新しいシーズンに向けて、今治強化合宿がスタートしました。福岡から戻ってきた浦川大輔を除けば、今年の新人は８名。好素材が多く、これからが楽しみです。

　投手陣ではオリックスに入団した西川雅人が抜けたものの、浦川が復帰。新人も右のサイドハンド能登原将（西濃運輸）、愛南町出身の山下良太（城西国際大中退）とおもしろい投手が入団しました。能登原はスリークォーター気味の変則タイプ。打者の目先を変えられるため、中継ぎとして計算しています。

　一方の山下は投手らしい投手です。身体能力が高く、ボールにキレがあります。風貌や話しぶりは愛媛の田舎の子という印象ですが（笑）、マウンドで目立てる力を持っています。２年間、本格的に野球をやっていなかったため、必要なのは経験を積ませること。どんどん実戦で起用していきたいと考えています。

　もちろん、昨季からのメンバーも負けてはいません。篠原慎平、入野貴大、高木大輔、川西祐太郎といった２、３年目の選手が着実に成長をみせています。昨年、西川につなぐ形で、勝負どころのリリーフも経験したことが大きかったのでしょう。先発でも中継ぎでも対応できそうです。

　リーグの創設当初と比べれば、投手のレベルは比べ物にならないほどアップしました。１年目には見られたストライクが入らないような投手は、今のチームにはひとりもいません。実戦では使えないような選手もおらず、その時、その時で状態を見極めて、ベンチに入っている投手は誰でもマウンドに送り込めるピッチングスタッフになりました。先発から抑えまで、スキのない野球を展開できるのではないでしょうか。

　今年、愛媛のテーマは「全力疾走、全力投球」です。言葉にするのは簡単ですが、いざ実践となると容易なことではありません。凡打になっても常に一塁を全力で駆け抜けることができているかと問われれば、できていない選手も多いでしょう。しかし、NPBのスカウトは、そういった野球への姿勢をみています。

　たとえば、香川から千葉ロッテへ育成選手として入団した生山裕人は、一塁への走りがスカウトの評価を受けました。ＢＣリーグ・富山から阪神に入団した野原祐也も同様に全力疾走が指名のきっかけになったと聞いています。ひたむきさをアピールすることは自分の夢を拓く第一歩になるのです。

　加えて一塁までスピードを緩めず、走られると、守備側は相当なプレッシャーがかかります。慌ててファンブルしたり、悪送球をするケースも出てくるでしょう。小さなことの積み重ねが、80試合を戦った時に大きな差となって現れます。個々人にとっても、チームにとっても「全力疾走」を徹底することは大きなプラスになるのです。

　これまでの選手たちの練習ぶりをみていると、昨年以上に戦う姿勢は出てきています。後期シーズンに熾烈な争いを制して、優勝したことがひとつの自信になっているのでしょう。さらには香川に３戦全敗したチャンピオンシップの悔しさも忘れてはいません。

「今年は独立リーグ日本一を目指す」
　何より、こちらが何も言わなくても選手たちは自ら目標を掲げて練習に取り組むようになりました。昨シーズンのメンバーが、うまく新人を引っ張り、いいトレーニングができています。「やらされる」のではなく自らが「やる」チームに愛媛は変わりました。

　他球団がどのようなチームづくりをしているかは、まだわかりませんが、こちらの守りと攻撃がしっかりと機能すれば、どこが来ても戦える体勢は整いました。今季は23名と少数精鋭で臨むため、怖いのはケガだけ。投打のバランスは、過去５年間でもっともいい状態でシーズンに臨めそうです。

　シーズンは開幕すれば、あっという間に終わってしまいます。僕自身もコーチも選手全員も「何のために、ここにいるのか」を再確認し、一挙手一投足を意識して野球に打ち込むつもりです。

　リップサービス抜きで、今シーズンは期待ができます。ファンのみなさんも、ぜひ開幕を楽しみにしていてください。


＜沖泰司（おき・やすし）プロフィール＞：　愛媛マンダリンパイレーツ監督
　1961年１月５日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト４位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、２年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを２位に押し上げ、08年は悲願の初優勝（後期）に導いた。






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次の100年へ。太陽石油から、ＳＯＬＡＴＯはじまります。[/color][/size]　
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