第2回WBCの日本代表候補に選出されているマリナーズの城島健司といえば球界きっての“雀豪”として知られている。佐世保の実家もかつては雀荘だった。
 その城島が「麻雀をすれば(投手の)性格がわかる」と語っている。奥の深い発言だ。雀卓を囲むことで代表候補に選ばれている投手たちの性格を把握しようという寸法だ。

「入団してしばらくは、まだ麻雀は下手でしたよ。しかし麻雀が強くなっていくにつれてリードもうまくなっていった」。そう語るのは城島の若き日を知るホークス元バッテリーコーチの若菜嘉晴だ。続けてこう言う。「配球と打牌には共通点がある。何を捨てるか、何を最後までとっておくか。よく見ていたら大体ピッチャーの性格がわかるものですよ。特にテンパった時にはクセが出る。僕が教えたわけじゃないけど、城島は麻雀を通じてピッチャーとのコミュニケーションをはかり、リードの腕を上げていきましたね。その意味で麻雀は野球に役立つ遊びだと思いますよ」

 そういえば、以前、江夏豊からこんな話を聞いたことがある。落合博満(現中日監督)が3冠王を獲る前、一緒に雀卓を囲んだ。江夏はことごとく落合の待ちを当てた。驚いた落合が「江夏さん、なんでわかるの?」と目を丸くして言った。「野球と一緒や。オマエ、狙ったボールを辛抱強く待ったことないやろ。ピッチャーは図太く待たれるのが一番イヤなんや」。江夏によれば落合の打撃が変わったのはそれからだという。

 たかが麻雀、されど麻雀――。麻雀は究極のマインドゲーム(心理戦)であり、四角い卓には18.44メートルの戦いに勝つためのヒントがたくさん詰まっているのである。
 しかし近年、麻雀をする選手が急激に減った印象がある。無理もない。かつて学生や社会人は暇ができたらチーポンやったものだが、最近は隣近所に迷惑がかかるからという理由で麻雀禁止のアパートが増えた。それは野球部の学生寮や社会人の合宿所でも同様だという。「最近の若い子はひとりで部屋にこもってテレビや携帯でゲームをやっているでしょう。野球選手は麻雀のほうがいいと思うんですけどね」と若菜。全く同感である。

<この原稿は09年1月14日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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