昨季、メジャーリーグ(デビルレイズ)で15本もホームランを打っているバッターをつかまえて「意外性の男」と呼ぶのは失礼かもしれないが、こういうバッターが下位にいるのは、相手にとっては脅威だ。

 巨人の新外国人選手デーモン・ホリンズの評価が急上昇だ。21日の阪神戦はひとりで試合を決めた。ニックネームは「ホリさん」。キャラも立ってきた。日本の野球に慣れたら、もっと打ち出すに違いない。

 好調・巨人を支えるのは24日現在、防御率2.67の投手陣。失点62はリーグ最少だ。実は巨人に次ぐ防御率、失点を誇るのが最下位のカープ。低迷の原因はチャンスに弱い打撃陣。14敗のうち1点差負けが8つ、2点差負けが3つ。つまり競ったゲームはほとんど落としているのだ。野球に“たら・れば”は禁句だが、1点差のゲームをすべて拾っていたら、カープは15勝6敗で首位に浮上ということになる。あくまでも“机上の空論”だが、カープファンの歯ぎしりが聞こえてきそうな戦いぶりではある。

 カープの打撃陣はオールジャパンである。資金的な問題はあるにせよ、ひとりくらいは助っ人が獲れなかったものか。マイナーリーガーで十分。チャンスに強いクラッチヒッターがひとりいれば、“混セ”に拍車がかかっていたはずである。

 思い出すのは初優勝時、ゲイル・ホプキンスとともに打線を引っ張ったリッチー・シェーンブラム(愛称シェーン)だ。このユダヤ人プレーヤーこそは外国人選手における「元祖・意外性の男」だった。
 中国放送の名解説者・金山次郎(故人)をして「打った打球がピンポン球になる」と言わしめたホプキンスほど強烈な印象を残したわけではない。しかし、ホプキンスや山本浩二、あるいは衣笠祥雄らが凡退したあと、自らの存在をアピールするかのようにおいしいところをさらっていくのだ。試合が雨で中止になると、そのままパチンコ屋に飛び込んで「ナイトゲーム」を楽しむ陽気な男でもあった。

 実力はもちろんだが、助っ人にはこうしたムードメーカーとしての役割も求められる。いつも僅少差のゲーム。しかも負けてばかり。「シェーン、カムバック!」と叫びたいカープファンは少なくないだろう。名画同様、強いチームには味のある脇役が不可欠である。

<この原稿は07年4月25日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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