前期シーズンも残り約10試合。1日(日)は初のダブルヘッダーも経験しました。前日がナイトゲームで寮に戻ったのは深夜12時過ぎ。当日は長崎の島原で14時試合開始でしたから、朝の5時過ぎには出発しなくてはいけません。ほとんど睡眠を取れないままでゲームに臨み、選手はお疲れ気味でしたね。

 そういった厳しい面があるからでしょうか。福岡のみならず、各球団の選手たちのレベルが開幕当初より目に見えて上がっています。チームプレーはもちろん、守備でも簡単に間を抜けなくなったり、打撃でも粘り強く投球に食らいつけるようになったり、と技術の向上がみられます。NPBだと、ここまで劇的にうまくなることはそうありません。日々の成長を実感できるのが、アイランドリーグの魅力なのだと実感しました。

 福岡で予想以上に進化が見られるのは野手では荒川大輔、投手では大澤亮です。荒川は今年で28歳。前に所属していた岩手21赤べこ野球軍団の廃部に伴い、アイランドリーグにやってきました。年齢的にもラストチャンスという自覚があるのでしょう。毎日、必死に野球に取り組んでいます。

 実はキャンプイン時、「体が華奢。レギュラーとしては難しい」という印象を彼には持っていました。ただ、内野の守りは良かった。そのため最初は守備要員から起用する方針でした。ところが実戦で起用すると、左右に巧みに打ち分けることができるのです。しかも勝負強い。打点17は現在チーム2位。打率.320はリーグ4位です。さらに荒川は三振が少ない点も魅力です。29試合で三振7は堂上と並んで最小。今や福岡には欠かせない中軸バッターになりました。

 一方の大澤は左のサイドハンド。高知からの移籍組です。高知では主にリリーフで起用されていました。福岡でもその役割は変わりませんが、連戦で先発の枚数が必要なこともあり、GW中にはスターターも経験してもらいました。すると、思いのほか好投をみせてくれたのです。5月5日の徳島戦では7回1失点で勝ち投手にもなりました。

 ストレートの球速はないものの、遅いカーブとのコンビネーションで打たせてとるピッチングが光ります。両サイドを突ける制球力も彼の長所です。牽制やクイックなどの基本技術も問題ありません。何より彼は自分で考えて、工夫ができる投手です。サウスポーはNPBでも重宝されます。このまま伸びていってほしいですね。

 他の5球団と対戦した中では、やはり首位を独走する香川の力が抜きん出ています。特にクリーンアップの堂上隼人、智勝、丈武の3人はリーグでもトップ3のバッターと言っていいでしょう。それでも彼らを抑えなくては勝負になりません。「外に逃げているだけでは打ち取れない。インサイドを突け」。「緩急をつけて、タイミングを崩せ」。対策は練っているのですが、投手はなかなか思うように投げられないものです。現状はいいように打たれています。

 香川との対戦成績は4戦全敗。まだひとつも勝てていません。僕も含め、王者相手に「是が非でも勝ちたい」という意識が空回りしています。たとえば、4月19日の香川戦、福岡はエースの浦川大輔を立て、6回を終わって8−1。大量リードを奪っていました。実は浦川はキャンプ中に足をケガした影響で、やや調整不足でシーズンに突入していました。ここは無理せず、交代という選択肢もあったのですが、「浦川でなんとかモノにしたい」という思いが強くなり、続投を選択したのです。

 ところが――浦川はそこから集中打を浴び、7回以降で11失点。交代機を逸した監督のミスで痛恨の大逆転負けを喫してしまいました。翌日の試合は、香川打線が爆発し、今度は3−20の大敗。この2試合が香川を勢いづかせたことは間違いありません。

 香川との試合は前期にあと4試合残っています。香川の優勝に待ったをかけるには、僕達が頑張らなくてはいけません。ただ、個人的にはこれまでのように意識しすぎず、自然体でゲームに入れればと思っています。

 まだ優勝を諦めたわけではありませんが、新規参入チームであることを考えれば、まず前期は最低でもAクラス、2位を死守したいと考えています。地元の方にレッドワーブラーズを認知していただくためには、育成のみならず結果も必要です。おかげさまで球場に足を運んでいただけるファンの方も少しずつ増えてきました。ホームでは前期残り2ゲーム。皆さんの期待に応えるためにも、なんとか2つ勝って、後期につなげたいものです。
 

森山良二 (もりやま・りょうじ)プロフィール>: 福岡レッドワーブラーズ監督
  1963年7月20日、福岡県北九州市出身。福岡大大濠高時代は甲子園の出場経験ももつ。北九州大を中退後、ONOフーズを経て87年、ドラフト1位で西武に入団。パームボールを武器に88年には10勝をあげて新人王を獲得した。同年の日本シリーズでは第4戦で中日相手に完封勝利を収めている。93年に横浜に移籍し、95年限りで現役を引退。以降、横浜、西武で投手コーチ、トレーニングコーチを歴任した。現役時代の通算成績は86試合、14勝15敗、防御率4.21。


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