はじめまして。今季より、徳島の監督を務めます堀江です。今回、僕に声をかけてくれたのは、近鉄時代のチームメイトだった森山一人コーチ。実は数年前もアイランドリーグのある球団からコーチの打診を受けていたのですが、故郷の広島で仕事をしていたこともあり、踏ん切りがつかないでいました。

 しかし、現役を退いて10年。地元の中学生を指導していたものの、もう一度、トップレベルの野球を勉強したいとの思いは消えていませんでした。そこへいただいたのが今回の話。思い切ってユニホームを着る決心を固めました。

 広島で得られるアイランドリーグの情報は限られています。オフはバイトをしながら、安い給料で若者がNPBを目指している。リーグにはその程度のイメージしか持っていません。ただ、今回の監督就任にあたり、実際に徳島に行くと、地元のみなさんがチームを熱く応援していることがヒシヒシと伝わってきました。

 さらに選手と顔を合わせると、彼らの目の輝きに圧倒されました。「ステップアップして何としてもNPBに行くんだ!」。言葉に出さなくても、熱い気持ちは充分、伝わってきました。選手たちの思いに応えたい。その思いを強くしています。

 徳島は昨季、リーグ2位の盗塁数(128個)だったと聞いています。この機動力はより磨きをかけるべきでしょう。一方、前期5位、後期最下位と低迷した要因は守備のミス。ミスから投手か崩れ、失点を重ねた試合も多かったようです。やはり選手としても、チームとしてもディフェンスがしっかりできなくては、好結果は得られません。本職の内野を中心に基本を何度も何度も反復させて、鍛えたいと考えています。

 このリーグにやってくる選手たちは、現時点ではドラフトで指名を受けるレベルではないでしょう。1年後、2年後、NPBへ行く道を拓くのであれば、まずはひとつ売りになるものを伸ばさなくてはいけません。たとえば僕が当時の大洋に入団した頃は、守りを徹底して練習しました。「守れんかったら、1軍は上がれんぞ」。コーチにハッパをかけられ、イヤになるほど基本を繰り返しました。おかげで代走、守備固め、そしてスタメンと1軍でプレーするチャンスをもらいました。

 もちろん走攻守3拍子揃えば言うことはありません。でも、そんな選手はなかなかいないでしょう。足なら足、守りなら守り、打撃なら打撃――人には負けないものをぜひ選手たちには掴んでほしいと願っています。「絶対にインコースは打てる」「サウスポーに強い」。そういったアピールポイントがあれば、スカウトの方にもきっと興味を持っていただけるはずです。

 トライアウトでは以上の観点で、足の速い選手、肩の強い選手と特徴のあるメンバーを採用しました。アイランドリーグをよく知る森山コーチ、加藤博人コーチは「今年のメンバーはいい」と高く新チームを評価しています。球団社長からは「徳島が頑張ればアイランドリーグが盛り上がる」との言葉をもらいました。後は僕がいかに彼らを指導していけるかです。

 もちろん目標は徳島悲願の初優勝と、秋のドラフト指名。監督は初経験でプレッシャーもありますが、精一杯頑張ります。今年はファンのみなさんを裏切らない野球をお見せします。大いに期待していてください。


堀江賢治(ほりえ・けんじ)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年8月8日、広島県出身。広陵高から89年、ドラフト4位で大洋(現横浜)に入団。3年目に1軍昇格を果たし、ショートを中心に61試合に出場する。95年、水尾嘉孝、渡部高史とともに、飯塚富司、伊藤敦規とのトレードでオリックスへ移籍。2軍で首位打者を獲得したが、翌年には高嶋徹とともに大島公一、久保充広とのトレードで近鉄へ。98年限りで引退後、地元で少年野球の指導をしていた。現役時代の通算成績は172試合、打率.250、4本塁打、29打点。09年より徳島の監督に就任。



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 今回は堀江監督のコラムです。「石井琢朗からの電話」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。


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