北京五輪で金メダルが期待されながらメダルなしに終わった星野ジャパン。韓国、キューバ、米国、すなわち表彰台に上がった3カ国に対しては0勝5敗。力負けと言わざるをえない。

 帰国前、星野仙一監督は「叩くのは時間が止まっている人間」と予防線を張ったが「叩く」ことと敗因を検証することは別問題である。よくやりました、残念でした、次もお願いします、なんてやっていたら、それこそ日本の野球の時間が止まってしまう。今こそ日本球界は0勝5敗という冷厳な事実にしっかりと向き合わなければならない。
 その第一歩として、やはり星野監督はけじめをつけるべきだろう。これは星野仙一という人物が好きとか嫌いとかという話とは別次元の問題である。

 個人的に言えば、私は星野仙一という人物をリスペクトしている。球界再編騒動の際、選手やファンの側に立って縮小均衡に表立って反対したのは球団の要職にある人物としては星野仙一阪神球団SDと野崎勝義阪神球団社長(当時)くらいだった。心ある多くのファンが彼らの勇気ある言動を支持した。
 今では球界の牽引役である阪神を再建したのも星野仙一である。阪神という資源を資産に変え、球界全体を活性化させた功績は大きい。その手腕は「球界のカルロス・ゴーン」と呼ぶにふさわしいものがあった。

 五輪代表監督も適役だった。仲間で固めた首脳陣には「お友達内閣」との批判も出たが、人事権は代表監督にある。「負けたらオレが責任をとる」。その覚悟が星野監督にあった以上、周囲がとやかく言うべきではない。ただ、権限には責任が伴うということを忘れてはならない。
 残念ながら北京五輪の結果は惨敗だった。もはやこの事実から逃れることはできない。これで代表監督が責任をとらなかったら、いったい誰がとるのか。コーチ陣の首をすげかえて済む話ではない。来春のWBCは新体制で臨むべきだ。

 同じく「お友達内閣」と揶揄された安倍内閣は昨年7月の参院選で大敗したにもかかわらず安倍晋三首相(当時)は「引き続き責任を果たすことが私の使命」と言って続投。結果、国民から見離され深刻な政治不信を招いた。代表監督はいわば公職である。進退を誤ると取り返しのつかないことになる。闘将は同じ轍を踏むべきではない。

<この原稿は08年8月27日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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