4月19日に開幕したBCリーグの前期が終了しました。群馬ダイヤモンドペガサスは1ゲーム差で2位。掴みかけていた優勝を、あと一歩のところで逃してしまいました。
 もちろん優勝できなかったことは残念ですが、選手たちはよく頑張ったと思います。チームとしてスタートしたキャンプ時、技術的にも体力的にも他球団に追いつくにはかなりの時間を要すると思われた彼らが、まさかここまでやってくれるとは……。予想以上の彼らの成長に満足するとともに、後期への手応えを感じました。
 しかし、新潟とは1ゲーム以上の力の差を感じてもいます。今季の新潟は投打のバランスが非常にいい。特に藤井了(田辺高−法政大−米独立リーグ−オランダ独立リーグ)、中山大(新潟江南高−新潟大−バイタルネット)、徳田将至(上宮高−日体大−アトランタブレーブス2A)の先発3本柱は安定しています。

 それでも3人のうち、藤井投手と中山投手に対してはともに2勝2敗の5分の成績を挙げることができました。勝利数、奪三振数、防御率の3部門でいずれもベスト10入りしている両投手相手に、よく戦ってくれたと思います。

 もう1人の徳田投手とは、これまで一度も対戦したことがなく、初めて対戦したのが11日の新潟戦の最終戦でした。前日の10日、藤井投手と富岡久貴(高崎工高−東京ガス−西武−広島−西武−横浜−西武−東北楽天)とのエース対決に9−3と快勝した群馬は、このまま一気に優勝に向けて加速しようと、勢いに乗りかけていました。ところが、打線は徳田投手のピッチングに手も足も出ず、完敗。7回表が終了した時点で9−1となり、降雨コールドで負けてしまいました。この試合を落としたことで、自力優勝の可能性が消えてしまったのです。

 結果的にはこの試合が明暗を分けました。新潟が次戦の富山サンダーバーズに勝利し、前期優勝を決めた一方、我々は信濃グランセローズとの接戦をモノにすることができず、連敗を喫してしまいました。

 しかし、新潟との最後の2連戦では収穫もありました。それはミスが勝敗を分けるということです。10日の試合は、最終的に9−3というスコアとなりましたが、5回までは4−3と群馬のリードはわずか1点でした。ところが6回以降、新潟が5つものエラーをしたことによって群馬にチャンスが広がり、徐々に点差が開いていったのです。翌日の試合は逆に群馬がエラーを出し、新潟にチャンスを与えてしまい、大差で敗れてしまいました。
 この2試合を通して、選手たちはミスがどれだけ勝敗にかかわってくるのかが、改めてわかったはずです。

 実は、6月まで群馬はリーグで1、2位を争うほどエラーが少なかったのです。ところが、7月に入ってからというもの毎試合のようにエラーが出るようになりました。当時は首位を走っていましたから、目の前に迫った優勝へのプレッシャーが選手たちの動きを硬くしたのでしょう。

 リーグ内でも随一の守備を誇るショートの山田憲(東海大浦安高−日本ハム−サウザンリーフ市原)でさえ、普段では絶対にしないトンネルをしたり、外野手がフライへの距離の目測を誤ったり……。これまでは考えられないような凡ミスが相次ぎました。

 こうしたちょっとしたことが、優勝を寸前で逃した要因となったのだと思います。しかし、初めてリーグ戦を経験する選手も多い我々のチームにとっては、いい経験になったとも言えます。後期ではぜひ、前期での経験をいかして欲しいものです。

 さて、後期は25日からスタートします。群馬は、最大のライバルと言ってもいい新潟との5連戦です。理想は全勝ですが、最低でも2勝3敗にはもっていきたいと考えています。1勝4敗もしくは全敗と大きく負け越せば、その後の戦いが非常に厳しくなります。逆に勝ち越すことができれば、チームは勢いに乗るでしょうね。そういった意味でも、この5連戦は後期優勝への最初の山場となりそうです。

 前期終了後、群馬はわずか1日の休日を挟み、15日から練習をスタートさせています。課題はたくさんありますが、なかでも体力をつけることを重点的に置いたトレーニングを行なっています。先述したようにリーグ戦の経験者がほとんどいませんから、まずは1年を通して戦い続ける体力づくりが必要です。特に暑く、疲労がたまりやすい8、9月はバテやすいので、今からしっかりと準備しておくことが重要です。

 2〜3時間素振りをしたり、1時間ぶっ通しでノックを受けたり……。選手たちは今、相当しんどさを感じているでしょうね。わざとしんどいと思うことを課しているのですから当然です。というのも、後期の優勝もそうですが、彼らが目指しているのはNPBというさらに上のレベル。そこへ到達するには、並大抵の努力では無理だからです。

 今季のBCリーグを見ても、そのことは一目瞭然です。打率1位の山田、本塁打と打点でトップの新潟・青木智史(小田原高−広島−シアトル・マリナーズ1A−ウエルネス魚沼−サムライベアーズ−セガサミー)、勝利数、奪三振数、防御率いずれもベスト10入りしている富岡、南和彰(神港学園高−福井工大−巨人−カルガリーバイパーズ)は全員元NPB選手です。しかし、リーグでトップの成績を挙げている彼らでさえも、NPBでは1軍で目立った活躍をすることはできませんでした。つまり、彼らを超えない限り、NPBへの道を開くことはできないのです。そのためにはまさに血のにじむような練習を積まなければなりません。

 後期開幕まであと3日。うだるような暑さの中、選手たちも歯を食いしばりながら頑張っています。後期もぜひ彼らの勇姿を見に、球場に足を運んで欲しいと思います。


澤井良輔(さわい・りょうすけ)プロフィール>:群馬ダイヤモンドペガサスコーチ
1978年3月9日、千葉県出身。銚子商業では3年時に春夏連続で甲子園に出場し、春準優勝の立役者となった。そのバッティングセンスはプロも注目。全国屈指の強打者として名を馳せていたPL学園の福留孝介(現カブス)と比較されることも多く、「西の福留、東の澤井」と言われた。1996年、千葉ロッテにドラフト1位で指名され入団。しかし、なかなか1軍に定着することができず、05年オフに戦力外通告を受ける。その後はクラブチームでプレーしていたが、今季より群馬のコーチに就任。本格的に指導者の道を歩み始めた。
◎バックナンバーはこちらから