あれだけ自陣に引きこもる相手から得点を奪うことはそう容易ではない。

 

 2026年北中米ワールドカップのアジア2次予選がスタートし、日本代表は11月16日、大阪・パナソニックスタジアム吹田でミャンマー代表と対戦した。前回の同予選でも戦い、アウェイで2-0、ホームで10―0と危なげなく勝利した相手ではある。今回、ホームでの5-0という結果は、前回に比べて内容的に乏しかったわけでは決してない。

 

 スペースがなくとも、ゴールを重ねたことに意味があった。

 

 押し込んだところで相手のペナルティーエリア付近はミャンマーの選手ばかり。ならばと前半11分、南野拓実は足もとではなく浮き球のパスを狙い、単騎で飛び込んだ上田綺世がヘディングで合わせて放り込んだ。1分前にも町田浩樹から上田をめがけて放り込むシーンがあり、チームとしての狙いの一つでもあったのだろう。

 

 守りを固めてくる相手に対し、先制点を奪うまでに時間が掛かってしまうのはよくある話。メンバーのほとんどが欧州組であり、長距離移動や時差の影響もあったうえに全員がそろってのトレーニングも一日しかない状況だった。それでも試合開始から集中力を研ぎ澄ませ、共有したことをしっかり遂行できるあたりが森保ジャパンの強みである。スカウティングを含めてスタッフが入念に準備をし、極めて短い時間でやるべきことを落とし込んでこの試合を迎えたことはよく理解できた。

 

 先制点を奪ってもミャンマーは出てこない。勝ち点1にも興味を示さず、ただただ失点数をなるべく抑えて日本を離れたいという意図が見え見えだった。そんなミャンマーに対し、鎌田大地が鮮やかにミドルシュートを決め、そしてアディショナルタイムには早いリスタートから堂安律がスペースに出し、走り込んだ上田が流し込んで結局前半だけで3点を奪っている。

 

 後半は上田がハットトリックを達成し、惜しいシュートを続けていた堂安もよくやくゴールをこじ開けた。ボールを保持しつつ90分間通じて試合をコントロールし、ストレスを抱えないままゲームを終えたのだから何も言うことはない。森保監督がよく使う「賢く、したたかに」が展開できたのではないだろうか。

 

 指揮官の選手起用も、コンディションにかなり気を配っていたように見受けられた。今回は板倉滉、前田大然、古橋亨梧、中村敬斗、旗手怜央、伊藤敦樹らがケガで招集できず、三笘薫は日本に戻ってきたもののコンディションと足の張りを考慮されて離脱となった。欧州組は自国のリーグに加えてCL、ELと過密日程にある選手が多い。足に不安を抱える冨安健洋をベンチから外し、伊東純也、久保建英、そしてキャプテンの遠藤航も出場させなかった。コンディションを実際に見たうえで、この日のスタメンを決めたと思われる。

 

 無理はさせず、2チーム制に近い形で臨むプランだろう。次戦はサウジアラビア・ジッダに移動して、同じグループでは日本の次にランキングの高いシリア代表との一戦になる。シリアは16日、北朝鮮代表に1-0で勝利し、同じ場所で日本との戦いに臨むことができる。今回の試合条件で言えば、シリアのほうが言わば好条件だ。冨安の状況は不透明だが、ミャンマー戦で先発から外れた伊東、久保、遠藤、守田英正、菅原由勢、浅野拓磨、伊藤洋輝らはシリア戦の先発メンバーに入ってくるのではないだろうか。

 

 9月の欧州遠征、10月の国内親善試合でもターンオーバーしながら2試合とも勝利を収めていることが裏付けとしてある。「軸は持ちつつもオプションを増やしていく、戦い方の幅を広げていく」とは森保監督の言葉だ。選手を大幅に入れ替えても、持続してチームの力を出していける手応えがあるからこそ積極的なターンオーバーも可能になったと言える。

 

 森保監督はかつてこう語っていた。

「(ワールドカップ決勝で)アルゼンチンとフランスが戦ったあの舞台こそが最高の景色。7戦目となる決勝の舞台で100%を発揮できるだけの組織づくり、チームづくりをしていかなければならない。そう考えています」

 

 メンバーを固めていったのが前回のアジア予選ならば、今回はメンバーに広がりを持たせていくマネジメントのように映る。それこそが次回のワールドカップの戦いにつながっていくはず。点ではなく、線としてつなげていく。シリア戦ではどのような森保流マネジメントを見せてくれるだろうか。


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