「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(リーグワン)リコーブラックラムズ東京(BR東京)が 16日、リコー総合グラウンド・コミュニティハウスで2023-24シーズンに向けた会見を行った。第一部の会見にはピーター・ヒューワットHC、西辻勤GM、キャプテンの武井日向が出席。今季のスローガンや新ジャージなどを発表し、意気込みを語った。また第二部にはジャパンの一員としてW杯フランス大会に出場したアマト・ファカタヴァが登壇し、大会を振り返った。
 
 冒頭に挨拶を終えた西辻GMはこう報道陣に説明した。
「今日、お集まりいただきましたが、サプライズはありません。僕たちらしいシーズンを迎えたい」
 各チームがワールドクラスのビッグネーム加入を発表している中、BR東京は継続路線でいくということだ。昨季は6勝10敗の7位。それでも西辻GMは「悲観していない」という。10敗も接戦が多く、「チームとしてのベースは上がったシーズン。そのベースをビルドして磨き上げたい」と語った。選手、スタッフの大きな入れ替えはない。
 
 今季のチームスローガンに「BREAKTHROUGH」(ブレイクスルー)を掲げる。ヒューワットHCは「このワードはウチにフィットしていると思っています。今まで目の前にある壁をブチ破っていく。自分たちが目指すポジションへブレイクスルーして到達したい」と意気込む。選手たちのブレイクスルーに期待するのは、「スターを獲らなくても、スターが生まれると信じている」と言う西辻GMも同じだろう。
「W杯で活躍した選手を獲ることが必ずしもベストな選択ではないと思っています。個人の能力よりも15人でのパフォーマンス、モチベーションを上げていくことで力を発揮してくれる。それに今いる選手たちの能力が劣っているとも思いません。この中から何年後、日本代表がもっといっぱい生まれると信じています」
 
 上位進出のために指揮官は「上位グループとの差は遠くないと感じている。マインドセット、アクションの一貫性を求めている。昨季は負けてしまったが、競れたことでやってきたことは間違っていないと実感できた。あと10%、15%足りない。それを埋めるためには自分たちがやってきたことを信じ、ブレイクスルーが必要」と方針を示した。喫緊の課題は昨季リーグワーストを記録した反則数だろう。「ディシプリンは重点的にやっています」とヒューワットHC。「毎日ハードワークしてきているので、その成果が見えることを楽しみにしています」と自信を窺わせた。
 
 昨季のチームで最もブレイクスルーした選手がファカタヴァだろう。リーグ戦全16試合にスタメンで起用され、ほぼフル出場。今年7月のサモア戦でジャパン初キャップを刻むと、W杯4試合全てに出場し、チーム最多の3トライを挙げた。「彼のアクション、存在がみんなに自信を与えた」とヒューワットHC。キャプテンの武井も「アマトはブラックラムズのDNAである泥臭さを体現してくれた。ここでやるべきことを遂行することが、ジャパンに繋がる。アマトの活躍がうれしかったし、励みになりました」と効果を口にする。
 

 チームスローガンに因み、今季ブレイクを期待する選手を指揮官とキャプテンに聞いた。
「去年の同じタイミングにこの質問を投げ掛けられていたら、『アマトだ』と答えていたかというと、『Maybe』だと思う。彼のモチベーション、強い意志は見えていて、それが数試合で感じられた。あまりプレッシャーを掛け過ぎたくはないが今季3、4人ブレイクスルーできると思う選手はいます。自分たちの試合が始まったら、それが誰かは見えてくるんじゃないかと期待しています」(ヒューワットHC)

 

 指揮官が「もしかしたら、その中の1人はキャプテンかもしれない」と水を向けられた武井は、「難しい質問ですね」と苦笑しながら、こう続けた。
「もちろん僕自身ブレイクスルーしたい。それは常に思っている。特に昨季、悔しい思いをしたのでより一層強くなっている。僕以外にも悔しい思いをした選手たちもたくさんいる。今年に懸ける思いは強い。名前を出すのは難しいですけど、僕が見ていても去年よりも自らトレーニングしてますし、正しい準備、リカバリーをしている。確実に成長しているのが目に見えている」

 
  事業面でもブレイクスルーを目指す。白﨑雄吾クラブ・ビジョナリー・オフィサー(CVO)は「ブラックラムズに足りないものは注目度だと思っています」と口にする。「注目された試合、日々の練習の中で、強度が上がっていく。試合で負けていたとしても“ブラックラムズならいけるぞ”という雰囲気を事業側からもつくり出していくことにチャレンジしたいと思っています」。そのためにもホストエリアである約92万人(11月時点)の世田谷区民の目をどう向けていくかにも注力していく。かねてから西辻GMも「グラウンドに人を呼ぶ仕組みをつくりたい」と語っている。今年10月にはファンクラブ限定ではあるものの、第45回たまがわ花火大会の観覧会をリコー総合グラウンドで実施した。今後も地域貢献、社会貢献にも繋がる活動を展開する予定だという。
 
 前身の理研光学(当時の社名)ラグビー部は1953年に創部。今年で70周年を迎え、自身もチームOBである西辻GMは「先輩たちが積み上げてきた歴史を洗練し、磨き上げていく。次に繋ぐ責任が僕にはある」と意気込み、こう所信を述べた。「今季は突き抜ける年、生まれ変わる年にしたい。新しい歴史をつくり上げる年にしたい」
 
(文・写真/杉浦泰介)