スピアーズ、「特別な場所」えどりく不敗神話継続 ~リーグワン~
27日、『NTTジャパン ラグビー リーグワン2023-24』第15節が行われ、東京・スピアーズえどりくフィールド(えどりく)で、クボタスピアーズ船橋・東京ベイが三重ホンダヒートを61-24で下した。
スポーツチームにとってホームスタジアム(ホストスタジアム)とは、我が家のような帰るべき場所の場合もあれば、アウェイ(ビジター)側からすれば威圧感や緊張感を覚える場所のケースもある。スピアーズにとっての“えどりく”は、前者にあたるだろう。暖色系のチームカラーは、スタジアムの雰囲気とあいまって距離感が近いように思える。
スピアーズ今季初の“えどりく”だ。公式戦17連勝中、リーグワンでは負けたことのない験のいい場所でヒートを迎えた。ホストゲーム1勝6敗と苦しんだスピアーズにとっては“帰るべき場所”でホストゲーム最終戦を白星で飾りたい。この日、キャプテンCTB立川理道のスピアーズ公式戦150キャップ目の記念すべき試合でもあった。
しかし試合前時点で6勝1分け7敗で3季連続のプレーオフ進出を逃したチーム状態を表したかのような立ち上がりを見せてしまう。ショートパントでスペースを突かれ、前半4分と9分に連続トライを許す。15分にPGを決められ、0−17とリードを許す展開に。
「前半はプレッシャーの中でスコアを重ねられて、自分たちがやるべきことを見失いかけた。前半最後の15分くらいは自分たちがしっかりとコントロールでき、2トライを返せたというのは大きかったと思います。あそこで焦らず、トライを急ぎ過ぎず、しっかりとスコアができたというのはチームの成長」とは試合後の立川の談。スピアーズは焦らずパワフルなFWで前進し、インゴールに迫った。35分と終了間際に2トライ2ゴールで3点差に詰めてハーフタイムを迎えた。
後半は一気にスピアーズの旗色が良くなる。開始早々にFLトゥパ・フィナウが抜け出し、No.8ファウルア・マキシがノーホイッスルトライで逆転に成功すると畳み掛ける。SOバーナード・フォーリー、WTBリアム・ウィリアムズ、WTB山﨑洋之が次々とインゴールにボールを運んだ。
後半30分には途中出場のPR為房慶次朗がリーグワン初トライをマークした。3分後にはWTB根塚洸雅が右サイドを駆け抜けてフィニッシュ。ヒートに1トライ1ゴールを返されたものの、終了間際に為房が相手を弾き飛ばすパワフルなトライを決め、試合を締め括った。
試合後、フラン・ルディケHCはこう総括した。
「今日は特別な場所、“えどりく”。いい思い出がたくさんあり、ファンの方たちがたくさん来てくれる“えどりく”で、立川選手の150キャップというスペシャルな試合を戦うことができました。入りはあまりよくありませんでしたが、後半はスペシャルなパフォーマンスを見せてくれました」
自身の記念すべき試合を白星で飾った立川も「自分たちの中でも、ここ(“えどりく”)での試合は特別です」と語り、続けた。
「オレンジアーミー(チームの選手・スタッフ、ファンなど関係者の愛称)にとっても特別。その中で勝ち切れたことをうれしく思います。試合の数はコントロールできない中、150キャップを“えどりく”といういいタイミングで迎えられたことも特別に感じています」
節目の試合を“えどりく”で迎えたのは、立川だけではない。HO福田陸人は公式戦初キャップを刻んだ。「普段練習試合で使って慣れ親しんだ場所“えどりく”でデビューできて良かった。お客さんも入っていたので『陸人ー!』って声を聞こえてきてうれしかった」。前半32分から急遽出場となったが、スクラム、ラインアウトを中心に安定したプレーを見せ、上々のデビューを飾った。
今季は“えどりく”以外では東京(秩父宮ラグビー場)で4試合、大阪で2試合(ヨドコウ桜スタジアム、東大阪市花園ラグビー場)、北海道(札幌ドーム)で1試合ずつ開催した。ホストゲームの平均観客動員数は8188人で昨季(3975人=8試合すべて“えどりく”)を大きく上回った。「利益は上がっていると思いますが、我々は(観客動員の)数字だけを見ていない」とは石川充GM。
「どこでやるにしても試合にコンセプトをしっかり持っている。地方のラグビー普及のために何ができるか。例えば事業と絡めて、新たな価値を見出していくこともできるはずです。秩父宮だったらラグビーファンが集まり、そこで勝利やいい試合を見せることでウチのファンになってもらいたい。お客さんをスタジアムにたくさん呼ぶことによって、スポンサーの方々にもチームの価値を感じてもらいたいんです。もちろん“えどりく”には“えどりく”の良さがあります。それぞれの会場でコンセプトを持ってやっていく。その先に数字だけではないステップが見えてくると思うんです」
地方も地元も大事にしていきたい――。来季について石川GMは「江戸川区とも前向きなディスカッションはしています。来季は試合数も増やしていきたい」と、昨季ほどではないにしても“えどりく”開催の試合数をある程度確保することを示唆した。昨年4月にネーミングライツでチームの名を冠するスタジアムとなったばかり。チームが魅力的であること、人がたくさん足を運ぶ場所であること。これらをもって箱の価値を高めていくしかない。今季の戦いは終えたが、“オレンジアーミー”が一丸となっての挑戦は続く。
(文・写真/杉浦泰介)