大方の予想通り、ラグビー日本代表ヘッドコーチ(HC)に、前オーストラリア代表HCのエディー・ジョーンズが就任した。約8年ぶりの代表HC復帰だ。

 

 

 エディーが指揮を執った2015年W杯イングランド大会では、はるか格上の南アフリカを撃破するなど3勝をあげ世界を驚かせた。

 

 リスタートにあたっての新スローガンは「超速」。就任会見でエディーは強調した。

 

「相手より速く走るだけでなく、速く考え、速く決断する」

 

 前回の就任時にも、エディーは同じようなことを言っていた。

 

「日本人選手は、諸外国の選手と比べると、相対的に体が小さい。しかし、それは強みでもある。スピードと頭脳とスキル、ここを伸ばせば世界と伍して戦うことができる」

 

 エディーは、自ら練った強化策を「ジャパンウェイ」と呼んだ。要するに、日本ラグビーの日本化である。今回の「超速」は、その進化版だ。

 

 しかし、イングランド大会の成功から8年がたち世界のラグビーの勢力図は随分変わった。

 

 エディーの後を襲ったジェイミー・ジョセフは19年W杯日本大会で、日本を史上初のべスト8に導いた。引き続き指揮を執った23年のフランス大会でも、強国のイングランド、アルゼンチン相手に、スクラムでは、ほぼ互角の勝負を演じた。かつて「井の中の蛙」だった選手たちは「大海」を知ってしまった。

 

 前回、エディーは選手たちに対し、強権的に振る舞った。それに対し「理不尽」という声も一部から上がったが、W杯で実績を残していない選手たちは、世界的指導者のエディーについていくしかなかった。

 

 だが世界を知ってしまった選手たちに、今回も同じ手法が通用するとは限らない。ひとつ間違うとパワハラのそしりを免れない。今は、そういう時代だ。

 

 聞けば協会は、新HCを補佐するサポートチームをつくるという。エディーのお目付け役の意味もあるのだろう。一朝事が起きた時には、「超速」での危機管理が求められる。

 

<この原稿は『週刊大衆』2024年1月22日号に掲載された原稿です>

 


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