3月に開かれた2つの格闘技イベント――3・5代々木『戦極』と3・15さいたま『DREAM1』を観て久しぶりに熱い気持ちになれた。今年は毎月、格闘技のビッグイベントが開催されることになりそうで嬉しい。さて、『戦極』と『DREAM』のどちらが、より『PRIDE』の熱を維持していたか? 私は『戦極』だったと思う。両団体ともに、新機軸を打ち出したいと考えているようで、それは良いことだが長年、観る者を熱くさせてきた『PRIDE』の良き部分は、しっかりと引き継いでもらいたいとも思う。
『戦極』の会場は熱かった。というのは、エースの吉田秀彦が敗れたとはいえ、彼とジョシュ・バーネットの闘いは緊迫感に満ちていたからだ。『PRIDE』の生命線であった勝負論が、あの試合には介在していた。一方の『DREAM1』は、ミルコ・クロコップが出場したにもかかわらず、対戦相手に相応の選手を用意できなかったことが残念。アクシデントとはいえ、メインイベントの青木真也×J・Z・カルバン戦もノーコンテストと締まらなかった。オープニング決戦は、『戦極』に軍配を上げたい。

 それでも、次回に期待を抱かせるのは『DREAM』である。いよいよ注目のミドル級トーナメントが開幕するからだ。何しろ実力派メンバーが揃いそうで刮目せずにはいられない。
 桜庭和志、船木誠勝、秋山成勲、田村潔司、美濃輪育久……海外からの実力派ファイターの参戦も確実視されている。

 既に発表されているカードは次の3つ。
■桜庭和志VS.アンドリュース・ナカハラ
■船木誠勝VS田村潔司
■デニス・カーンVSケガール・ムサシ

 注目が集まっているのは船木VS田村……もう少し早い時期に見たいカードではあったが、この一戦のポイントは船木の勝負勘が、どこまで戻っているかだろう。正直、大晦日の桜庭和志戦はガッカリした。2000年5月26日、東京ドーム『コロシアム2000』でヒクソン・グレイシーと闘った時のような勝負に執着する船木の姿が見たい。

『DREAM』の今後は、会場に訪れた者に対して『PRIDE』同様に緊迫感を与えることができるか否かにかかっている、と私は思う。会場の雰囲気を『HERO’S』に染めてはいけない。
 ある格闘家が数年前に、つぶやいた言葉を思い出す。
「『HERO’S』って、どこか軽いんですよね。出場する選手も楽だと思います。お洒落で、言うならば『Xゲーム』の感覚なんですよ。それに比べて『PRIDE』は本当にしんどいです。潰すか潰されるか、あそこには男の闘いがある。リングに上がっても、観ていても緊張感が違いますよね」

『PRIDE』の熱さを残すことを、『DREAM』には求めたい。それは『戦極』に対しても勿論、同じである。
 次回『DREAM2』は4・29さいたまスーパーアリーナ、『戦極−第2陣−』は5・18有明コロシアム……観る者は派手さや一過性の楽しさではなく、連続性のある緊迫した空気を欲している。


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近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜(文春文庫PLUS)』ほか。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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