11月30日(日)、J2第44節となる愛媛FC対モンテディオ山形の一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
 今日の対戦相手モンテディオ山形は、J1昇格がかかった大事な一戦ということで、決死の闘いを挑んでくることは間違いない。だが、我々愛媛FCも、今節がホームゲーム最終戦。1年を是非とも「勝利」という結果で締めくくりたいところである。
(写真:敵DFライン裏へ攻め込むFW陣)
 朝から晴天に恵まれた、今日の愛媛県総合運動公園。素晴らしいピッチコンディションが、両チームを迎えてくれた。
 時計が午後1時を廻り、山形のキックオフで試合がスタートした。

 立ち上がり、ロングフィードで自陣へとボールを押し込んでくる山形。それに対し、愛媛イレブンは、細かくパスを繋ぎ、ボールをキープ。隙を見て敵陣内両サイドスペースへと進攻し、攻撃のリズムを掴み始める。
 前半9分、敵ゴールから約30メートル程、離れた地点で、FW横山拓也選手が倒される。相手DFによるファウルとの判定で、敵ゴールをほぼ正面で捉えられる位置にて、フリーキックのチャンスを得た。

 キッカーは、MF青野大介選手。ボールをセットし、助走距離をとる。主審の笛の音とともに走り込み、豪快に左足を振り抜いた。青野選手から放たれた弾丸シュートは、敵DFの壁の間を擦り抜け、一直線に敵ゴール目がけて飛んで行く。敵GKも横っ飛びで手を伸ばし、セーブに向かうが、届くことはなく、ゴール左隅に突き刺さった! 欲しかった先制ゴールを“愛媛のファンタジスタ”青野選手が、見事に決めてくれたのだ!
 大歓声に包まれるスタジアム。チームメイトと抱き合って喜びを爆発させる青野選手。サポーターからも、彼を称えるコールが贈られる。
 
  しかし、喜びも束の間。歓喜からわずか2分後の前半12分、反撃に打って出る山形に、カウンター攻撃を仕掛けられ、同点に追いつかれてしまったのだ。
 それでも、攻めの姿勢を崩さない今節の愛媛FC。リスクを冒しながらも敵陣へと攻め込んで行く。
(写真:敵陣内サイドライン際での攻防)

 前半31分、自陣からのロングフィードのボールを、敵陣内右サイドライン際で受け取るFW大木勉選手。ボールをキープするが、相手選手から激しいファウルを受け、フリーキックのチャンスを掴んだ。
 キッカーは、先制ゴールを叩き出した青野選手。敵陣内深い位置だが、右サイドライン際ということで、ゴールまでは、約40メートル近く離れている。今度の助走距離は短めだが、慎重に狙いを定め、左足を振り抜き、低い弾道のクロスボールを放った。絶妙のコントロールボールは、敵GKとDFラインの間へと落下。ゴールエリアでバウンドしたボールは、敵DFもGKも触ることができず、ゴールマウス左隅に吸い込まれていった!
 
「素晴らしい追加点!」
 祝福に訪れるチームメイトとハイタッチを交わし、喜びを分かち合う青野選手。スタンドに歓喜の輪が広がっていく。前半戦は、愛媛FCの1点リードで終了。
 
 勢いに乗り、後半も序盤から相手を攻め立てる愛媛イレブン。後半9分、自陣からの敵ゴール前へのロングフィードを横山選手が捉え、頭でペナルティアーク付近に陣取るMF横谷繁選手へとパスを送る。ボールを受けた横谷選手が、右サイドへと開きつつ、ゴール前に向け、アーリークロスを供給。ペナルティエリアへと走り込んで来たMF江後賢一選手が、このクロスを捉え、ジャンピング・ヘディングシュートを放った。ボールは、ゴールマウス右隅へと向かうが、敵GKの必死のセービングに阻まれ、惜しくも得点には至らなかった。

 後半31分、敵陣内左サイドのペナルティエリア脇で、FW田中俊也選手がファウルを受け、フリーキックのチャンスを得た。キッカーの青野選手が、ゴール前ファーサイドに向けて、センタリングを供給。ゴール前に詰めていたDF金守智哉選手がジャンプ一番、敵DFに競り勝ち、ヘディングシュートを放つが、惜しくもゴールマウスを捉えることはできなかった。
 
 後半戦も40分が過ぎ去り、残り5分。
 この試合、愛媛FCはうまく攻撃に時間を費やしながら、ゲームを進められていた。スコア2−1でリードしたまま、逃げ切れるかと思ったのだが、それは甘い考えだった。
 愛媛イレブンにも一瞬の油断が生じたのかもしれないが、残り時間わずかというところで、「J1昇格」という、確たる目標への執念が感じられる山形に怒涛の反撃を喰らってしまう。後半43分に、同点に追いつかれ、ロスタイムには、逆転ゴールを奪われてしまったのだ。
 
 その後、諦めず奮起する愛媛イレブンだったが、時は既に遅く、ついにタイムアップ。結局、最終スコア2−3で愛媛FCが悔しい逆転負けを喫したのである。
 
 この試合、敗れたとは言え、(第43節終了時点)リーグ戦2位の山形を相手に、終盤まで見応えあふれる素晴らしいゲームを展開したことは評価できるのではないだろうか。
 今シーズン、目の前でサンフレッチェ広島、そしてモンテディオ山形によるJ1昇格の胴上げを見せつけられた愛媛FC。この悔しさをバネに、アウェイでの最終節では、是非とも来季へと繋がる「勝利」を勝ち取って欲しい。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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