第10回 「総合力のガンバ」
Jリーグは相変らずガンバ大阪が好調を維持しています。13節終了時点で2位の浦和レッズに勝ち点差4、3位の川崎フロンターレに勝ち点差6をつけて首位を快走していますね。ガンバの強さは、その総合力にあります。
ガンバは13節終了時点で27得点を奪っていますが、その内、チーム得点王のバレーが挙げた得点はわずか7点だけです。その他はマグノ・アウベス4点、遠藤保4点、二川3点……といった具合に、複数の選手が満遍なく得点しています。全22点中、半分の11点をウェズレイ1人で叩き出しているサンフレッチェ広島とは対照的です。
複数の選手が得点しているということは、多彩な攻撃パターンを持っているということです。また特定の選手に頼っていないため、調子を崩した選手がいたとしてもチームに及ぼす影響を最小限に留めることができます。ガンバが安定した戦いをしているのは当然なんですね。
ガンバを追うレッズ、フロンターレはJリーグの他にA3チャンピオンズカップやアジアチャンピオンズリーグも戦い抜かなければなりません。選手のやりくり等チームにかかる負担は決して少なくないでしょう。今後もガンバがJリーグを牽引していきそうです。
一方、下位陣を見ると、13節終了時点で16位と低迷しているジェフ千葉が気になります。ジェフは昨季途中でイビチャ・オシムが代表監督に就くのに伴い、彼の息子のアマル・オシムが監督に就任しました。今季はそのアマルが開幕から指揮をとっていますが、なかなかチームが軌道に乗らないようです。16位はイビチャ時代には見られなかった順位ですからね。
アマルの手許にはイビチャが残したデータやチーム作りの様々な手法があるはずですが、アマルがそれを活用しきれていないのかもしれません。もっとも、ある意味でそれは当然かもしれません。監督ならば誰であれ、他人の真似ではなく自分独自の方法で指揮をとりたいですからね。監督は結果が出なければ首を切られる職業ですから、せめて在職中は自分の思い通りにしたいと思うのも当然でしょう。
アマル監督以外にも横浜FCの高木監督、東京ヴェルディのラモス監督といった若手の監督が苦戦しています。若手ばかりではなく、FC東京の原監督、横浜F・マリノスの早野監督といった現場復帰した経験豊富な人たちもチーム作りが思い通りに進んでいないようです。改めて監督業の一筋縄ではいかない難しさを痛感します。
「代表復帰した中田浩二に期待!」
モンテネグロとコロンビアを迎えるキリンカップが間もなく始まります。日本代表は2月のペルー戦以来の試合となりますが、ヨーロッパと南米の曲者相手にどんな戦いをみせてくれるか非常に楽しみですね。
今大会は当然7月のアジアカップを見据えた戦いになるはずです。召集されたメンバーもアジアカップに向けて絞りこまれていくでしょう。大会を通して手応えを感じることができればいいのですが、キリンカップが一つの大会である以上、結果も重視すべきです。6月1日のモンテネグロ戦、5日のコロンビア戦ともに勝利を期待しています。
今回新たに召集された注目株は、オシム体制下では3人目の海外組となる中田浩二(バーゼル)です。中田浩はスイスのバーゼルでレギュラーとして活躍しており、今季は国内カップ制覇に貢献しました。ヨーロッパでタイトル制覇に貢献したことだけでも凄いことです。こうした活躍がオシムの目にも写ったのでしょう。
中田浩自身にとっても嬉しい代表復帰だと思います。トルシエ時代、ジーコ時代は代表の常連でしたが、監督がオシムに代わってからは一度も呼ばれていませんでしたからね。ヨーロッパで培った自信をプレーで表現することを期待しています。
他に期待したいのはU−22世代から召集された水本、青山直、水野、本田圭、家長の5人です。下の世代の選手が召集されることは、オシムジャパンではすっかりお馴染みとなりました。特に今回はU-22代表が北京五輪アジア2次予選を突破して一息ついたところで、彼らをA代表に召集するには絶好のタイミングでした。若い選手たちには決して臆することなく、自分の持てる力を存分に発揮してほしいと思います。
● 大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://business2.plala.or.jp/kheights/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。
*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。
ガンバは13節終了時点で27得点を奪っていますが、その内、チーム得点王のバレーが挙げた得点はわずか7点だけです。その他はマグノ・アウベス4点、遠藤保4点、二川3点……といった具合に、複数の選手が満遍なく得点しています。全22点中、半分の11点をウェズレイ1人で叩き出しているサンフレッチェ広島とは対照的です。
複数の選手が得点しているということは、多彩な攻撃パターンを持っているということです。また特定の選手に頼っていないため、調子を崩した選手がいたとしてもチームに及ぼす影響を最小限に留めることができます。ガンバが安定した戦いをしているのは当然なんですね。
ガンバを追うレッズ、フロンターレはJリーグの他にA3チャンピオンズカップやアジアチャンピオンズリーグも戦い抜かなければなりません。選手のやりくり等チームにかかる負担は決して少なくないでしょう。今後もガンバがJリーグを牽引していきそうです。
一方、下位陣を見ると、13節終了時点で16位と低迷しているジェフ千葉が気になります。ジェフは昨季途中でイビチャ・オシムが代表監督に就くのに伴い、彼の息子のアマル・オシムが監督に就任しました。今季はそのアマルが開幕から指揮をとっていますが、なかなかチームが軌道に乗らないようです。16位はイビチャ時代には見られなかった順位ですからね。
アマルの手許にはイビチャが残したデータやチーム作りの様々な手法があるはずですが、アマルがそれを活用しきれていないのかもしれません。もっとも、ある意味でそれは当然かもしれません。監督ならば誰であれ、他人の真似ではなく自分独自の方法で指揮をとりたいですからね。監督は結果が出なければ首を切られる職業ですから、せめて在職中は自分の思い通りにしたいと思うのも当然でしょう。
アマル監督以外にも横浜FCの高木監督、東京ヴェルディのラモス監督といった若手の監督が苦戦しています。若手ばかりではなく、FC東京の原監督、横浜F・マリノスの早野監督といった現場復帰した経験豊富な人たちもチーム作りが思い通りに進んでいないようです。改めて監督業の一筋縄ではいかない難しさを痛感します。
「代表復帰した中田浩二に期待!」
モンテネグロとコロンビアを迎えるキリンカップが間もなく始まります。日本代表は2月のペルー戦以来の試合となりますが、ヨーロッパと南米の曲者相手にどんな戦いをみせてくれるか非常に楽しみですね。
今大会は当然7月のアジアカップを見据えた戦いになるはずです。召集されたメンバーもアジアカップに向けて絞りこまれていくでしょう。大会を通して手応えを感じることができればいいのですが、キリンカップが一つの大会である以上、結果も重視すべきです。6月1日のモンテネグロ戦、5日のコロンビア戦ともに勝利を期待しています。
今回新たに召集された注目株は、オシム体制下では3人目の海外組となる中田浩二(バーゼル)です。中田浩はスイスのバーゼルでレギュラーとして活躍しており、今季は国内カップ制覇に貢献しました。ヨーロッパでタイトル制覇に貢献したことだけでも凄いことです。こうした活躍がオシムの目にも写ったのでしょう。
中田浩自身にとっても嬉しい代表復帰だと思います。トルシエ時代、ジーコ時代は代表の常連でしたが、監督がオシムに代わってからは一度も呼ばれていませんでしたからね。ヨーロッパで培った自信をプレーで表現することを期待しています。
他に期待したいのはU−22世代から召集された水本、青山直、水野、本田圭、家長の5人です。下の世代の選手が召集されることは、オシムジャパンではすっかりお馴染みとなりました。特に今回はU-22代表が北京五輪アジア2次予選を突破して一息ついたところで、彼らをA代表に召集するには絶好のタイミングでした。若い選手たちには決して臆することなく、自分の持てる力を存分に発揮してほしいと思います。
● 大野俊三(おおの・しゅんぞう)<PROFILE>
元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザ(http://business2.plala.or.jp/kheights/)の総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。
*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。