第322回 「フェス」~選手たちによる“打ち上げ花火”(天皇杯2回戦)~

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 リーグ戦と並行して行われている天皇杯JFA第104回全日本サッカー選手権大会。5月25日(土)と5月26日(日)に、1回戦が行われた。

 

 愛媛FCなどのJ2勢は2回戦からの登場となる。

 

 愛媛FCの初戦は6月12日(水)、ファジアーノ岡山とのアウェイマッチだった。同じJ2勢との対戦。しかも4月に行われたリーグ戦(第9節)では、後半アディショナルタイムに同点に持ち込まれ、悔しい思いをさせられた相手だ。天皇杯では90分間で勝利を手に入れたい。

 

 試合会場は岡山市にあるシティライトスタジアム。午後7時キックオフの平日ナイターということもあり、サポーターの集まりを心配していたが、ビジター席には100名程の愛媛サポーターが集い、熱い応援で選手たちを後押しした。

 

 夕刻を過ぎ、照明灯がピッチを鮮やかに照らす中、愛媛のキックオフで試合がスタート。敵陣に向け、大きく蹴り込んだロングフィードを相手DFがクリア。このボールに反応したのが敵陣中央にポジションを取るMF森脇良太選手。胸トラップで足元にボールを納めると次の瞬間、左足を鋭く振り抜きミドルシュートを放った!

 

“えっ! まだゴールまで30メートル以上ありそうな場所から打ったぞ?”と思った。ボールは弧を描きながら、精一杯に高く跳び、伸ばした相手GKの手を擦り抜け、見事ゴール!

 

 応援席が大歓声に包まれる! 森脇選手は大きく手を広げベンチ前に足からスライディングして喜びを爆発させた。チームメイトも駆け寄り、彼を祝福した。

 

 キックオフの笛から僅か15秒での出来事。驚き、興奮、歓喜が私の心に一気に押し寄せ、混乱にも似た感覚だった。

 

 チーム一番のお祭り男によるスーパーゴールが飛び出し、愛媛は試合の流れを引き寄せた。

 

 15分にはセットプレーからFW浜下瑛選手の美しいボレーシュートが決まり2対0。28分、岡山に1点を返されるが、愛媛の勢いは止まらなかった。42分にはMFユ・イェチャン選手のクロスに上手く合わせたFW舩橋京汰選手がゴール。後半6分にも舩橋選手が追加点を決める。25分には浜下選手が相手DFラインの裏に抜け出し再び得点。その2分後には、舩橋選手が続けてゴールを決め、ハットトリックを達成した。後半41分には敵陣の右サイドからDF尾崎優成選手が、ドリブルでペナルティーエリアまで持ち込み、ダメ押し点を決めた。愛媛は7対1で快勝し、3回戦進出を決めた。

 

 試合後、選手たちと一緒にラインダンスを踊り、勝利の喜びを分かち合った。リーグ戦とは、また異なる天皇杯という舞台。大量得点での勝利は、たくさんの打ち上げ花火を観たような感動もあり、サポーターにとってはチョットだけ早い夏祭りのような試合であった。

 

 岡山を率いる木山隆之監督は、過去に愛媛の指揮官を務めた。2015年シーズンには愛媛をJ1昇格プレーオフへと導いた名将である。愛媛のことを良く知り、関りの深かった木山監督と対戦し、勝利を収めたことで、良い恩返しができた気持ちでもある。

 

 木山監督が率いる岡山とは9月にもリーグ戦で再度、戦う。同じ場所(シティライトスタジアム)での再戦となるが、気を抜くことなく完全決着に向けて挑んでもらいたい。

 

 今回の2回戦では、ベテラン森脇選手の得点を皮切りに、大量7ゴールが生まれた。愛媛は前後半合わせて13本のシュートを放っているが、殆どのシュートが枠内に飛んでおり、シュート精度が高かった。

 

 また普段のリーグ戦にて、あまりチャンスを貰えていない新加入の選手たちがアシストやゴールを決めてくれたし、献身的な守備にも努め活躍してくれた。そういった良きアピールをしてくれたことで、首脳陣の選択肢も増えたと思う。チームにとっては大きな収穫があった試合ではないだろうか。

 

 次の3回戦は7月10日(水)午後7時キックオフ。対戦相手はJ1のアビスパ福岡である。リーグ戦明けの中2日での試合だ。選手たちにとっては厳しい連戦となる。愛媛のホーム・ニンジニアスタジアムでの対戦となるので、地の利を活かし、大勢のサポーターの力で夏祭りを再現したいものだ。

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。

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