人事はバランスが大事である。生え抜き、FA(フリーエージェント)組、外国人、ルーキー、トレード組――出自の違う選手たちがそれぞれの分野で活躍しているのが今季の巨人である。

 私はこれを“五角形の法則”と呼んでいる。生え抜きばかりではチームは活力を失い、停滞する。だからといってFA組やトレード組など“外様”ばかりになってしまえば、チームのアイデンティティは消失する。
 人数制限のある外国人はあくまでも“助っ人”であり、ルーキーは一人でも二人でも頭角を現せば儲けもの、といったくらいのスタンスが望ましい。

 今季の巨人は五角形のバランスが実にいい。まず生え抜きだが高橋由伸が1番に定着し、核弾頭の役割を果たしている。扇の要の阿部慎之助はキャプテンの責任感ゆえか、ケガを押して出場し、決勝打を放ったりしている。サウスポーの高橋尚成は6勝1敗(5月30日現在)と今やリーグの勝ち頭だ。

 FA組では日本ハムからやってきた小笠原道大が3番に定着し、持ち前の強打でチームを牽引する。トレード組ではオリックスから移籍の谷佳知が2番打者としていぶし銀の活躍を見せている。

 外国人では巨人で2年目を向かえるイ・スンヨプが4番の存在感を示せば、元メジャーリーガーのデーモン・ホリンズは“意外性の男”として、ここ一番で勝負強さを発揮している。

 ルーキーの金刃憲人にいたっては前評判以上だ。ローテーションの一角にしっかりと食い込み、5勝1敗、防御率2.85。現時点では新人王の最有力候補だ。

 巨人は昨季、交流戦で失速したが、五角形のバランスが保たれている今季は大崩れしないだろう。上原浩治を先発から抑えに回すという“人事異動”も成功した。クライマックスシリーズ出場の条件となる「3位以内」はほぼ確定と見て間違いあるまい。

<この原稿は07年6月16日号『週刊ダイヤモンド』に掲載されています>

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