シチズンホールディングスが「環境のために時間短縮すべきこと」と題して行ったアンケートによれば1位はネオンやライトアップの点灯時間(49%)、2位は24時間営業(36%)、そして3位は国会審議(35%)――。プロ野球の試合時間も11位(8.5%)に顔を出していた。要するに「長過ぎる」ということだろう。

 今季のプロ野球は「試合時間マイナス6%」を目標に掲げてスタートした。過去10年間の平均試合時間は3時間18分。つまり3時間6分以内が目標だ。球団も個々に活動方針を示した。たとえば東京ヤクルトはこうだ。<試合時間短縮を監督方針として打ち出し、監督・コーチ・選手全員に徹底し照明使用時間を短縮しCO2削減を目指す>

 滑り出しはうまくいった。5月15日の時点ではセ・パともに3時間7分。前年に比べるとパで11分、セで12分短縮された。だが、ここからがいけない。徐々に試合時間が延び始め、7月7日現在の平均は3時間10分。目標を4分も超過している。夏場、投手がへばれば試合時間はさらに延びるに違いない。

 NPBには目標を達成できなかった場合、はやりの排出量取引に参入する計画もあるようだ。NPBが試算した試合時間1分あたりの電力消費量は約36.3kwh。これを公式戦全864試合でのCO2排出量に換算すると1分で約17.4トンとなる。環境省の発表では排出量取引の平均価格は1トンあたり約1200円。4分超過だと排出量は約69.7トンで約8万5千円の支払いが生じる計算になる。微々たる額ではあるが、払わないに越したことはない。

 プロ野球は国民的スポーツである。<野球の力で温暖化ストップ!>と大見得を切った以上、公約を果たす義務がある。「試合時間マイナス6%」は是が非でも実現させたい。そうでなければプロ野球の信認が揺らぐ。

 野球は時間に左右されない数少ないスポーツである。本音を口にすれば試合時間が長いとか短いとかではなく、ゲームの質について論じたい。しかし地球の温暖化が環境破壊や食糧危機を引き起こし、世界経済までも蝕み始めた今、野球サークルの中だけで悠長なことは言っていられない。ここはリーダーの出番だ。新コミッショナーにはぜひ「エコ・ベースボール」の大号令を発してほしい。

<この原稿は08年7月9日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

◎バックナンバーはこちらから