3月8日(日)、J2・2009シーズン開幕戦(第1節)となる愛媛FC対水戸ホーリーホックの一戦が、ホーム(ニンジニアスタジアム)にて行われた。
 いよいよ、J2リーグ・4年目のシーズンへと突入した愛媛FC。「望月サッカー」の真価が問われる、大事なシーズンのスタートである。
(写真:クロスボールを待つ愛媛の選手)
 ニンジニアスタジアムのある愛媛県総合運動公園は、曇りがちの天候ながら雨の心配はなさそうで、ピッチ・コンディションも良好の模様。好ゲームが期待できそうである。
 午後1時30分、新緑に輝く芝生の上を選手たちが力強く入場してきた。同時に、ホーム側ゴール裏スタンド、メイン・バックスタンドでは、サポーターたちが手に持ったオレンジ色のゴム風船を振って、愛媛FCの選手たちを出迎えた。

 この風船はサポーター有志によって準備され、配布されたもので、試合前に約4000個が来場者へと配られていたのだ。そして、選手入場時に皆でタイミングを合わせ、一斉に「風船コレオ」が行われたのである。一瞬、スタンド一面が、地元でよく見られるミカン畑のようにも見え、美しい光景がスタジアムに展開されていた。
 
「選手達と共に闘う!」という、サポーターの意思の表れとも捉えることができる「風船コレオ」。きっと、この光景によって、その思いは選手たちにも伝わっているに違いない。
 
 1時40分、愛媛FCのキックオフで試合がスタートした。序盤、相手にボールをキープされ、自陣へと押し込まれるシーンが目立つ。
 前半13分、敵によるコーナーキックからの攻撃で、相手チームに先制点を献上してしまった愛媛FC。大事な試合にもかかわらず、相手に先制点を奪われ、スタジアムに嫌なムードが漂う。
 
 そんな中でも自分たちの目指すサッカーを見失うことなく、高い位置での積極的なプレスからボールをキープしつつ、徐々に攻撃のリズムを掴み始める愛媛イレブン。
 前半35分、自陣右サイドのDF高杉亮太選手からのロビングボールを敵陣右サイドのFW内村圭宏選手がトラップし、センターサークル脇に陣取るMF赤井秀一選手へとパスを送る。

 ダイレクトに、敵ペナルティエリアへとフィードボールを供給する赤井選手。そのボールへと詰め寄るFW大木勉選手に焦り、中途半端なクリアをする敵GK。クリアボールが、ペナルティアークへと攻め上がる内村選手の足元におさまる。
 そのままドリブルでペナルティエリアへと侵入する内村選手。敵GKの動きを読みつつ、左足でボールを押し出し、落ち着いてゴールマウスへと流し込んだ! 見事な同点ゴール! スタンドから大歓声が湧き起こる。
 
 この1点で、一気に試合の流れを掴んだ愛媛イレブン。後半に入ってもサイド攻撃などを駆使し、積極的な展開をみせる。
 後半29分、コーナーキックのチャンスを得た愛媛FC。右コーナーからMF大山俊輔選手が、ペナルティエリア・ファーサイドに向けて絶妙のセンタリングを供給。このボールを捉えたのは、長身のDF柴小屋雄一選手。ジャンプ一番、敵DFに競り勝ち、ヘディングで敵ゴールエリアへとボールを叩きつけた。
(写真:敵ゴール前、ポジショニングの攻防)

 そこで待っていたのは、FW田中俊也選手。ゴール前でバウンドするボールをうまくとらえ、左足でボレーシュートを放った。ボールは敵GKの脇をすり抜け、ゴールマウス内に陣取る敵DFに接触。一旦、クリアされたかに見えたが、ゴールラインを割っているとの判定! 素晴らしいゴールだ! ついに、愛媛FCに逆転のゴールがもたらされたのだ!
 歓喜の渦に包まれるスタジアム。「皆で勝ち取ったゴールだ!」とばかりに喜び、抱き合い、チームメイト同士でハイタッチを繰り返す愛媛イレブン。
 
 完全にペースを掴み、押せ押せムードとなった愛媛FC。
 後半33分、敵陣中央のMF横谷繁選手から右サイド高い位置へとオーバーラップを仕掛けていた高杉選手へとパスが通る。トラップを挟み、ゴール前に向けてアーリークロスを供給する高杉選手。ゴール前に詰めていた内村選手と敵GKが、このボールをとらえるためジャンプするが交錯して倒れ込む。

 そこからこぼれたボールを、同じくゴール前に詰めていた田中選手がキープ。敵DFを背負いつつ、体勢を崩しながら、再び攻め込む内村選手へとパスを送った。ボールをトラップしつつ、ゴールエリア右隅へとシフトする内村選手。角度がほとんどなくなった位置から、敵GKの頭上を狙い、軽く浮かせたシュートを放った。

 ボールは、敵GKと敵DFの頭上をすり抜け、見事ゴールイン! 今日、2得点を叩き出した内村選手! チームメイトと抱き合って喜びを爆発させている!
「ウチムラ・ヨシヒロ! ゲット・ゴール!!」
 サポーターによる内村選手を称えるコールが、いつまでも鳴り止まない。
 
 その後も、愛媛ペースで試合が進み、ついにはタイムアップ。結局、最終スコア3−1で愛媛FCが見事、逆転勝利を収めた! 2009シーズン、良いスタートを飾ることができて、本当に嬉しい!
 
 水戸の選手たちの足が止まる中、最後まで走り続けた愛媛FCの選手たち。キャンプの課題であったスタミナ強化が見事に実った勝利とも言えるだろう。
「劣勢をはね返す精神」と「90分間を走り切れる体力」を兼ね備えた今年の愛媛FC。このシーズン、実に楽しみである。


松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール
 1967年5月14日生まれ、愛媛県松山市出身。
 愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。
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