「NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24」ディビジョン1第6節が27日に行われ、クボタスピアーズ船橋・東京ベイがリコーブラックラムズ東京を18-17で破った。この結果によりスピアーズは今季初の連勝で3勝3敗(勝ち点15)、ブラックラムズは2連敗で1勝5敗(同7)となった。 
 

 ノーサイドの瞬間、殊勲のキッカーを中心に歓喜の輪ができあがった。逆転のPGを決めたスピアーズのFBゲラード・ファンデンヒーファーの元にチームメイトが集まった。

 

 2勝3敗のスピアーズと1勝4敗のブラックラムズ。黒星が先行する両チーム。ブラックラムズのホストスタジアムで快晴の青空と7500人を超えるファンが出迎えた。

 

 序盤から両チーム、テンポの速いパス回しでアタックを仕掛ける。「いつも以上にボールを動かした」とはSH髙橋敏也。先制点はブラックラムズ。12分、HO武井日向のゲインでチャンスをつくると、最後はWTBシオペ・タヴォがタックルを受けながらもインゴール右隅に飛び込んだ。FBマッド・マッガーンのコンバージョンキックはポール左に逸れた。

 

 スピアーズも20分、敵陣左から右へ大きく展開。SH藤原忍、CTBリカス・プレトリアス、SO立川理道、ファンデンヒーファーと繋いで、WTB根塚洸雅がインゴール右隅にフィニッシュした。根塚個人としては第2節の三重ホンダヒート戦以来のトライで同点に追いついた。ファンデンヒーファーのコンバージョンはポストに当たり、ゴールならず。

 

 24分、ブラックスラムズはフェーズを重ねてインゴールに迫る。髙橋がテンポ良くパス出しをして、武井、LOアマト・ファカタヴァを使う。WTBネタニ・ヴァカヤリアがわずかな隙間を逃さず、インゴールに潜り込んだ。これで再びブラックスラムズが5点をリード。10-5のスコアのまま後半に入った。

 

 スピアーズにアクシデントが起こったのが、13分。キャプテンの立川が接触プレーによりHIA(脳振盪の疑いのある選手を一時退出させ、ドクターチェック)で欠くこととなる。SHの控えとしてリザーブ入りしていた岸岡智樹がピッチに入り、SOを務めた。SOが本職の選手である。司令塔役を難なくこなしてみせた。

 

 後半最初のスコアはスピアーズ。27分、敵陣左のラインアウトからモールを組むも、前進を阻まれる。藤原が右へ展開。プレトリアス、岸岡、ファンデンヒーファーにテンポ良くパスが繋がると、大外の根塚がマッガーンの追走を振り切り、インゴール右にボールを運んだ。ファンデンヒーファーがコンバージョンキックを決め、ついにスピアーズが逆転した。34分にはファンデンヒーファーのPGで1トライ差にリードを広げた。


 5点を追いかけるかたちとなったブラックラムズ。ラインアウトモールでインゴールに迫ると、スピアーズは自陣で反則を連発。レフリーはLOデービット・ブルブリングにイエローを提示し、さらにペナルティートライを宣告した。これで17-15と終了間際に再逆転に成功した。

 

 しかし更なるドラマが待っていた。スピアーズは岸岡のキックオフボールで再獲得を目指したが、ブラックラムズにキャッチされた。ボールをキープし、時間を稼ぎたい相手に襲い掛かった。レフリーがブラックラムズの反則をコールした時、既に試合終了時間を経過したホーンが鳴っていた。スピアーズはショットを選択した。やや角度はあったがゴールまで約30mの距離。ファンデンヒーファーに命運は託された。

 

 背番号15の後ろでキックを見守った藤原は“入ってくれ!”と願っていた。味方の想いも乗せた重圧のキックをファンデンヒーファーはゴールを射抜き、サヨナラ逆転勝ち。スピアーズが今季初連勝を掴み取った。この日、2トライを挙げていた根塚も「ここ数試合、逆転できるかどうかという試合が続いた。仲間を信じることしかできなかった。信じて良かった」と振り返った。

 

 敗れたブラックラムズは勝てる試合を落としたと言っていいだろう。試合の締めくくり方に課題が残った。ピーター・ヒューワットHCも「最後どう締めるのかという経験が必要。経験が増えれば増えるほど、方法を見出していけるはず。経験とはスイッチを押したら急に増えるものではありません。時には痛い思いをしながら学んでいく必要もあると思います」と語った。キャプテンの武井もこう続いた。

「負けていい試合はないですし、正直勝利が欲しかったです。でもここが、まだまだ自分たちが成長できる、成長しなければいけないポイント。ただ、やっているラグビーは正しい方向には進んでいると思います。自分たちのラグビーを信じ、最後の最後を突き詰めて、次の試合から頑張ります」

 

(文・写真/杉浦泰介)