これからの反転攻勢を誓うような力強いゴールであった。

 

 スコットランド1部セルティックに所属する岩田智輝は10月22日、アウェーでのハーツ戦に途中出場。旗手怜央と交代してピッチに入ると、迎えた後半36分に右サイドを駆け上がってフリーになり、しきりに手を挙げて逆サイドからボールを呼び込もうとする。味方がシュートしてこぼれてきたボールをそのまま左足でとらえ、クロスバーに当ててゴールに蹴り込んだ。

 

 昨年、横浜F・マリノスのJ1優勝に大きく貢献し、リーグMVPにも輝いた実績を手土産に今年1月、セルティックに移籍。2シーズン目に入った今季、古橋亨梧、前田大然、旗手に続くべくブレンダン・ロジャース新監督のもとでレギュラー獲りを期していたが、序列を上げらないもどかしい状況が続いていた。うっ憤を晴らすゴールはいいアピールになった。しかし25日の欧州CLアトレティコ・マドリード戦、28日のハイバーニアン戦、11月1日のセント・ミレン戦とこの過密日程のなかベンチでお呼びは掛からず、出場機会を得ていない。ゴールという結果を出したところで現状を変えることはできていない。

 

 試練を乗り越えてこそ成長できる。そのことは誰よりも岩田自身が分かっているはずだ。

 

 あれは大分トリニータ時代の2018年シーズンだった。ケガから復帰しても試合に絡めなくなり、不満の色が練習態度に表れてしまったことがあった。それを見ていたベテランGKの修行智仁から苦言を呈されたという。

 

『試合に出ることじゃなくて、チームの中心になるためにお前が足りないものを見つめ直してみろ。チームの中心になることを考えたら、行動が変わってくるはずだ』

 

 プロ3年目、自分のマインドを変える大きな一言になった。2年前にこのエピソードを明かしてくれた際、岩田はこう言葉を続けた。

 

「試合に出ようが出まいが、毎日をやり切れているかどうか。チームの中心になるための行動を考えるようになりました。毎日、練習終わりに修行さんが聞いてくるんです。『100%で練習やれたか?』と。『ほかの人に矢印を向けるな。自分に矢印を向けろ』と。プロとして大事なものを教わった気がします。その後、試合に出られるようになったのは本当に修行さんのおかげなんです」

 

 ここから岩田は飛躍の階段を一気にのぼっていく。2021年にF・マリノスに移籍した当初は先発と控えを繰り返しながらも、自分にだけ矢印を向けて取り組んだ先に翌年のリーグ制覇とMVPがあった。

 

 今、セルティックで苦しい状況に置かれているのは確かだ。しかし「毎日をやり切れているかどうか」を指標として、己と向き合っているに違いない。根気強くチャンスを待ち、ハーツ戦のようなアピールを重ねていくしかないだろう。

 

 日本代表には昨夏のEAFF E-1サッカー選手権以降、復帰できていない。しかしセルティックの同僚である古橋、前田、旗手が森保ジャパンで活躍している以上、出場機会を増やしていけば当然、森保一監督の目にも留まるはずだ。

 

 森保ジャパンにとっても何より岩田のポリバレント性は魅力だろう。

 

 11月からスタートする北中米ワールドカップのアジア2次予選では登録メンバーが3人減って23人制に戻る。セルティックでもアンカー、インサイドハーフ、サイドバック、センターバックと様々なポジションで起用されており、最終ラインとボランチを兼務できるのは貴重だ。

 

 日本代表で替えの利かない一人が、球際のバトルで負けない遠藤航キャプテンである。対人の強さ、ユーティリティー性、タフネスぶりは岩田に重なるところが多く、ボールを奪い取る、味方につなげるプレーなど実際に参考にしてきたという。

 

 かつてこんなことを言っていた。

「いろんなポジションをやっているから(周りの考えが)分かるところがあります。一つひとつのパス、ポジショニング、顔出しのタイミング……常に味方のことを考えて動くようにしていて、こだわりと言えばこだわり」

 

 ポリバレントでも先輩である遠藤のようにチームのことを考えて働くことができる強み。この試練を乗り越えてセルティックで存在感を高めていければ、自ずと日本代表は見えてくるに違いない。


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