8月23日(土)、J2第32節となる愛媛FC対水戸ホーリーホックの一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
 愛媛FCのエースストライカー・FW田中俊也選手。今節がJ2出場通算100試合目という記念すべき節目のゲームとなった。このメモリアルな試合において、自らの得点で是非とも祝砲を打ち上げて欲しいものだ。サポーター達も、それを願って、試合前から「俺らのト・シ・ヤ! タナカー! トシヤ!!」と高らかにコールを繰り返し、田中選手へエールを送っている。
(写真:サイドスペースを活かした攻撃展開)
 夕方雨に見舞われた、今日の愛媛県総合運動公園。試合開始1時間前には、その雨もあがり、ピッチコンディションは、回復に向かっている。
 スタジアムが夕闇に包まれる中、時刻は午後7時を廻り、水戸ホーリーホックのキックオフで試合がスタートした。
 
 立ち上がり、水戸の素早いチェックに手を焼くものの、サイドチェンジなどを駆使して、相手の寄せをかわしつつ、敵陣内へと着実に攻め込んで行く愛媛FC。
 前半13分、左サイドスペースを活かした攻撃から、コーナーキックのチャンスを掴んだ。MF赤井秀一選手が、左コーナーから、ゴール前ニアサイドへとグラウンダーのセンタリングを供給する。しかし、敵DFにクリアされ、敵陣内タッチラインからのスローインによるリスタートとなった。

 敵陣左サイドで赤井選手からのスローインのボールを受けたMF江後賢一選手が、もう一度、赤井選手へとボールを戻す。ボールを受けた赤井選手が、敵GKと敵DFラインの間を狙った絶妙のアーリークロスをゴール前に供給する。

 そこに飛び込んで来たのは、FW内村圭宏選手。ゴール前でバウンドしたボールを上手く捉え、半身の構えでジャンプしながら右足を伸ばす。そしてアウトサイドでゴール左隅に、このボールを押し込んだのだ!

「見事な先制ゴール!」
 スタンドから大歓声が湧き起こる! 絶妙のタイミングでゴール前に飛び込み、難しい体勢ながらゴールを決めてみせた内村選手。「俺のゴールだ!」とばかりに両手を突き上げ、喜びを爆発させている。
 
 ビューティフル先制ゴールが飛び出し、更に勢いに乗って攻め立てる愛媛イレブン。
 前半37分、自陣で敵のパスボールを奪って、素早くカウンター攻撃を仕掛ける。ボールをキープした内村選手が、右サイドに開きながら敵陣深い位置までドリブルでボールを持ち込んだ。味方が上がるのを待ち、同サイド後方に陣取るDF高杉亮太選手へとボールを戻す。

 足元に来たボールを捉え、そのままノートラップでペナルティアークに向けて、アーリークロスを供給する高杉選手。ペナルティアークに陣取る田中選手が、敵DFを背負いつつ、このクロスボールを上手く捉え、ペナルティエリアに向けて駆け上がる赤井選手の足元へとボールを落とす。

 このボールを受けた赤井選手が、トラップを挟みながら敵GKの動きを読みつつ、落ち着いてゴールマウス右隅へとグラウンダーのシュートを流し込んだ!
「素晴らしい追加点!」
 歓喜に包まれるスタジアム。赤井選手を称えるコールを連呼するサポーターたち。チームメートと抱き合い喜びを分かち合う赤井選手。
 
 2点差をつけ、後半戦に突入し、楽勝ムードの中、余裕を持って試合に臨む愛媛FC。しかし、その余裕が災いしたのか、信じられない展開を招いてしまう。
「この点差のまま、ゲームをモノに出来るのでは・・・」と皆が思い始めた矢先の後半19分、そして後半29分と立て続けに水戸に得点を決められ、あっさりと同点に追いつかれてしまったのだ。
 
 それでも「まだ同点だ! 諦めるな!」とのサポーターの声を背に受け、勝ち越しに向けて反撃に出る愛媛イレブン。
 後半39分には、キーパーチャージのファウルで、“幻のゴール”となったFW三木良太選手のジャンピング・ヘディングシュート。後半42分には、ゴールマウスを捉えることは出来なかったが、ペナルティエリア内での田中選手の豪快なシュート……。本当に惜しい決定機が、たて続けに訪れた。
(写真:敵陣内、激しいボールの奪い合い)

 ロスタイムには、敵ペナルティエリア内にて、田中選手が自らファウルをもらい、PKを獲得。決定的な勝ち越しチャンスだったのだが、敵GKに阻止されゴールならず。
 その直後にタイムアップの笛が吹かれ、残念ながら試合終了。
 結局、最終スコア2−2のドローゲームに終わってしまった。
 
 後半戦終盤に、怒涛の攻撃をみせた愛媛FC。そのパワーを、もう少し早い段階で発揮してほしかった。
 記念の試合で、自ら貪欲にゴールを狙い続けた田中選手。惜しくも得点を挙げられなかったが、ポストプレーからのナイスアシストなども見られ、今後に期待が持てる活躍ぶりだった。
 
「田中俊也選手、J2出場通算100試合、おめでとう!」
 その経験を活かし、エースとしての自覚と誇りを胸に、シーズン終盤を熱く激しく、闘い抜いてほしいと思う。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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