28日、日本発のプロダンスリーグ「第一生命D.LEAGUE 23-24 REGULAR SEASON ROUND.7」が東京ガーデンシアターで行われた。CYPHER ROUNDを制したのはValuence INFINITIES(バリュエンス インフィニティーズ)。2位のSEGA SAMMY LUX(セガサミー ルクス)と共にCSP(チャンピオンシップポイント)4ポイントを積み上げた。この結果によりINFINITESは、CP12ポイントとなり7位からCS(チャンピオンシップ)圏内の5位に浮上した。ROUND.7のMVDは3rd CYPHERを制したFULLCAST RAISERZ(フルキャスト レイザーズ)のKILLA TWIGGZが選ばれた。


 14ラウンドあるレギュラーシーズンの中で、特殊なのがCYPHER ROUNDだ。1チーム8人によるショーケースを1対1の対戦形式で行う通常ラウンドと違い、各チーム代表の8人が1人のSOLO(3回)、2人組のDUOと3人組のTRIO(1回)の計5回をそれぞれ分かれて戦う。各CYPHERの合計得点で、今回のラウンドの順位が決まる。

 ジャッジ項目も異なる。スキル、クリエイション、完成度までは同じだがコレオグラフ、スタイルの項目が臨場感とインパクトに代わり即興性が重視され、特にSOLOはダンサーの個の力、キャラクターがくっきりと表れるのだ。
 
 ブレイキンとヒップホップを得意とするダンサーが揃う個性派集団のINFINITIESが CYPHER ROUNDを制した。D.LEAGUE参入初年度の昨季は総合9位に終わったが、 CYPHER ROUNDは3位。得意とするラウンドで、見事にCSPを4点積み上げた。
 

 各CYPHERで1チームに与えられる時間は1分。13チームが連続してダンスを披露する。この60秒間に魂を込める。1st CYPHERはSOLOだ。INFINITIESからは17歳のTSUKKIがトップバッターを任された。「ブレイキンが4人いて、ここは絶対勝たないといけない。1位しか見てなかった」。ヘッドスピン、エアートラックス(逆立の状態で身体を回転させる技)といったパワームーブのてんこ盛り。途中の音ハメもバッチリ決めた。

 

「自分が得意とするパワームーブを全力で出せて1位になれて良かった」。ジャッジ5人とオーディエンス票で54ポイント獲得。トップに躍り出た。2位は同じくブレイキンで魅せたCyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)のBBOY SHOSEIが51ポイント、3位にはクランプの力強さを披露したRAISERZのINFINITY TWIGGZが50ポイントで続いた。

 

 2nd CYPHERはDUO。SOLOとは違い、2人のコンビネーションも重要になってくる。2nd CYPHERを制したのは51ポイントを獲得したKOSÉ 8ROCKS(コーセー エイトロックス)とLIFULL ALT-RHYTHM(ライフル アルトリズム)。8ROCKSのTaichiは「ショーは決まり事が多い。今回のDUOは決めるところは決めて、自由なところはフリースタイル。それが自分たちのスタイルとハマッた」と振り返る。「2人で『かまし合いたい』と話していた。どちらかが相手を食うような、どちらかがMVDをなれるぐらいの見せ合いをできたら1位を取れると思っていた」。幼馴染みのYU-KIとの息もぴったり。疾走感のあるブレイキンで観客を沸かせた。

 

 ALT-RHYTHMは対照的に“かまし合い”ではなく、SPダンサーにRYO-TAを迎えCHIHIROとのユニゾンが光った。CHIHIROは普段のチーム戦とはレギュレーションの違うCYPHER ROUNDついて「そのプレッシャーはありがたいこと。出るのは8人だけ。プレッシャーが重荷になるのではなく、自分の背中を押してもらえた。ステージの後ろにはチームのみんなもいる。2人やけど2人じゃない」と語った。INFINITIESはSEIYAとMASSAのコンビで50ポイント(3位タイ)、SOLOの3rd CYPHERでRENTAが47ポイント(4位タイ)を積み上げてトップをキープした。

 

 4th CYPHERはTRIO。入場でMAKOをNAOKIとRYOGAを抱えたのは、昨季のCYPHERの流れを汲んだものだ。ステージ上では、飛び上がったMAKOをキャッチしないというスカシで会場を沸かせる。「飛んでキャッチするので昨季1位を取れた。その期待はあるだろうなと思いつつ、派生を加えないといけないと思った」とMAKO。コミカルな入りからキレのあるブレイキンを次々に披露した。

 

 最後の5th CYPHERはSOLO。ディレクター兼ダンサーであるRAISERZのKTR、dip BATTLES (ディップ バトルズ)のKENSEI、SEGA SAMMY LUX(セガサミー ルクス)のCanDooら各チームの“顔”的存在がズラリと並んだ。このCYPHERを制したのは大トリを任されたCanDooだ。身体全体を使い、表情でも魅せるパフォーマンスで盛り上げる。制限時間終了後には観客に背中を向け、両手を振り上げてDリーガーたちを煽った。会場全体をひとつにしたダンス、存在感に56ポイントという高得点が付いた。2位タイのKADOKAWA DREAMS(カドカワ ドリームズ)の颯希、ALT-RHYTHMのCalinをはじめ、各チームのラストを飾るダンサーたちのパフォーマンスはどれも素晴らしかったが、CanDooの決めどころ、抑えどころを分かっていた経験、センスが光った。

 

 LUXに追い上げられたINFINITIESだったが、トータル251ポイントとわずか3ポイント差で逃げ切った。「メンバー1人1人のカラーが出せた。スタイルをステージでそれぞれが出し切れたということで、最終的に1位チームを取れたことが僕としてはうれしかった。チームとしても今後に繋がる勝利」とSTEEZディレクター。リーグ側から提示された楽曲、BPM(テンポ)を考慮し、メンバーを編成した。「最初に想定したものとは違いましたが、最終的にベストなものを組めた」。5つのCYPHER中、2つのトップを含む4つで5位以内に入るなど抜群の安定感を見せた。DUOに出場したMASSAは「うまいバトンパスで1位が取れた。普段の練習の仲の良さやルーティンから遊びの部分も見れたんじゃないかなと思います」と胸を張った。STEEZディレクターに、チームのMVDを聞くと「TSUKKI」と答えた。「チームのスタートダッシュ、起爆剤になった」とトップバッターを称えた。

 

 INFINITIESはこのラウンドの結果により、CSP12ポイントでCS圏内の5位に順位を上げた。TSUKKIが「今回サイファー優勝がひとつの目標。後半戦どんどんエナジーを上げていく」と意気込めば、MAKOは「後半戦に向けて、弾みをつけて迎えられる」と語った。2位のLUXも同じく4ポイントのCSPを積み上げた。ここまで総合10位と苦戦しているが、CanDooも「2位のポイントは大きい。いい流れを掴めたんじゃないかと思う」と語った。 このラウンド3位タイのLegitと8ROCKS、5位のRAISERZがが3ポイント、6位のDYM MESSENGERS(ディーワイエム メッセンジャーズ)、7位タイのDREAMSとALT-RHYTHMが1ポイント加算した。総合順位の1位DREAMS、2位Legitに変動はなかったが、RAISERZが3位に浮上するなど3位から7位のチームが入れ替わった。

 

 今回CYPHER ROUNDを初めて現地で取材したが、いわゆる“箱推し”ではなく“推しダンサー”がいるファンにとっては各ダンサーのキャラクターやスキルが際立つレギュレーションは歓迎されるのではないだろうか。MAKOが「毎回のメンバーがよりチームを背負う。いつもの作品ではなく連続して展開するかたち。それぞれの個性が見えたんじゃないかと思います」と話せば、KILLA TWIGGZが「クランプに、ブレイキンにDUOやTRIOを見ていてもスタイルウォーズ。個人的に見ていても、踊るのも楽しい」と魅力を述べた。特に5th CYPHERで見られたKTR、MESSENGERSのKAITO、Benefit one MONOLIZ(ベネフィット・ワン モノリス)のYukicheru、Legitのenaからの流れは、出番が変わるたびに火花を散らすフリースタイルバトルらしいものだった。1人1分間のパフォーマンスでありながら13人による13分のショーケースと見ることもできた。1シーズンで1ラウンド限りというのは惜しい気もするが、1ラウンドだからこそ引き立つものもあるだろう。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

■そのほかの写真はこちら