7月30日(水)、J2第28節となる愛媛FC対徳島ヴォルティスの一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
 今節は、言わずと知れた「四国ダービーマッチ」。愛媛FCが、宿敵・徳島をホームにて迎え撃つ一戦となった。第1クールに行われたダービーでは、愛媛FCが快勝している。
(写真:コーナーキックのチャンス! 敵ゴール前での攻防)
 私だけではなく「何がなんでも勝ちたい!」という意識が、両チームの選手や両サポーターの心中にも根付きつつある「因縁の四国ダービー」。簡単に連勝出来る相手とは思わないが、今節は、愛媛FCのホームゲーム。必ず勝利をものにしたい。

 この「四国ダービー」、当たり前だが、全国のサッカーファンから見れば、まだまだ認知度は薄い。しかし、将来は、四国(愛媛か徳島)でしか味わうことが出来ない「至高の四国ダービー」としてプレミア度を高め、四国全域にとって大きな財産とも言える一大イベントへと発展させるべく、地域と共に育んでいきたい一戦なのである。

 それが故に、どのような環境下にあろうとも、お互いに全力を出し尽くし、名勝負を積み重ねていかなければならない「宿命の戦い」とも言えるのかもしれない。
 
 晴天に恵まれた今日の愛媛県総合運動公園。蒸し暑さを感じるものの、ピッチコンディションは、良好な模様である。
 夕暮れ時を迎え、照明灯に灯りが燈る中、時計は午後7時を廻り、徳島のキックオフで試合がスタートした。
 
 序盤、両サイドスペースを活かした大きな展開から、攻撃のリズムを掴んでいく愛媛FC。そんな中、敵によるセットプレーからの攻撃で守勢に廻り、「あわや失点か」と思わせる危ないシーンも見受けられたが、GK多田大介選手を中心に愛媛守備陣が堅い守りを見せる。

 前半戦は、一進一退の攻防が繰り広げられる中、両チームともに決定機を得点に結び付けることが出来ず、0−0のスコアレスで終了した。
 
 後半立ち上がり、徳島の素早い攻めに手を焼き、ペースを掴めない愛媛FC。相手の攻撃を耐え忍ぶ時間帯が長く続くが、それでも後半15分を過ぎるあたりから、細かくパスをつなぎ、敵陣内で攻撃態勢を組み立て始める。

 後半18分、左サイドに開き、ボールをキープするMFキム・テヨン選手が、センターサークル内に陣取るMF横谷繁選手へとパスを送る。敵陣内中央を駆け上がるMF赤井秀一選手へ向け、パスを通す横谷選手。ボールを受けた赤井選手が、敵DFのチェックを振り払い、敵の最終ライン裏へと飛び出す構えを見せていたFW大木勉選手の足元へ向けて絶妙のスルーパスを供給する。ナイストラップで自分の足元にボールを納めた大木選手が、そのままドリブルでペナルティエリアへと侵入した。

 敵GKの動きを見ながら、左足を振り抜き、グラウンダーのシュートを放つ大木選手。ボールは、敵GKの脇の下をすり抜け、見事ゴール左隅に突き刺さった!
「素晴らしい先制ゴールだ!」

 苦しい展開の中、待ちに待った先取点が飛び出した! 満面の笑みとガッツポーズで喜びを表現する大木選手。チームメートが彼を取り囲み、手荒な祝福を浴びせる。スタンドからは大歓声が湧き起こり、歓喜の輪が、スタジアム全体へと広がっていく。敵ゴール前で落ち着いたプレーをみせ、更には、的確なシュートを決めてみせた大木選手。ベテランらしい素晴らしいゴールシーンだった。
 
 この先制ゴールを機に、かさにかかって攻め立てる愛媛FC。後半27分には、ペナルティアークでの大木選手のポストプレーから、赤井選手へとボールが渡る。そのまま、ペナルティエリアに攻め上がり、右足でシュートを放つ赤井選手だったが、惜しくもゴールポストに弾かれ、追加点には至らなかった。
 
 その後も、相手の運動量が落ちる中、攻めの姿勢を保ち続けた愛媛イレブン。時間は過ぎ去り、ついにはタイムアップ。
 結局、最終スコア1−0で愛媛FCが、四国ダービーを征した。

「四国制覇だ!」
 今回作成され、勝利チームへと手渡されることになった「四国ダービー・ウィナーズ・フラッグ」は、愛媛FCが手にすることになり、四国ダービーマッチに、ひとつの歴史が刻み込まれたのである。
 
 この試合、総入場観客数は7809人と発表された。愛媛のホームゲームとしては、今シーズン一番の観客数が記録されたのだ。
 見応え満点のゲームで、大勢の観客を魅了した今節の「四国ダービー」。全国に誇れるイベントへ向けて、第一歩を踏み出せたのではないだろうか。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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