「NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24」が9日、各地で開幕した。東芝ブレイブルーパス東京は静岡ブルーレヴズを43-30で下した。ブレイブルーパスは、WTBジョネ・ナイカブラが4トライを挙げるなど計7トライ。3トライ差以上のボーナスポイントを加え、勝ち点5を獲得する上々のスタートを切った。

 

 ニュージーランド代表(オールブラックス)56キャップのSOリッチー・モウンガ、33キャップのFLシャノン・フリゼルらが加わったブレイブルーパス。ジャパンとしてW杯フランス大会を戦ったLOワーナー・ディアンズ、No.8リーチマイケル、ナイカブラがスターティングメンバーに名を連ね、ホストスタジアム(味の素スタジアム)で行われた開幕戦に1万1553人の観客が詰め掛けた。

 
 モウンガが敵陣にボールを蹴り込み、試合は幕を開けた。ブレイブルーパスは攻勢を仕掛け、FB松永拓朗の飛ばしパスからCTBセタ・タマニバルがインゴール左隅に飛び込んだ。ノーホイッスルトライで先制した。
 
 対するブルーレヴズも得意のセットプレーを起点にNo.8マルジーン・イラウアが連続トライ。SO家村健太のコンバージョンキックも決まり、14-5と逆転し、リードを広げる。家村は21分にもPGを成功し、安定したプレースキックを披露する。
 
 12点差を付けられたブレイブルーパスは、両翼のトライで追い付く。25分にWTB桑山淳生が左サイドで3人、30分にはナイカブラが右サイドで2人をかわして突破した。モウンガがコンバージョンキックを1本成功し、同点に追い付いた。
 
 さらに攻勢をかけるブレイブルーパスは38分、モウンガのパスからフリゼルが大きくゲイン。ディアンズが続き、最後はモウンガのパスからタマニバルがこの日2本目のトライで勝ち越した。
 
 前半終了間際と後半開始早々にPGを決められ、再び追う展開に。それでもナイカブラが高い決定力を見せつけた。15分、モウンガの飛ばしパスを受けて2トライ目。18分、29分にも右サイドを駆け抜けてブルーレヴズを突き放した。新加入のモウンガが「ジョネにボールを渡せばいいということが分かった」と冗談交じりに話すなど、圧巻の決定力だった。トッド・ブラックアダーHCも「W杯でもらったチャンスを生かし、優れたフィニッシャーであること証明した。その経験によって自信を持ってプレーするようになり、一段上のレベルに上がったと感じている」と高く評価している。
 
 試合後、ブラックアダーHCは「選手たちのパフォーマンスを誇りに思う。タフな試合になるとはわかっていた。ここからもっと素晴らしいことを成し遂げられると感じている」と手応えを語った。キャプテンのリーチは「予想通りのフィジカルバトル。スクラム、モール、接点のところでプレッシャーをかけてきた。その中で勝てて良かった。シーズンを通して成長していけるようにしたい」と振り返った。
 
 開幕戦白星には新戦力の存在が大きかった。中でもモウンガ、フリゼルは揃ってフル出場。モウンガとハーフ団を組んだSH杉山優平は「まずはリーダーシップ。リッチーが言うと皆が聞き、チーム全体がまとまる。やることが明確になる。あとは個人技がすごい」と口にすれば、キャプテンのリーチも「オフ・ザ・フィールドで若手のパス練習に付き合ったり、9番(SH)10番(SO)の選手を指導してくれている」と、早速“モウンガ効果”が表れているという。モウンガ自身も「自分のラグビーをすることはもちろんですが、自分と同じポジションに若くていい選手がいるのは分かっていたこと。その選手たちに自分の経験を伝えるのも役割」と話している。
 
 もうひとりのオールブラックス・フリゼルは持ち味のボールキャリーを遺憾なく発揮した。「ボールを持ったら必ず前に出る。ディフェンスでは相手を止める。ラインアウトのオプションになる。2人(モウンガとフリゼル)はチームにすごくいい影響を与えている」とリーチ。この日POM(プレーヤー・オブ・ザ・マッチ)に輝いたナイカブラも「2人と一緒にプレーできてうれしく思う。チャンスをつくってくれる。自分は集中力高く外で待ち、ボールが来たらフィニッシュするだけ」と語る。相手からマークされる2人の存在が、WTBのスペースをもたらす。合流して日は浅いが、既にフィールド内外で影響を及ぼしているようだ。
 
(文・写真/杉浦泰介)