4月19日(土)、J2第8節となる愛媛FC対ベガルタ仙台の一戦が、愛媛FCのホーム「ニンジニアスタジアム」にて行なわれた。
 前節は試合が無く、2週間お休みだった愛媛FC。この期間を使って、どのような調整を行ってきたのか、真価が問われるゲームとなった。
(写真:牛鬼(宇和島市の地方祭に登場する山車)も愛媛FCを応援!)
 時折、晴れ間が覗くものの、曇りがちの愛媛県総合運動公園。季節の変わり目特有の強風が、スタジアムにも吹き流れる。
 午後2時、愛媛FCのキックオフで試合がスタートした。序盤、ロングフィードを多用して、積極的に愛媛陣内へと攻め込む仙台。愛媛FCは、受け身に廻ってしまっている。
 
 それでもカウンター攻撃を駆使して、先制点奪取を試みる愛媛。
 前半13分、センターサークル付近で、MF赤井秀一選手敵のパスボールを奪い取り、素早く前線のFW大木勉選手へとスルーパスを供給する。ボールを受け、そのままドリブルで、中央を駆け上がる大木選手。ペナルティアーク手前で、正面がクリアと見るや、豪快に右足を振り抜き、ミドルシュートを放った。ボールは地面スレスレを矢のように飛び続け、敵ゴールに襲いかかるが、相手GKによる必死のセービングで、惜しくもゴールならず。先制のチャンスを逃した。
 
 攻撃のリズムを掴み、これから愛媛の時間が始まると思った矢先の前半25分。敵のフリーキックからの攻撃で、愛媛はあっさりと敵MFにゴールを割られ、仙台に先制点を献上してしまった。その後も、流れに乗って攻め立てる仙台。向かい風の中、劣勢の状況に変わりはなく、前半戦は、0−1のスコアで終了した。
 
 後半戦、風上から攻める愛媛FC。立ち上がりから、サイドスペースを利用したスピーディーな攻撃展開で、ゴールを目指す。
 後半17分、自陣、赤井選手からパスを受けた大木選手が、敵陣に向けてドリブルで攻め上がる。敵陣中央に陣取るFW若林学選手へとパスを送る大木選手。敵DFをかわしつつ、左足でミドルシュートを放つ若林選手。ゴールマウスを捕らえることは出来なかったが、
流れるような、素晴らしい攻撃に、場内からも歓声が湧き起こる。

 後半25分、自陣にて敵ボールを奪ったDF金守智哉選手から、敵陣内の前線に向けて、フィードボールが送られる。ボールを受けた若林選手からFW内村圭宏選手にパスが出る。内村選手はペナルティアーク目掛けて攻め上がるMF宮原裕司選手に向けて、ワンタッチパスを送る。宮原選手は攻め上がりつつ、内村選手にボールを戻す。サイドに開く構えを見せた宮原選手に向けて、内村選手は再度パスを送る。宮原選手は右サイドフリーのMF神丸洋一選手へと、ダイレクトにボールを送る。神丸選手は同サイドを駆け上がり、早いタイミングで敵ゴール前へと、絶妙のクロスボールを供給する。ゴール前に攻め込んでいた内村選手が、このクロスにタイミングを合わせ、ジャンピングヘッドでゴールを狙うが、惜しくもゴールマウスを捕らえることは出来なかった。

 後半30分にも、左サイド高い位置に陣取る宮原選手からのセンタリングに対し、ゴール前に飛び込んだ神丸選手が、敵DFと競り合いながら、ダイビングヘッドでゴールを狙う。だが、これまたゴールマウスを捕らえることが出来なかった。
 
 後半39分、右サイドからの攻めで、コーナーキックのチャンスを得た。右コーナーから宮原選手のセンタリングが供給された直後、敵ゴール前で混戦となる。ゴール前に上がっていたMF高杉亮太選手が敵DFに倒され、相手選手によるファウルとの判定。PKのビッグチャンスが、愛媛に舞い込んだのだ。

 皆が息を呑んで、同点ゴールを期待する中、宮原選手がPKを放った。ところが、敵GKにセーブされ、ノーゴール。スタンドから溜め息がこぼれる。
 
 本来なら気持ちが沈み込む場面なのだろうが、今日の愛媛イレブンは違っていた。アディショナルタイムが、1分を越えかけた時、待ちに待った歓喜の瞬間が訪れた。
(写真:敵陣内、激しくボールを奪い合う)

 敵パスをインターセプトしたボールを金守選手が、センターサークル付近から、前線に向けてロングフィードを供給。ボールは、ペナルティアーク手前で、敵DFとジャンプして競り合ったMF横山拓也選手の頭上を越え、ペナルティエリアに転がった。このルーズボールを足元に収め、シュートに向ったFW田中俊也選手が、敵DFに倒される。

 しかし、ボールは幸運にも、敵ゴール前に詰めていた内村選手の足元へと転がったのだ。このボールを捕らえ、素早く右足を振り抜きシュートを放った内村選手。ボールは、敵GKの足元をすり抜け、見事、敵ゴールネットを揺らしたのだ。大歓声に包まれるスタジアム。土壇場で同点に追い着いた愛媛FC。このゴールで、反撃ムードは、大きく高まったのだが、アディショナルタイムも過ぎ去り、ついにはタイムアップ。
 
 1−1の最終スコアで、白熱の一戦は、ドローゲームに終わった。
 一旦は、リードを許し、PKを外す等、気持ちが落ち込みかける状況下においても、諦めることなく、アディショナルタイムにゴールを決めることが出来た今節の愛媛FC。チームスローガン「STRONG WILL」(揺るぎない意志)が、選手たちの心に、浸透しつつある表れではないだろうか。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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