独走する香川に待ったをかけようと臨んだ10日からの首位攻防戦、愛媛は2試合連続の完封負けを許してしまいました。続いて行われた先週末の香川との3連戦も1勝1敗1分。勝ち越しはなりませんでした。それまで愛媛は引き分けを挟んで5連勝と勢いをつけて直接対決を迎えたのですが、香川には通用しませんでした。

 昨年、愛媛は香川に8勝18敗4分と大きく負け越しました。今年の香川は天野浩一(BCリーグ福井兼任コーチ)、松尾晃雅(レッドソックス傘下)らが抜けたとはいえ、野手はほぼ不動のオーダーを組んでいます。堂上隼人、智勝、丈武のクリーンアップは昨年と同じ顔ぶれですし、トップバッターでは洋輔がしっかり役目を果たしています。1、2番が出塁してクリーンアップが還す。理想的な攻撃を展開できる点が彼らの強さです。

 一方、愛媛は3番・比嘉将太、4番・大島慎伍、5番・檜垣浩太と経験者が中軸を務めているものの、香川と比べれば、まだまだ勝負強さが足りません。チャンスに何でもかんでも打ちにいくのではなく、状況に応じて、何を狙い球にするのか。その選択がもっとできなくてはいけないでしょう。

 首位の香川とどう戦うか。愛媛はメンバーが大きく入れ替わり、若手が多いだけに正直、楽しみにしていました。先週末の香川3連戦では全試合で2ケタ安打をマークするなど、打線が好調でした。最終回の逆転サヨナラ勝ちなど、粘りもみせてくれました。結果は残念でしたが、良い点もありました。課題は今後の戦いにいかしてほしいと思います。

 愛媛はエースの浦川大輔(福岡)をはじめ、梶本達哉(オリックス)、小山内大和(BCリーグ・富山)がチームを離れ、投手陣の顔ぶれが大きく変わりました。核として期待していた2年目の森琢哉は結果が残せず、現在、石毛宏典シニアアドバイザーの指導を受けながら、ひじをうまくしならせて投げるフォームに改良中です。

 となると、試合では新人の投手にマウンドを任せるしかありません。いろんな投手に経験を積ませていく中、今後が楽しみ存在が出てきました。その代表格が西川雅人篠原慎平の2人です。

 西川は140キロ台後半の速球が持ち味。フォークとのコンビネーションで打者を抑えていくタイプの投手です。3年前に肩を故障し、ブランクがあった影響で、まだまだ100%の状態ではないようですが、クローザーとして起用しています。登板数をこなして徐々に肩の調子を上げれば、150キロは出せるのではないかと考えています。

 先発でも投げられることをアピールすれば、ドラフト指名も夢ではありません。彼の課題は変化球の精度を高めること。現状はほとんどストレートとフォークだけですから、カウントをとるのに苦労する場面が見られます。スライダーやゆるいカーブでストライクが取れるようになれば、ピッチングの幅は確実に広がります。

 篠原はこの6月で18歳。線が細く、これからの投手です。ただ、若い割にはものおじしないピッチングを見せてくれます。何より彼の長所はリズムの良さ。テンポがいいので、野手は守りやすいはずです。GW中の長崎戦では先発して、8回を無失点に抑えました。序盤こそ走者をためてバタバタしましたが、4回以降はパーフェクトに封じました。彼にとっては、貴重な経験になったのではないでしょうか。

 球速は130キロ台にもかかわらず、ボールにキレが感じられます。体力がつけば、140キロ台の速球も投げられるようになるでしょう。彼も将来的にはドラフト候補に入ってくる素材だとみています。フォームは変則的で、両肩を振って開き気味に放ります。肩の開きが早くなるクセはいずれ直さなくてはいけないかもしれません。でも、今はとにかく長所を伸ばす方向でアドバイスをしていくつもりです。

 攻撃でもキャンプから意識していた“走る姿勢”がチーム全体に浸透してきました。盗塁数こそ決して多くありませんが、相手のスキをみて先の塁を奪う走塁が自然とできるようになっています。何事も果敢にチャレンジしなくては良い結果は出ません。首位・香川とは残り18試合で5ゲーム差。あきらめることなくチャレンジャーとしてぶつかっていきたいと思っています。


沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げた。


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