今月はA代表とパリ五輪世代の若き日本代表の2チームの活動がありました。A代表に関して、平壌開催予定のゲームが中止になったのは驚きのニュースでした。では、今月はそれぞれのチームについて語りましょう。

 

 驚きのアウェー戦中止

 

 まずは森保一監督率いるA代表について。開始2分に、MF田中碧のゴールで日本が先制しました。以降、得点は奪えずこのまま1対0で試合終了のホイッスルが鳴りました。ただ、前半はMF堂安律らが相手ゴールに迫る場面もみられました。しかし、勝負を決める1点は遠かった。僕個人の意見としては、もう少しアグレッシブに畳みかけてもよかったのではないかなぁ、という印象を抱きました。

 

 立ち上がり2分で先制したものの追加点がなかなか奪えない……。僕はセンターバックだったので、センターバック目線で語らせてもらえれば、とりあえず1点は取っているので、少々の余裕はあります。味方が攻めてくれている時にこそ、後ろの布陣を整えておく。ここが一番のキーポイントだと思います。

 

 攻めていてFWのラインでボールを奪われるのか、はたまた2列目で奪われるのかでとっさに取る対応も違ってきます。今回の北朝鮮がそうだったとは必ずしも言えませんが、アジアの戦いだと、相手は一発のカウンターに懸けているケースが多い。前線の選手が奪われた瞬間の切り替えとプレスをかける方向をチーム内で徹底させたいのがセンターバックの心理です。2列目が1列目を動かし、3列目のボランチが2列目を動かし、ボランチとサイドバックをセンターバックと全体を把握できるGKが声で動かせれば理想的ですね。

 

 ここまで日本はアジア2次予選3連勝で首位をキープ。中止になったアウェー・北朝鮮戦が3対0の不戦勝扱いになったとしたら、日本は勝ち点を14とし、2位以上が確定し、3次予選(最終予選)進出が決定します。そうなったら、残りの2試合を底上げなど、有意義に使えそうです。

 

 予選突破、大丈夫か……

 

 さて、パリ五輪出場を目指すU-23日本代表について。U-23マリ代表には1対3の敗戦。U-23ウクライナ代表には2対0で勝利しました。マリ戦の出来を見るに、4月中旬からスタートするパリ五輪最終予選が心配になりました。確かに、日本の若手だってうまくなっています。しかし、身体能力だったり、体力には差があるのかなぁと。

 

 五輪最終予選にはマリほどの身体能力を持つ選手たちはいないとは思いますが、日本が入っているグループは熾烈を極めるでしょう。中国、UAE、韓国と同組です。グループリーグ上位2カ国が決勝トーナメントに進出します。パリ五輪の出場権は上位3カ国に与えられます。3位決定戦の敗者はアフリカ4位・ギニア代表とのプレーオフに回ります。

 

 UAEは数年前から国を挙げて強化に取り組んでいるから不気味ですし、韓国、中国も決して楽な相手ではありません。初戦の中国戦は4/16、もう時間はありません。システムの中にギャップを作ってしまい、そこを使われないようにポジショニングを徹底する、セットプレー時の確認(特に守備)といった細かいところはすり合わせが必要です。かつ、これらは即効性があるので取り組むべきでしょう。守備が安定しないと攻撃にもつながりません。短い時間を有効に使って、パリへの切符をつかんでほしいものです。

 

 さてさて、僕のシニアサッカーですが、3月はこれまで、オーバー50とオーバー60の計4試合をこなしました。サッカーに復帰してから、かなり充実しています。最近ではサッカー以外のことを考えられないくらいになってきた(笑)。

 

 DFとして、仲間に「こう動いてくれ」と指示をしなくちゃいけなかったりするのが、すごく楽しい。僕は大丈夫ですが、今の時期、花粉に苦しめられているシニアプレーヤーも多いと思います。それでもサッカーのために現場に駆けつけてくれるのだから、うれしいです。サッカーに限らずスポーツは人々の生活を充実させてくれる、かけがえのないものだなと、ここ近年実感しています。僕は明日、オーバー50とオーバー60のダブルヘッダー。頑張ってきます!

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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