教師が答案用紙に採点結果を書いて生徒に返すだけでは教育とは呼べない。指導とも呼べない。なぜこの点数になったのか、冷徹な検証が必要である。
 今季のプロ野球は「試合時間マイナス6%」を目標にスタートした。過去10年間の平均試合時間は3時間18分。つまり12分短縮の3時間6分が目標だった。

 今季の平均試合時間は3時間13分(9回までは3時間9分)。目標を7分もオーバーした。球団別でみるとベスト5は巨人(3時間8分)、広島(3時間9分)、日本ハム、横浜(3時間10分)、オリックス(3時間11分)。9回までなら3時間3分の広島がトップだ。
 ワースト5はソフトバンク(3時間21分)、楽天(3時間20分)、西武(3時間18分)、阪神、中日(3時間15分)。9回までなら3時間15分の楽天がワースト。DH制を採用しているパ・リーグの試合時間がセ・リーグに比べて余計にかかるのは理解できるが、それを考慮してもまだ長い。<野球の力で温暖化ストップ!>と大見得を切った以上、プロ野球は公約を果たす義務がある。

 折しも米国発の金融不安がこの島国の実体経済を蝕み始めている。CNNの経済ニュースを見ていると、リーマン・ブラザーズが経営破綻するまでは「リセッション」、すなわち「景気後退」という言葉が飛び交っていたが、最近では「デプレッション」(恐慌)だ。日経平均株価は10日、ついに9000円台を割り込んだ。主要先進国が相次いで打ち出した金融安定化策により一時的に持ち直したものの、まだ予断を許さない。
 将来への不安が募ると必然的に庶民の財布のヒモは固くなる。個人消費の減退が不況をさらに深刻なものとする。もはやプロ野球も「対岸の火事さ」と呑気なことは言っていられまい。

 不況時に見られる現象のひとつに「出控え」がある。これは生活防衛のための手段と考えていい。「外食」ならぬ「内食」という言葉の流行に不況時の消費者心理がはっきりと見てとれる。来季のプロ野球は大丈夫か。
「プロ野球がつまらない理由は?」。こう問うと決まって上位にくるのが「試合時間の長さ」だ。プロ野球は顧客のニーズにもっと敏感であらねばならない。試合時間の短縮はプロ野球が生き残るための命綱である。その危機感を12球団は今以上に共有すべきである。

<この原稿は08年10月15日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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