開幕直後の勢いは、もうどこにもない。雪だるま式に借金が増えつつある。
 楽天が窮地に立たされている。6月30日の北海道日本ハム戦から7月8日の千葉ロッテ戦にかけて、今季ワーストの8連敗を喫した。

 この間、8回だけで計22点を失った。しかも6試合連続。
「魔の8回、なんかあるよね」
 野村克也監督の表情もさえない。
 8回の大量失点は偶然か必然か。
 私見を述べれば「必然」だと思う。クローザー不在は開幕前から指摘されていたことであり、ここにきてチームのアキレス腱がクローズアップされたに過ぎない。
 野村監督といえば南海時代、阪神から移籍してきた江夏豊をクローザーに転向させるなど、投手の分業制の大切さを誰よりも分かっている人だ。「エースと4番打者は出会うもの。つくれない」というのがノムさんの持論だが、ノムラ再生工場でもクローザーを製造することはできないものか。

 過日会った際、ノムさんはこう語っていた。
「簡単にはつくれませんよ。(抑えが)いないんだから先発投手には最後まで投げきってもらうしかない。1週間に1回しか仕事しないんだから」
 そして自嘲気味にこう続けた。
「また、ここでは昔の野球に戻ってしまった。無責任な監督ですよ。ハッハッハツ」
 まだチームが3位をキープしていた6月の中旬、ノムさんは今の楽天の姿を予想していた。
「(3位にいるとはいっても)攻守のバランスを考えたら、まだまだなんですよね。Aクラスに入って優勝争いをするとなると、岩隈(久志)と田中(将大)の2枚看板では、とても144試合は乗り切れない。
 先発の数が足りないし、ストッパーも不在。野球は9回あるといっても、一番大事なのは後半の7、8、9回。そこにいいピッチャーがいるのといないのとでは全然、違うんです。このままでは勝てる試合を落とすことが多くなるでしょうね」

 岩隈やマー君に「最後まで投げろ!」と発破をかけていたのは裏返せば「先発投手が完投しなければ勝てない」との危機感の表れだった。
 だが近代野球において、先発投手が9回を投げきるのは至難の業だ。岩隈は6月中旬から約1カ月、マー君は4月末から2週間、戦列を離れた。
 このようにリリーフ不在は楽天が誇る2枚看板にも大きな影響を及ぼしている。
 球団フロントは来季以降、「野村監督との契約は更新しない」と明言している。ノムさんは「優勝して球団を困らせてやる」と意気込んでいたが、今のままでは尻すぼみに終わってしまいかねない。
 杜の都は、これから夏本番を迎える。終戦記念日を待たずに「終戦」を迎えるのは寂しい。野村楽天の“奇跡の逆襲”はあるのか!?

<この原稿は2009年8月2日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>

◎バックナンバーはこちらから