FC町田ゼルビアJ1優勝への本気度

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 J1首位を走るFC町田ゼルビアが大型補強を“連発”している。

 

 7月にポルトガル1部カーザ・ピアから名古屋グランパスにレンタルバックした相馬勇樹を完全移籍で獲得したことだけでも驚かされたが、続いてイングランド2部(昨季)ハダーズフィールドの中山雄太を同じく完全移籍での加入が発表された。

 

 攻撃の要であったパリ五輪代表の平河悠がイングランド2部ブリストル・シティへのレンタル移籍で抜けたことは痛手だったものの、カタールワールドカップにも出場したアタッカーの相馬をすぐさま呼び込み、そのうえでサイドバック、センターバック、ボランチと高いレベルで複数のポジションをこなせ、リーダーシップにも長けている中山の加入だ。ともに日本代表のメンバーであり、優勝に向けた大きな戦力となるのは言うまでもない。

 

 中山は右アキレス腱断裂の大ケガから復帰しながらも今年3月に右ひざのケガによって再び離脱。チームは3部に降格して自身も契約満了となり、巻き返しを図るべく欧州で新天地を探しているとみられていた。だが、町田側の熱意によって6年ぶりのJリーグ帰還を決断したというわけだ。

 

 黒田剛監督率いる町田はJ1昇格初年度ながら首位を走っている。ここ直近3試合は1分け2敗と失速気味とはいえ、8月12日時点で2位鹿島アントラーズに勝ち点3差をつけて何とかトップをキープしたまま。3位以下のサンフレッチェ広島、ガンバ大阪、ヴィッセル神戸とも勝ち点5差以内にあり、ここで踏ん張っておかなければズルズルと順位を下げてしまう可能性も出てくる。そういった危機感と、昇格即優勝への本気度がのぞく補強だと言っていい。

 

 町田の強みは、現場を支えるフロントの行動が迅速であることだ。

 

 クラブの筆頭株主、IT大手サイバーエージェントのトップである藤田晋が代表取締役社長兼CEOを務め、自らが陣頭指揮をふるっている。原靖フットボールダイレクター、黒田監督とコミュニケーションを図りながら、要望に対してはすぐに検討し、動くべきと判断すれば一気に動いていく。今回の補強を見ても、それは明らかだ。

 

 黒田監督の招聘、2023年のJ2制覇、そしてJ1昇格初年度の快進撃と、その起点になっているのが2022年12月の藤田社長の誕生である。インタビューした際、本人はこう語っていた。

 

「(サイバーエージェントが)毎年、広告費という名の実質的な赤字補填をしてきて、〝何とかしろ〟と僕が言うのは他人任せだし、それは無責任。経営陣を一新することも考えましたが、いや、自分でやる、と。そもそもこの規模の支出をしているなら、これくらいは稼がなきゃいけない、これくらいのパフォーマンスは出さなきゃいけないというスケール感、スピード感が経営の現場、サッカーの現場に伝わっていなかったので、22年シーズンが終わった後にパッと決断したんです。

 どの選手をスカウトするかに口は出しません。僕としては予算を増やして勝負する。最初に黒田監督とフットボールダイレクターの原さんと話をして、こういうふうにやっていこうと3人できちんと意思統一しました」

 

 昨シーズンの開幕前、19人の新戦力を取り込んで大幅にチームの入れ替えを図った。それでも足りないとばかりにブラジル人FWエリキを“アディショナル予算”で獲得したことは他のクラブを驚かせた。

 

 2019年に横浜F・マリノスのJ1制覇に貢献した実績を買い、強化部から相談を受けると会社のトップとしてすぐにGOサインを出している。これこそがクラブに必要としたスケール感、スピード感。エリキはチームトップの18得点を叩き出し、シーズン途中にケガで離脱を余儀なくされたとはいえJ2優勝、J1昇格の立役者となった。

 

 勝負の補強――。

 

 今回の相馬、中山の加入は、現場を奮い立たせるにはインパクト十分。現場とフロントが一枚岩の強みをこの勝負どころで見せつけているだけに、あとは結果にどのように結びついていくか。

 

 失速を止めて再び攻勢へ。後半戦もFC町田ゼルビアから目が離せそうにない。

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