おかげさまで前期シーズンを優勝することができました。まだ後期が残っているとはいえ、ひとつの目標を達成できたことはうれしいの一言。「やってきたことは間違いではなかった」。胴上げされながら、選手時代とは一味違う喜びに浸っている自分がいました。

 あらためて勝因を振り返ると、日々、丁寧に野球をやってきた成果が出たと感じています。特に守備は春からしっかり時間を割いて練習しました。まずは打球をしっかり捕る。そして足を使って確実にスローイングをする。最初からスピードは求めず、基本に忠実にプレーすることを求めました。もし、バウンドが合わず、はじいても絶対に慌てない。それで打者走者の足が上回ってセーフになれば仕方がない。これらのことを徹底するうちに、守備力は顕著に向上していきました。

 中でも昨年を知る関係者やファンの皆さんから指摘されるのは、2年目のショート、水口大地の成長です。彼は俊足で守備範囲が広く、もともと守りはチーム内でも1、2を争う内野手でした。しかし、素人目にはうまく見えても、プロのスカウトの眼はごまかせません。捕球、スローイングとも雑な部分が少なくありませんでした。

 本人と話をすると「うまくなりたい」「1年でNPBへ行きたい」という意欲は充分に感じられます。しかし、1年でドラフト指名されるような存在なら、そもそも、このリーグにはいないはずです。水口はまだ高卒2年目の20歳。「そんなにすぐ行けると思うな。3年計画でやろう」。そう諭して、内野出身の古屋剛コーチに粘り強く1から指導するようお願いしました。こうして半年間、地道に取り組んだ結果が形になっているのでしょう。今後も一歩ずつ着実に課題をクリアして、NPBで通用する内野手を目指してほしいものです。

 前期優勝をおさめたことで、長崎は秋のリーグチャンピオンシップに出場する資格を得ました。各期40試合を戦うリーグ戦と3戦先勝のチャンピオンシップでは戦い方が異なります。短期決戦を勝ち抜くためには、投手力の底上げが不可欠です。前期は好成績を残せましたが、勝てる試合を逆転で落としたゲームも多くありました。そこで、後期は投手陣を再編して戦います。

 新クローザーには先発から土田瑞起を回しました。彼はここまで防御率2.10と安定した成績を残しています。リリーフでも充分、適性はありそうですし、短いイニングのほうがより球威のあるボールを投げられるはずです。セットアッパー役の石田大樹とともに、終盤を締めてほしいと期待しています。逆に前期は抑えだった上村聡一は先発でテストすることにしました。最初の先発登板となった19日の徳島戦では7回無失点。勝利投手になりました。これをきっかけに、自信を取り戻してほしいものです。

 昨年の低迷から一転、激しい優勝争いを乗り越えて、選手たちには自信がついてきました。直後に行われたソフトバンク2軍との交流試合では7−4と勝利。いい意味で緊張感を楽しみながら、自分たちのプレーができるようになっています。

 ただ、年間王者になるには投打に一層の粘りが欠かせません。ところが、後期の2試合目の香川戦(12日)、終盤に3点を奪われて、あっさり逆転負けを喫してしまったのです。悔しい負け方にもかかわらず、そのような素振りをみせた選手もいない。僕には、彼らの気持ちが優勝によって少し緩んでいるように映りました。

「オレたちは後期も優勝するんや! 完全優勝を目指すんや!」
 すぐにミーティングを開いて、選手に喝を入れたのは言うまでもありません。確かに僕たちはひとつの目標を達成しました。しかし、チームにも選手にも、まだ目指すべきものがあります。自信が過信にならないよう、気を引き締めながら戦っていきたいと思います。


長冨浩志(ながどみ・ひろし)プロフィール>:長崎セインツ監督
1961年6月10日、千葉県出身。千葉日本大学第一高卒業後、国士舘大、NTT関東を経て86年、ドラフト1位で広島に入団。1年目から2ケタ勝利をあげてリーグ優勝に貢献し、新人王に輝いた。MAX150キロのストレートを武器とする本格派右腕として、その後も広島の投手陣の要として活躍。95年に日本ハムにトレード移籍し、技巧派リリーフ投手に転じた。98年にダイエー(現ソフトバンク)に移籍し、2連覇に貢献。2002年に現役引退。ダイエー、ソフトバンクコーチを経て、07年からBCリーグ・石川のコーチとして初年度のリーグ制覇を支えた。09年より長崎の監督に就任。





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