前期は途中まで首位をキープし、群馬ダイヤモンドペガサスと激しい首位攻防戦を広げていました。しかし、一番大事な終盤に痛恨の6連敗。終わってみれば、群馬に5ゲーム差のもの差をつけられてしまいました。投手陣の反省点としては、やはり四球でしょう。連敗での大量失点は四球絡みが少なくなかったのです。
 とはいえ、全体的には四球の数が減ったことも事実です。その要因のひとつには、ストライクゾーンに投げる技術をもった投手が増えたことが挙げられます。先発の柱である伊藤秀範(駒場学園高−ホンダ−香川オリーブガイナーズ−東京ヤクルト)や中山大(新潟江南高−新潟大−バイタルネット)、先発からリリーフまでこなす久保田晃史(福井工大付高−平成国際大)、リリーフ陣の五艘祐一(北陸高−富山BC−富山サンダーバーズ)、折笠翔太(磐城高−東京学芸大)、綿貫克也(桐生市商高−平成国際大)といったメンバーがそうですね。

 彼らは次のステージとして、現在はカウントづくりに取り組んでいます。具体的に言えば、1−1というボールカウントをつくることです。配球の基本はバッターを悩ませることにあります。その点、1−1は振ってもよし、待ってもよし、というカウント。それだけにバッターは悩みどころでしょう。ですから、まずはこのカウントをつくることが配球の組み立てのスタートとなります。そこからどう攻めるかは、また次のステージとなるわけです。

 まだ、そのステージに上がることができない投手がいるのも事実です。例えば今季入団の柏村雄太(常磐大高−常盤大)。彼は最速146キロ、伸びのあるストレートが武器の投手です。体の使い方もうまく、股間節の動きもスムーズ。身長181センチと体格にも恵まれており、高い素質をもった投手であることは間違いありません。

 しかし、まだストライクゾーンにボールを集めることができず、投げてみないことにはわからないためにベンチとしては計算することができません。最大の要因はリリースの際に指が寝たり立ったりしてしまうこと。もともと柏村は指が負けてしまい、ボールを前に押し込むことができませんでした。よく“指がかかっている”と言いますが、このひっかけがなかったのです。そこで、地面に投げる練習をしたりして、今では少しずつ指を立てて投げることができるようになってきています。しかし、完璧ではないために投げる度に寝たり立ったりしてしまうのです。そのためにコントロールが定まっていません。これが安定して常に指を立たせて投げることができるようになれば、自ずと結果もついてくることでしょう。逆に言えば今後、どう化けてくれるのか、非常に楽しみな投手の一人です。

 “教える”よりも“伝える”

 さて、BCリーグも今年で3年目を迎えました。1年目より2年目、2年目より3年目と、リーグのレベルはどんどん上がっています。その要因のひとつには、新潟の伊藤や青木智史(小田原高−広島−HAL−シアトルマリナーズ(1A)―SFBC−ウェルネス魚沼−サムライベアーズ−セガサミー)、石川ミリオンスターズの南和彰(神港学園高−福井工大−巨人−カルガリーバイパーズ)、富岡久貴(高崎工高−東京ガス−西武−広島−西武−横浜−西武−東北楽天)といったNPB経験者の影響を受けていることが挙げられます。高い技術や強い精神力をもった彼らと一緒に練習やプレーをすることで多くのことを学び取っているのです。

 入団テストには全国の高校や大学から優秀な選手たちが集まるようなりました。野球人の就職先として認められつつあることの表れでしょう。2年間で4人のNPB選手を輩出した実績により、NPBに行くための選択肢の一つとして確立されてきているのだと思います。

 僕自身も指導者3年目となるわけですが、この2年間で指導への考え方に変化が生まれています。1年目は「教えよう」という気持ちが強く、どう選手に言えばわかってもらえるのか、非常に悩みました。しかし、今は「伝えよう」という気持ちで接しています。まずは選手の意見に耳を傾けること。そしてどんな状態であるかを整理させ、把握させます。そのうえでどうすればいいかを伝えるのです。この時、最も心がけているのができるだけシンプルに伝えること。難しいことを言って選手たちを悩ませていては逆効果ですからね。また、「僕もオマエの立場を理解している」ということを伝えるために、時には自分自身の失敗体験を披露することもあります。指導は一方通行ではなく、相互に言い合える関係を築くことが非常に重要だということを日々実感している今日この頃です。

本間忠(ほんま・ただし)プロフィール>:新潟アルビレックスBCコーチ
1977年8月5日、新潟県出身。日本文理高を卒業後、一時は肩を故障し野球を断念するも、野田サンダースでプレーを再開しながらNPBの入団テストを受け続ける。99年ドラフトでヤクルトから6位指名を受け、翌年に入団。主に中継ぎとして活躍したが、06年オフに現役を引退し、07年より新潟アルビレックスBCのコーチとして選手育成に勤しんでいる。


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