東京SG、昨季王者のS船橋・東京ベイにダブルスコア 〜リーグワン〜

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「NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24」ディビジョン1第1節が10日に行われ、昨季4位の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)が同王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)を52-26で破った。東京SGは3トライ差以上によるボーナスポイントを加え、勝ち点5を獲得。昨季プレーオフトーナメントを含め3戦全敗の相手にダブルスコアで勝利した。

 

 開幕戦を特別なものと取るか、16分の1と捉えるかはそれぞれだが、この日の東京SGに限って言えば前者の思いが強かっただろう。それは開幕戦前のプレスカンファレンスの場でキャプテンのHO堀越康介の言葉からも見て取れる。
「初戦が一番大事だということをチーム全体で理解しています。昨季、3回も負けている相手なのでどうやってリベンジするかを考えている」
 昨季、S船橋・東京ベイとは開幕戦で対戦し、18シーズンぶりに黒星を喫した。勢いに乗った相手は初の頂点に立ち、プレーオフトーナメント準決勝でも敗れた東京SGは4位だった。
 
 オフには大幅に選手を入れ替え、南アフリカ代表のWTB/FBチェスリン・コルビ、ニュージーランド代表のサム・ケインらビッグネームを獲得した。対するS船橋・東京ベイは、ニュージーランド代表のHOデイン・コールズ、ウェールズ代表FBリアム・ウィリアムズが加入し、連覇への本気度を窺わせる。コルビとケインはこの日のスターティングメンバ―に名を連ね、コールズとウィリアムズはベンチ外となった。
 
 東京・秩父宮ラグビー場での試合はS船橋・東京ベイのホストゲーム。今季はスピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)は改修工事に入ることもあり今季の使用予定がない。スタンドはオレンジとイエローの両軍のチームカラーに染まり、観客は1万8110人が集まった。
 
 先制したのは、スタメン4人がチーム初キャップを刻んだ東京SGだった。敵陣深くのスクラムを起点にFW中心にボールを当てて前進を図る。最後は堀越がS船橋・東京ベイの守備陣の隙間に滑り込むかたちでインゴールにグラウンディング。初キャップのSO髙本幹也がコンバージョンキックを決めて7点先行した。
 
 トライ王が魅せた。11分、WTB尾﨑晟也がWTB松島幸太朗のパスを受けてインゴール右隅にねじ込んだ。19分には髙本、CTB森谷圭介、LOハリー・ホッキングスの素早いパス回しから尾﨑晟也がインゴール右隅にフィニッシュ。昨季18トライを挙げたトライゲッターがその決定力を見せつける。さらに髙本は難しい角度のコンバージョンキックをいずれも成功し、リードを21点に広げる。
 
 1トライ1ゴールを返されたものの、26分に尾﨑晟也の弟・CTB泰雅がトライ。尾﨑晟也は37分にもトライを挙げ、前半だけでハットトリックを達成した。髙本はここでもコンバージョンキックを決め続け、35-7で試合を折り返す最高のスタートを切った。
 
 後半3分にPRオペティ・ヘルにパワフルなキャリーでトライを許したが、その3分後に森谷がトライを挙げ突き放す。26分、34分にも失点したが、その後にきっちり得点を返し、常に試合を優位に運んだ。
 
 S船橋・東京ベイも21分までにリザーブを使い切るなど流れを変えようと抗ったが、この日は東京SGの軍門に下った。「自分たちのラグビーをできなかった」とフラン・ルディケHC。キャプテンのCTB立川理道も「序盤からペースを握られ、追いかける展開。これをやりたくはなかった」と肩を落とした。
 
「昨季3度負けているクボタさんにやっとリベンジができた。今日は選手たちがプランを信じ、やり抜いてくれたことに尽きると思います」とは東京SGの田中澄憲監督。キックを上手く使いながらエリアマネジメントで優勢に立った。堀越は「僕たちのプランは明確。やり続けたことが勝因」と胸を張った。
 
 新戦力のコルビはこの日のプレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選ばれた。田中監督は「(ケインを含め)期待以上のパフォーマンスをしてくれた。特にチェスリンはプレシーズンマッチを1試合経験していたので、フィットするのが早かった。ハイボールに強く、ボールを持てば相手の脅威になる」と称えた。「チーム全員が温かく迎えてくれ、すぐに馴染むことができた」とコルビ。FBとしてキックでゲームをコントロールしつつ、ハイボールキャッチのスキルの高さを存分に発揮した。コンバージョンキックにも果敢にチャージに向かい、キッカーのSOバーナード・フォーリーにプレッシャーを掛け続けた。
 
 コルビ、ケインらと同じくリーグワンデビューを飾ったのが、帝京大学出身、23歳の髙本だ。昨季はアーリーエントリーで加入するも試合に出場することはできなかった。「サンゴリアスの10番を付けることは簡単じゃない」と腐ることなく研鑽を積んだ。アップの際には緊張感があったと言うが、髙本は公式戦デビューについて「グラウンドに入ったら(緊張感は)消えた」と振り返る。堀越、SH流大、森谷、尾﨑兄弟と帝京大の先輩たちが若き司令塔を支えた。
「開幕戦で勝ったのは悪くないゲームメイクだったんじゃないかなと思います。それと同時にこれで満足していけない。自分の色を出していけるように頑張ります」
 
 計5トライを挙げた尾﨑兄弟の活躍も光った。尾﨑晟也は「(弟に)負けなくて良かったです」と笑った。「兄弟でありいいライバルでもあるのは、ずっと続いていく。切磋琢磨できたらと思っています」。どこからもトライを取ることができるコルビ、松島、尾﨑晟也のバックスリーは破壊力十分だ。いずれもFBとWTBをこなせる。田中監督も「(組み合わせを)固定するつもりはない。試合によって変えていけるのが我々の強み」と起用法に言及した。
 
 次節は開幕戦で快勝した東芝ブレイブルーパス東京との“府中ダービー”だ。ニュージーランド代表56キャップのSOリッチー・モウンガ、同33キャップのFLシャノン・フリゼルが加入し、アタックの脅威が増した強豪。コルビは「リーグワンにおいて簡単な試合はないと思う。競争力が高い。大切なのは今日の試合で自信を付け、来週に向かってフォーカスすること。コーチ陣が出した内容を実行することに尽きる」と語った。“接点無双”を掲げているようにFWに自信を持つが、堀越が「リーグワン随一のFWパックに互角以上に戦えたことはすごく自信になった」と口にするようにFW陣の奮闘がカギを握りそうだ。
 
(文・写真/杉浦泰介)
 
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