくれた。

 日本よりもボール一つ低めに広いメジャーリーグでは、キャッチャーのレガースあたりのボールでもストライクゾーンを通過していればきちんとストライクにとってくれる。バッターのタイミングを狂わせる意味ではスローカーブなども有効だろう。

 幸い、ルーキーということでメジャーの打者は桑田のカーブに対する“免疫”はない。1年目は徹底してカーブで押すべきだ。フォークとの組み合わせも面白い。間違ってもストレートでストライクをとりにいってはならない。

<この原稿は07年7月9日号『週刊大衆』に掲載されています>

◎バックナンバーはこちらから