四国で唯一、企業として男子テニス部をもつ伊予銀行は、日本のアマチュアテニス界では、トップレベルを誇る。今年度もダブルスでは神戸オープン、九州毎日オープン、関西オープンと、参加した3大会全てに優勝するなど、幸先よいスタートを切っている。最大の目標は毎年12月、1月に行なわれる日本リーグでの決勝トーナメント進出だ。
(写真:(左上から)湯地選手、横井監督、日下部キャプテン、(左下から)小山選手、植木選手、萩森選手)


 現在、伊予銀行男子テニス部の部員は5人。最年長の湯地和愛、チームNo.1の実力をもつ日下部聡、若手ホープの小山裕史と萩森友寛、そして新人の植木竜太郎だ。

 今年2月、これまで3年間チームを牽引してきた湯地選手に変わり、日下部選手が新キャプテンに就任した。彼をキャプテンに指名した理由を、横井晃一監督は次のように語った。
「日下部は、実力的にはうちのチームのエースです。しかし、メンタル面では弱い部分があり、少し波がある選手でした。キャプテンになれば、自分のことだけではなく、周りの選手についても考えなければいけません。精神的にも一皮向け、もう一段上のレベルにいってほしいと思ったのです」

 伊予銀行男子テニス部の練習は、平日は火曜日から木曜日の3日間(月曜日と金曜日は終日仕事)。朝8時から11時まで練習し、13時から出社する。そして、火曜と木曜の就業後は、ジムで主にウエイトトレーニングやマッサージを行ない、フィジカル面での強化を図っている。土曜日は終日練習、日曜日は主に大会会場への移動となることが多いが、何もなければ半日練習やオフにあてられる。ジムでのウエイトトレーニングでは、専任のトレーナーが各人のメニューを作成するが、その他の練習メニューは全てキャプテンである日下部選手の仕事だ。

(写真:今年度から新キャプテンとしてチームを牽引する日下部選手)
「日々の練習メニューを考えるためには、プレーの特徴や得意、不得意といった技術的なことはもちろんのこと、コンディションにおいても選手一人ひとりのことをきちんと把握しなければいけません。今までは自分のことだけを考えてきましたが、キャプテンになって周りを見るようになり、視野が広がったような気がします」
 と日下部選手は語る。横井監督の狙い通り、キャプテンとして、そして一選手として成長しているようだ。

 決勝トーナメント進出へのこだわり

 国内最大の大会である日本リーグでは、全国16の企業チームが集い、シングルス2試合、ダブルス1試合の団体戦で日本一の座を競う。8チームずつの2ブロックに分かれて総当たり戦が行なわれ、その上位3チーム、計6チームで決勝トーナメントが行なわれるシステムとなっている。

 伊予銀行は05年度、初めて決勝トーナメント進出を果たした。決勝トーナメントでは1−2で協和発酵に敗れ、5位タイ。しかし、決勝トーナメントに進出した6チームのうち優勝したソニー、準優勝の北日本物産、三菱電機やミキプルーンはプロ選手で構成されたチーム。従って、アマチュアではNo.2の座を奪ったことになる。

 昨年度は2年連続の決勝トーナメント進出を目指したが、3勝3敗で迎えたセカンドステージ最終戦のリコー戦に1−2で破れ、ブロック4位という結果に終わった。横井監督は「とびぬけて悪い成績ではない」としながらも、「前年のリーグ5位という成績を考えれば、納得できるものではない。今年こそは、必ず決勝トーナメントに進出し、アマチュアトップの座を奪いたい」と強い姿勢を見せている。

 リコー戦での一番の敗因は、勝利への執念に欠けていたことにあった、と日下部選手は分析する。
「実は、リコーとは一昨年も日本リーグで対戦していて、その時は3−0で僕らが完勝したんです。僕らもリコーもメンバー的にはほとんど変わっていなかった。だから、勝てない相手ではなかったんです。
 でも、リコーは一昨年の借りを返そうと、必死になって勝ちにきていました。プレー中のガッツポーズにも、いつも以上の気合いが感じられたんです。技術的なことというよりも、相手の強い気持ちに僕らが負けてしまいました」

 3大会連続ダブルス優勝!

 再び日本リーグでの決勝トーナメント進出を目指して、現在各地方で行なわれているオープン戦に出場している。4月初旬に行なわれた神戸オープン戦ではシングルスで小山選手がベスト8、ダブルスでは湯地、小山ペアが優勝。続いて行なわれた九州毎日オープンではシングルスで日下部選手がベスト4、ダブルスでは日下部、萩森ペアと湯地、小山ペアがともに決勝進出を果たし、チームメイト同士の対決となった決勝では、2−1で日下部、萩森ペアに軍配が上がった。

 そして、ダブルスのペアを替えて臨んだ関西オープンでは、ダブルスで準々決勝では昨年度の学生チャンピオンペアを、準決勝ではプロを相手に、どちらもストレート勝ちを収めて決勝へとコマを進めた小山、萩森ペアが優勝を飾った。

「僕たちは個人意識が高いプロとは違い、“伊予銀行”という企業を日本全国にアピールする責務がある。それがプレッシャーでもあり、またやりがいでもあります。だからこそ、今年は必ず日本リーグの決勝トーナメントに進出しなければと思っています」
 監督同様、キャプテンもまた日本リーグに賭ける思いは強い。

 5月28日から始まる関東オープンから、4月に入行した植木選手が新人研修を終え、いよいよ本格的にチームの仲間入りをする予定だ。植木選手は昨年、ユニバーシアードの候補選手になったほどの実力の持ち主で、ガッツあふれるプレーが魅力だ。「植木は辛い練習も自ら積極的にやろうとする。彼が入ったことで、選手同士の競争意識が高まり、チームのレベルアップにつながる」と横井監督は相乗効果を期待している。
(写真:期待のルーキー・植木選手)

 来年1月に行なわれる日本リーグでの目標達成を目指し、チームとして切磋琢磨してレベルアップを図る伊予銀行男子テニス部。今年一年間の飛躍に期待したい。


【チームプロフィール】
 1989年に創部。1年目に日本リーグに初昇格、初出場。92年に再び昇格し、以後15年間、日本リーグに出場している。05年度には初の決勝トーナメント進出を果たし、リーグ5位タイ。今年度は2年ぶりの決勝トーナメント進出を狙う。

監督 横井晃一(よこい・こういち)
 専修大学出身。昨年度は2年ぶりに日本リーグに出場した。日本ランキングの最高位は31位。

日下部聡(くさかべ・そう)
 専修大学出身。27歳。昨年度はシングルスではシーサイドオープンで準優勝、ダブルスでも小山とペアを組み準優勝。今年度はシングルスでは九州毎日オープンでベスト4、ダブルスでは萩森とペアを組み、優勝。今年度より新キャプテンに就任。日本ランキング41位(5月18日現在)。

湯地和愛(ゆじ・かずよし)
 東京都立大学出身。33歳。昨年度はシングルスではシーサイドオープンでベスト16、ダブルスでは萩森とペアを組み優勝。今年度は神戸オープンで小山とペアを組み、優勝している。日本ランキング104位(5月18日現在)。

小山裕史(おやま・ゆうじ)
 法政大学出身。25歳。昨年度はシングルスではシーサイドオープンで優勝、ダブルスでは日下部とペアを組み、準優勝した。今年度はシングルスでは神戸オープンでベスト8、ダブルスでは神戸オープン(湯地とペア)、関西オープン(萩森とペア)で優勝。日本ランキング49位(5月18日現在)。

萩森友寛(はぎもり・とものり)
 甲南大学出身。25歳。昨年度はシングルスでは福山オープンなどでベスト16、ダブルスではシーサイドオープンで湯地とペアを組み、優勝した。今年度はシングルスでは九州毎日オープン、神戸オープンともにベスト16、ダブルスでは九州毎日オープン(日下部とペア)、関西オープン(小山とペア)で優勝した。日本ランキング88位(5月18日現在)。

植木竜太郎(うえき・りゅうたろう)
 日本大学出身。22歳。昨年のユニバーシアード大会の候補選手。神戸オープンのダブルスでは第1シードのリコー相手に勝ち、ベスト4進出を果たした。今年4月に伊予銀行に入社。日本ランキング222位(5月18日現在)。



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