岡田美優(Knockü代表理事)<後編>「人生を変えた出会い」

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二宮清純: そもそも岡田さんが、パラスポーツに関わるきっかけは何だったんでしょうか?

岡田美優: 両親が特別支援学校の教員で、将来は私も特別支援学校の教員になろうと、漠然と考えていました。高校卒業後、福島大学に進学し、大学3年生の時に教授の誘いで車いすスポーツ指導者講習会に参加し、ドイツ人講師と出会いました。そこから少しずつパラスポーツに興味を持ち、講師のいるドイツに約1年留学しました。

 

伊藤数子: 実際の現地のパラスポーツ環境はどうでしたか?

岡田: ハード面で言えば、車いすで利用できる体育館が多かった。体育館に車いすが常備されていて、誰が来ても車いすスポーツを始めやすい環境があります。クラブ数も多く、スポーツにアクセスしやすい。リハビリの一環で、医師がスポーツクラブを紹介し、その際のスポーツ活動は一定期間健康保険が下りるなど、国としての仕組みづくりができていると感じました。

 

二宮: 日本では床に「傷がつく」「汚れる」などを理由に、車いすスポーツの使用を断る施設管理者もいると聞きます。

岡田: そうですね。まだパラスポーツへの理解は浸透していない。ただ私が現地で見てきた体育館は決して綺麗なものばかりではありません。多少汚くても、誰もが使用できるところがいい点だと思います。

 

二宮: 私も取材で何度かドイツに行ったことがあります。サッカーなどプロスポーツの場合、組合的なフェラインが運営主体ですよね。パラスポーツは?

岡田: クラブ運営にしても、いろいろなパターンがあります。ドイツのプロサッカークラブがブラインドサッカーやアンプティサッカーのチームを持っているケースもあれば、総合型スポーツクラブの形式をとっているケースもある。車いすバスケットボールは、競技単独チームで、競技レベルによってディビジョン(部門)を分けているケースが多いです。

 

二宮: フェラインは公共性を重視しています。

岡田: ドイツのパラスポーツクラブも、地域に根付いた活動が前提で、地元のスポンサーが協賛に入っていて、試合を観に地域住民が集まる。ドイツに行って、パラスポーツクラブの経営者に話を聞き、印象的だったのは、極端にビジネス化に偏っていないことです。できる範囲で、身の丈にあった経営をしている印象があります。

 

“慣れ”は大事

 

伊藤: そのほかに感じた日本との違いはありますか?

岡田: ドイツでは、日常的に車いすユーザーを見かけ、その周りにいる人たちがすごく自然に障害のある人と接している印象があります。例えばスーパーで手に取ろうとした商品が届かない位置にあった時、近くにいた人が「どれを取ればいい?」とサッと手伝っていました。日本だと車いすユーザーに対し、どこか緊張感を持って接しているように映ります。日常的に障害のある人と関わる機会が少ない分、特別な存在と映ってしまうのも無理はないのですが……。

伊藤: おっしゃるように“慣れ”は大事ですね。私も障害のある人に慣れることこそ、共生社会実現への足掛かりだと思います。

 

二宮: このドイツ留学がKnockü(のっきゅー)設立する道に繋がったわけですね。

岡田: そうですね。今はKnocküで、いつでも誰でも参加できる、ドイツにあったようなスポーツクラブをつくりたいというのが、私の思いです。

 

二宮: それほど人生を変える出会いだったわけですね。最後に改めて、岡田さんにとっての共生社会とは?

岡田: 例えば車いすユーザーと一緒に食事をする際、段差を気にしたり、店に事前に連絡したりと、面倒に思うことがあります。それを「まったく苦ではない」と綺麗事を並べるのではなく、かといって腫れ物のように扱うのでもない。「面倒くさいけど、一緒に過ごしたい」「だからお互いに協力し合おう」というように、お互いがありのままで接していくことで、無理のない関係を築けると思います。異なる人同士の間でそういう「面倒くさい」関係性が広がっていくことが、共生社会なんじゃないかなと思います。これからもKnocküの活動を通じ、共生社会の実現を目指します。

 

(おわり)

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岡田美優(おかだ・みゆ)プロフィール>

一般社団法人Knockü代表理事。1994年、神奈川県出身。中学校から大学までハンドボールを11年間続けた。中学・高校で全国大会出場。神奈川県最優秀選手に2回選出された。福島大学では東北リーグ女子1部得点王に輝いた。3年時に参加したパラスポーツのボランティアで車いすバスケットボールと出会い、魅了される。翌年、ドイツに1年間留学。帰国後は早稲田大学大学院に進学し、同時に車いすバスケットボールチームのマネジャーとして2年間活動する。その後、任意団体Knocküを立ち上げ、2022年2月に一般社団法人に移行した。現在は東京都新宿区と千葉市を拠点にドイツをモデルとしたパラスポーツクラブの経営を行っている。

 

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NPO法人STAND代表の伊藤数子さんと二宮清純が探る新たなスポーツの地平線にご期待ください。

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