7月9日(水)、J2第25節となる愛媛FC対サンフレッチェ広島の一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。 
 瀬戸内海を挟んで隣同士の愛媛県と広島県。それぞれの地域をホームとして活動しているチームの対決とあって、この一戦は「瀬戸内ダービー」とも銘打たれており、プライドを賭けた熱戦が今節も期待されている。
(写真:細かくパスを繋ぎ、敵陣内へと攻め込む愛媛)
 現在(第24節終了時点)、首位を独走中のサンフレッチェ広島。下位に低迷している愛媛FCにとっては、現在の自分たちの力を試すことが出来る最良の対戦相手とも言えるだろう。まさしく最強の相手ではあるが、弱気になることなく、何とか最後まで喰らいつき、勝利を手中に収めたいところである。
 
 梅雨が明け、スッキリと晴れわたった、今日の愛媛県総合運動公園。ニンジニアスタジアムのピッチコンディションは、概ね良好。風も殆ど吹いてはいない。
 夕暮れ時が迫る中、時計は午後7時を廻り、広島のキックオフで試合がスタートした。

 立ち上がり、細かくパスを繋いで、敵陣内へと攻め込んでいく愛媛FC。
 攻撃陣が素早いチェイシングで敵DFのキープするボールに狙いを定める。そのツートップを務めるFW大木勉選手とFW田中俊也選手は、今節の対戦相手である広島の元所属選手。古巣相手に、負けたくない気持ちは強いことだろう。

 対する広島の先発の高萩洋次郎選手と佐藤昭大選手は、元愛媛FC所属選手。彼らも秘めたる思いがあることだろう。
 前半4分、その広島の高萩選手に、まんまとやられてしまった。敵のコーナーキックからの流れの中、自陣ゴール前での混戦において、ルーズボールを高萩選手に巧みなシュートでゴールへと押し込まれ、あっさりと先制を許してしまったのだ。
 
 「試合は始まったばかり、時間は充分にあるぞ!」
 サポーターから檄が飛ぶ。
 
 敵の先制に対し、黙ってはいない愛媛FC。
 前半5分、右サイドをドリブルで、敵陣内へと攻め上がったDF高杉亮太選手が、敵DFライン裏へと飛び出す構えを見せていた田中選手へとスルーパスを通す。ペナルティアーク付近でボールを受けた田中選手が、トラップを挟みながら、敵DFをかわしつつ、前が開けたタイミングを見計らって、豪快に左足を振り抜きシュートを放った。グラウンダーのボールは、猛スピードで敵ゴールに襲い掛かるが、惜しくもゴールマウスを捉えることは出来なかった。

 前半6分、センターサークルで、相手のトラップミスしたボールを奪ったMF江後賢一選手が、中央をドリブルで駆け上がり、左サイドスペースへと開く構えをみせる大木選手へとパスを送る。パスを受けた大木選手が、敵DFライン裏へと抜け出して行く江後選手へとボールを戻す。ボールに追いついた江後選手が、左サイド高い位置から、ゴール前へとセンタリングを折り返す。

 このボールを敵DFが、頭で一旦クリアを図るが、ペナルティアークへとオーバーラップを掛けていたMF横谷繁選手が、クリアボールを捉え、左足でノートラップボレーシュートを放った。今度こそゴールかと思ったのだが、残念ながら、これまたゴールマウスを捉えることが出来なかった。

 これら愛媛の得点チャンスにより、確実に反撃ムードが高まっていたのだが、前半の32分、一瞬の隙を衝かれ、敵FWに技ありシュートを決められた。広島に2点目を献上してしまったのだ。
 
 前半戦は、0−2のスコアで終了。愛媛イレブンに重く圧し掛かる2点のビハインド。
 後半戦序盤、広島攻撃陣に自陣内に押し込まれるなど、劣勢を強いられるシーンが目立つ。

 しかし、後半10分を過ぎる頃には、サイドスペース等を利用しつつ、細かなパス廻しで、敵陣へと攻め入り、攻撃のリズムを少しずつ取り戻し始める。
 後半14分、センターサークル付近に陣取るMF赤井秀一選手から出たパスを、敵陣内の高い位置で受け取る横谷選手。右サイドスペースを更に高い位置までオーバーラップを仕掛けて来た高杉選手に向けてボールを送る。

 このパスを受けた高杉選手が、ゴール前に向けてアーリークロスを供給。これに対し、敵GKが前に飛び出し、捕球を試みたのだが失敗。後方にボールを逸らしてしまう。このルーズボールを捉えたのは、左サイドから駆け上がって来た江後選手だ。ペナルティエリア左側から直接ゴールを狙ってシュートを放つが、敵DFの必死のクリアで、惜しくも得点には至らなかった。

 後半16分には、左サイド江後選手のドリブル突破とFW横山拓也選手の思い切りの良いシュートから、愛媛がコーナーキックのチャンスを得る。
 後半17分、右コーナーからの絶妙なセンタリングを捉えたのは大木選手。ゴール前で敵DFとの競り合いに勝ち、ジャンピングヘッドでシュートを放つが、惜しくもゴールポストに阻まれ得点ならず。
(写真:敵ゴール前でのポジショニング争い)
 
 立て続けに、惜しいチャンスを逃してしまった愛媛FC。一矢報いるため、この後も最後まで果敢に攻め続けたのだが、時間は過ぎ去り、ついにはタイムアップ。
 最終スコア0−2で愛媛FCが惨敗を喫した。
 
 今節、広島を上回る数の決定機をつくりだした愛媛FCだったが、チャンスを得点に結びつけることが出来なかった。
 対する広島は、少ない決定機を高い確率で得点に繋げており、決定力の差が如実に現れた試合だったとも言えるだろう。広島が首位を走っている理由も、そのようなところにあるのかもしれない。

「運」も影響しているとは思うが、愛媛に在籍しているストライカーたちの今後の奮起に期待したいところだ。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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